いつの時代も貧困層は一定数社会には存在するものだが、近頃の日本では新たなる貧困層の誕生が社会問題と化している。「ネットカフェ難民」の存在だ。
かつてインターネットといった通信網が無かった時代、高度経済成長期には、東京には山谷、大阪には西成といったドヤ街があり、そこで寝泊りしながら仕事を求める姿があったが、現在では「ワンコールワーカー」と呼ばれる、携帯電話一本で仕事を探す労働者が増える一方、物理的に労働者が集まる「ドヤ街」は消え、底辺の労働者の存在は水面下に潜ってしまっている。
そんな底辺の民が最低限の費用で寝る場所を確保できるのが「ネットカフェ」である。
◆なぜ東京で「ネットカフェ難民」が流行るのか
それは第一に東京の家賃相場がべらぼうに高いこと、第二には東京におけるドヤ街「山谷」の位置が最寄り駅から遠い上に一泊2200円もするので敬遠されるという事がある。
一方、近年隆盛を極める長期滞在者用ネットカフェは蒲田、池袋、そしてここ蕨の駅前などで増殖中。それも工夫すれば蒲田の「いちご」のように1晩1000円で済む店だってある。
遠くの三畳より近くの一畳半か、それともネット完備で飲み物飲み放題というメリットがあるからか、ネットカフェ業界の貧困ビジネスは留まる所を知らない。
そしてとうとうネットカフェに住民票を置いて「住ませてやる」と言い出す衝撃的な店まで現れて、メディアにも大きく取り扱われた。
その店の名前は「サイバーアットカフェ」。
駅前全体がどこか古めかしい、蕨駅西口のまん前にある。
蕨駅前には数店舗のネットカフェがあるが、サイバーアットカフェは駅前から最も近い場所の雑居ビルに店を構える。
1時間100円と大きく書かれてはいるものの、これは24時間利用の「1Dayコース」の1時間あたりの料金という意味である。書き方がせこくて笑える。
実際の値段は最初の30分が200円、あとは15分毎に100円という、至って標準的な料金体系だ。
狭くて古い雑居ビルにあるサイバーアットカフェの玄関。受付は2階だが、店舗は2階から4階までの3フロアに跨っている。地下は「わらびや」という喫茶店。
入口付近には店を各メディアに取り上げられたことを堂々と自慢する張り紙が。そりゃ全国探してもネットカフェに住民票を置けるなんてのはこの店しかないもんな。
さて、私も不況で仕事が無くなった事もあり明日はわが身という状態だが(泣)
早速店内に入ると、2階の受付で若い女性店員に「当店は何でお知りになられましたか」と問われる。「テレビで知った」と言うと、女性店員はニヤリと笑みを浮かべた。やっぱりテレビ様の力は偉大だということか?
まだ住み着いている人間がいるのかと質問すると、ほとんど埋まっていると、壁に備え付けてあるボードを指し示した。
3フロア合わせて40室、さらに隣のビルにも進出し、合わせて60室近くあるようだが、その殆どが長期滞在者仕様の「フラットルーム」。普通のオープンスペースの椅子はわずかに3つしか置かれていない。
気になる長期滞在プランは「Long80」という30日以上連続滞在が前提のプラン。1日1920円、30日で57600円という計算になる。
光熱費やネット代、飲み物代がフリーでこの値段なら安いと受け取れない事もないが、簡単な間仕切りが施された仮のスペースで1ヶ月暮らすというのもかなりハードに思える。それにシャワーやコインランドリーは別料金だ。
他のオプションサービスには「住民票登録・郵便物受取代行」3000円也。つまり月々60600円でサイバーアットカフェに「住める」わけだ。まさに完全なる「ネットカフェ住民」。
私の身なりを見ながらニヤニヤする女性店員に「よかったら、長期でご利用なさっても」とプッシュされてしまったが「まだいいです」とやんわり断って1000円の「3時間プラン」を利用した。
料金を払い3階に案内されるがままに階段に登ると、そこは想像よりも生活臭がしない普通のネットカフェの店内だった。しかしどの個室の前にも靴が置かれている。
室内は睡眠中の客もいるためかなり暗くしてあるし、個室に備え付けてあるライトも頼りないものが一本あるだけで漫画を読むにはとても適さない。
しかし「長期滞在者」が多いだけあって階段の踊り場にはパンパンに詰まったゴミ袋が置かれていたり、頻繁に清掃が入ったりしている。妙に消臭剤が置かれているのが目に付いた。やはりこのネットカフェは「住む」ための施設なのだ。
1.5畳の薄暗い個室の中で、この店は月々いくら儲かっているのだろうということを考えた。月々57600円の「家賃」プラス3000で50人の「入居者」がいれば、雑居ビル2つ分のランニングコストで月々300万円がコンスタントに稼げるわけだ。濡れ手に粟とはこの事だぜ。
さらにサイバーアットカフェは足立区北千住駅前にも進出を予定している。
貧困ビジネス、ここに極まれりといったところだ。
蕨駅はネットカフェ難民の聖地「蒲田」のように賑わっている訳でもなく、特に西口は閑散としている。
しかしこの「牛丼ぎゅうちゃん」だけは別格で、並300円からのメニューで牛丼バカ盛りで出してくれるという。牛丼だけではなくカレーや定食類もあり。貧民の味方はどこの町にも存在するものだ。





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