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西武線住民の主食は焼き鳥か?!乗り換えでいちいち商店街を歩かされる街「秋津」を観察する

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西武線に乗ると、それが西武新宿線であれ池袋線であれ、東京都から都県境を越えて埼玉県入りした後の最初の駅が「所沢」であり、その一つ手前の駅まではギリギリ「東京都」となっている。池袋から出ている西武池袋線の場合、所沢の一つ手前にあるのが、駅前一帯が東村山市に属する「秋津駅」で、ここではJR武蔵野線の新秋津駅が近接している為、両路線の乗り換え客が非常に多い事が知られている。

東村山市 秋津

そんな西武池袋線秋津駅とJR武蔵野線新秋津駅の間は非常に近接しているにも関わらず直接往来できる連絡通路が全く整備されず、乗り換え客は全て改札を降りて約350メートルある外の商店街を延々と歩かされる羽目になる。この商店街が「秋津焼き鳥ロード」という異名を持ち、焼鳥居酒屋がわんさかあるという事を聞いていた。

なぜ秋津-新秋津間の連絡通路が出来ないのか

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この秋津駅自体も東京なのか埼玉なのかよくわからない立ち位置にある駅だが、そもそも駅の周辺を市境が跨いでおり所沢市、東村山市、清瀬市の三市に分かれているという有様。駅前の不動産屋も物件をわざわざ三市に分けて案内している。しかも都県境を跨いでいるのでますますややこしい。

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秋津駅周辺のこの特殊な地理状況のせいで駅前の再開発を一体化出来ず、おまけに「客が来なくなる」という理由で駅前の商店街の反対を受けて連絡通路も作れないという特殊事情が利用者に長々と不便を強いている。もし連絡通路が出来れば、西武線と武蔵野線のホーム同士の距離は僅か150メートルしか離れていないので、乗り換えの利便性は飛躍的に高まる。

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傍目には商店街側のエゴかとも思える事例だが、雨が降ったら乗り換え客は傘を差して商店街をとぼとぼ歩かねばならず、一時期は商店街側が両駅前に貸し傘を設置していた事もあったのだが、利用者の民度がアレな為か次々傘が持ち去られてしまうので、断念してしまった。

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だが逆にこの「不便過ぎる乗り換え」がもたらしたのが、首都圏の駅前では特殊中の特殊とも言える駅前商店街の存在だ。この商店街沿いにはチェーン系から個人商店まで様々な飲食店がひしめき合っており、仕事帰りのサラリーマン達の寄り道がてらの「ちょっと一杯」をそそる誘惑の源となっている。

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サラリーマンが行き交う事も少ない昼間の何の変哲も無い時間帯でも商店街は結構な人通りで、沿道の店舗は一様に賑わっている。だが一歩商店街を外れると田舎の原風景的な住宅地しか見られずそのギャップが激しい。一応「東京都民銀行」の支店もあるので腐っても東京都下だとお分かり頂けるであろう。

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そして武蔵野線秋津駅前の広場では昼間っから酒盛りしている普段着でサンダル履きのやさぐれた地元民が溜まっている。これが東京の最果ての日常風景なんでしょうかね。てか本当に東京なんですかここ。

焼き鳥居酒屋だらけで一体どうなっているんですか、秋津駅前

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秋津駅前の「本領発揮」は、サラリーマンの皆様方が仕事を終えて帰りだす午後6時以降である。日が暮れる頃には、西武池袋線で都心から帰ってきた人々が一斉に駅前の商店街を通り抜ける。武蔵野線に乗り換えて家路につく通勤民の集団がひっきりなしに通りすぎて行く。

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通勤利便性よりも土地の安さを選んだ、背に腹は代えられない、しがないサラリーマン達。帰るのは東所沢、新座あたりのマンションか。しかし池袋か、それよりもっと都心の勤務先なのか知らんが家路につく前にひと休憩したくなる距離ではある。秋津に着くまでに池袋から快速で24分、準急だと30分掛かるんだもの。

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そんな通勤だけでもご苦労さんです的なサラリーマン一同が寄り添う秋津の焼鳥居酒屋の一軒が武蔵野線新秋津駅目の前にある、その名も「サラリーマン」である。数ある居酒屋の中でもとりわけ大箱で、店名そのままに、店の暖簾越しに中を覗くと本当にスーツを着て額に脂汗を浮かべた仕事帰りのサラリーマン客でいっぱいになっている。

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そしてもう一軒、商店街のど真ん中にある焼き鳥「野島」の店先にはこれまた大勢のサラリーマン軍団が満員電車さながらに狭い立ち飲みスペースに押し合いへし合いになりながら呑んだくれていて、入りきらない客は外にテーブルを置いて飲んでいる始末。串一本の肉のサイズがでかいのに90円(持ち帰りは一本100円)均一というコスパの良さで圧倒的支持を得ている名店舗だ。

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ちなみに昼間の野島はこんな感じで、案の定店の外壁一面がすすだらけになっておりますが…

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なぜか店の入口に隣の所沢市長・藤本正人氏が居るんですが、「野島」の常連なのでしょうか。選挙ポスター風味で面白いんですが、いっその事、秋津駅周辺を所沢市に編入されてみては如何でしょうか。ここが別に埼玉と言われても何の違和感もないので。

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「野島」「サラリーマン」の二軒が秋津駅前における居酒屋二大巨頭とされているらしいが、これに続くのが西武線改札真正面にある「もつ家本店」である。ここも立ち飲み専門で、野島と対抗するかの如くジャンボ焼き鳥と銘打っているが、店名通りもつ煮込みが店の名物だ。秋津でハシゴ酒するならここが一軒目でしょうかね。

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秋津駅前の商店街ではあまりに「野島」がジャンボ焼き鳥で価格破壊を進めてしまったものだから、ライバル店の焼き鳥ディスカウント競争が過剰に進んでいる。夕方~夜のみ営業の「リアカー屋台 秋津ナンバーワン」の店先も立ち飲みサラリーマンの集団でごった返している。

元々は唐揚げ専門だったようだが、よく見りゃ焼き鳥各種に加えてラーメンまで出している上に、レバー串一本60円の破格ぶり。そして夜7時まで「ウーロンハイ200円」の出血大サービスである。クソ安過ぎる!

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サラリーマン軍団がクッチャクチャ焼き鳥を食らいまくっているその横では安物革バッグやベルト等を販売する期間限定ショップの前にも買い物客が群がりさながら上野アメ横のような活況を呈しているのである。家賃の高い都心には住めない人達ばかりが客層だから、店舗構成も勿論そうなりますよね。コスパ最高やん。

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秋津に限らず西武線沿線の街は「焼き鳥激戦区」となっている街が非常に多い印象がある。むしろ焼き鳥が西武線住民の主食となっているのではないかと思う程に多い。

そもそも西武線沿線を選ぶ時点で柄の良さよりもコスパを選ぶ人種が集まるし、元々は農業・畜産業の盛んな埼玉県西部に東京都心部で出されるし尿を運搬していた「黄金列車」が西武鉄道の原型だったのだから、こうなるのも道理な訳でして。戦時中には一時期「西武農業鉄道」を名乗っていた時期もあったくらいだ。

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そんな土の匂い漂う西武線沿線の文化は、今なおこうした秋津駅前みたくやや貧乏臭い街並みに象徴されるように脈々と受け継がれているのである。だから今更商店街の反対で連絡通路が作れなかったとしても、乗り換えの不便を承知で武蔵野線沿線ごときに住んでいる連中が偉そうに文句を言うんじゃないよ、と暗に態度を示しているだけなのだろう。

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しかし焼き鳥居酒屋だけに限らずそそられる佇まいの店が本当にいっぱいあるんだよなあ秋津駅前。土日は土日で、サラリーマンではなく今度は競馬オヤジ一同が「ギャンブル電車」の異名を持つ武蔵野線に乗り継いで西は府中競馬場から東は中山競馬場まで、各公営競技場へ出陣の行き帰りの際に秋津駅前でやはり同様に呑んだくれるのである。

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それにわざわざ武蔵野線で遠方に行かなくても駅前にはパチンコ屋もたんまりとあるのでギャンブル欲が湧いたら手近に済ませる事だって出来る訳だ。

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武蔵野線の新秋津駅は、同線が開通した昭和48(1973)年から営業している駅で、当初から西武線の連絡通路が作られなかったのは地元商店街への配慮の末だった。西武もJRも正式な「乗換駅」として案内している上に、同駅を乗換駅とする連絡定期券も発行されている。だが「首都圏で最も乗り換えが不便な駅」の座は当分明け渡される事は無いだろう。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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