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ガチな下町「荒川区荒川」 (5) 荒川八丁目胞衣工場

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町屋駅周辺の住所は都電荒川線が町屋駅で京成本線と交わる北側一帯が「荒川区町屋」、そこから南側の常磐線の線路あたりまでの一帯が「荒川区荒川」となっている。どちらも一丁目から八丁目まであって広大な区画だが、町屋駅からは三河島水再生センターの敷地に挟まれて孤立したような形の「荒川八丁目」というのがある。
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荒川八丁目は同じく町工場が密集する街並みとなってはいるが他の地区とは少々異なり、油脂、皮革関連の工場が集積するエリアとなっている。
古くからの工場が建て替えられもせず残る一方ですぐ背後には場違いに豪華な巨大マンション群「アクロシティ」が隣接する南千住六丁目に所在し、こちらは現在も未解決となっている「警察庁長官狙撃事件」の舞台ともなった香ばしい歴史がある。


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荒川自然公園側から荒川八丁目にやってくると、下水処理場の上に作られた公園のスロープ上から古い町工場の建物や廃棄物を運搬するトラックなどが駐車してあるのが見られる。
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荒川自然公園から降りてきた所に、凄まじく年季の入った工場が一軒見られる。その佇まいは戦後の廃品回収業者のそれを思わせるオールトタン葺きのレトロっぷり。
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この工場の玄関口に掲示されている看板を見ると、ここが東京において相当珍しい「胞衣工場」である事が分かる。胞衣と書いてエナと読むのだ。東京中の産婦人科から毎日生まれる新生児に付帯する胎盤や臍帯、もしくは堕胎するなどした胎児の遺体といったものはこうした施設に集められ処分される。荒川八丁目にはこの胞衣工場が2軒存在している。
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東京都には戦後間近に制定された「胞衣及び産汚物取締条例」という法令がしっかり存在していて、そこらに捨てるという事はできないのだ。全国の自治体も同じルールを敷いているが、大阪市の場合は環境局が公務として胞衣の処理をやっているなど地域によって違いはある。
胞衣工場で処理されたであろう「産汚物」が一部は薬品やプラセンタサプリメントなんぞの原料になるのだろうが、医療廃棄物の中でも特殊なルートで流通している胞衣の実態は明らかにされていない点が多い。
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そんな胞衣工場の周辺を歩くと戦前から恐らくそのまんまになっているような古い建物が連なっている。工場に関係する建物かどうかは定かではないが、時が止まったままの空間である事には間違いない。
そういえばよく聞く話で産後の妊婦や家族が栄養になるとして胎盤をレバ刺しや焼肉みたいな感じで食う話がある。現代の病院では衛生上問題があるとかカニバリズムがどうとか云々言われて持ち帰らせてくれないらしく殆どが処分されてしまうが、ネット上で検索すると胎盤料理の数々が結構出てきたりもする。
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すぐ向かいには都営住宅が並んでいる。古い5階建てのエスカレーターなし団地だ。他の都営住宅同様鄙びた感じがたまらない。
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その都営住宅の上から胞衣工場の敷地を眺める。時間帯によっては煙突から産汚物が焼却処理される際に出る煙が漂ってくる事もあるそうだが、普通の日常風景なので住民は実に淡々としているそうだ。
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胞衣工場に隣接して皮革工場が並んでいる。町屋自体もそうだが斎場や下水処理場といった一般的に嫌悪されるような物件が寄せ集められたイメージがある。
かつての浅草界隈などもそうだったが、戦後の都市化に伴ってやがて墨田区東部や足立や葛飾、さらに郊外の埼玉南東部などに工場がどんどん移転していった中、荒川八丁目だけが取り残された形になっているようにも見える。
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社員寮などもある大規模な皮革工場は、同じように年季の入り方が尋常ではない。目立った工場はこの二つくらいで、荒川八丁目自体もそれほど大きなエリアではない。あと変わったものに油蝋(ろうそく)工場というのもある。
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この付近のゴミ集積所の様子を見るとハングルや中国語併記されているのが目に付く。やはり工場労働者には外国人の姿が多いのだろうか。同じく皮革工場集積地である墨田区の木下川地区も黒人労働者の姿がやたら目立っている。3K労働の担い手は今や外国人が主力なのだ。

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