船堀街道側から今井街道を250メートルくらい進むと角に交番と公衆便所があり、その先も歩道にアーケードがついた商店街がどんどん続いている。ここから東側は商店街の名前が「松江大通り」に変わる。城東電車江戸川線の松江駅というのがこの辺にあって、昔はここいらが街の中心だったとか。
その先に進むと「同潤会通り入口」と名前のついた交差点があるが、やはり同潤会と聞いて思わず反応してしまう。あの今は亡き同潤会アパートの「同潤会」と無関係な訳がない。
この同潤会通り、今井街道から北上して京葉道路が通る江戸川区中央二丁目に続いているのだが、ここに同潤会が関東大震災後の被災者を受け入れた大規模住宅団地を整備した時の区画があり、同潤会が地名として残された珍しい地区になっている。
松江大通りの一本南側に並行する路地にも地元民向きの場末な飲食店や美容室、その他個人商店が点在していて、寂れっぷりは相変わらずだが一応商店街の一部となっている。
昔の城東電車って今井街道からちょっと外れた所を走っていたらしいが、線路跡っぽいものはさすがに残っていないだろうな…
そんな場末ストリートに唐突と現れる「洋食とんかつ キッチンこば」と看板が掛かった店。パッと見これは現役なのだろうか判断に悩むが…まだ営業中らしい。これは渋すぎる佇まいだ。
さらにその先には青々と輝くブルートタンが眩しい釣具ディスカウントショップ「釣敏」、そして隣のクリーニング屋も青々しい。公明党のポスターがいっぱい貼られてますが場所柄ですからね。
そこから松江大通り側に戻る途中に半分解体されて切れ端になったかつての市場の残骸らしき建物が…「松江ス」と書いてあるのがはっきり読める。松江ストアでしょうかね。とっくに死亡しているようだが、ちなみに切り取られた半分はコインパーキングである。
そんな半身状態の市場の残骸にへばりつくように残る隣の古びた喫茶店「シルク」も気になる。蔦まみれで店内が隠れてしまっているのもまた怪しい。休業日のようで、店内には入れなかった。
松江大通りをずっと先まで進んでいたら都営バス「西一之江四丁目」停留所までやってきてしまった。この先、一之江方面に向かうと「しらさぎ通り西一之江商店会」「はなみずきロード一之江商店会」と今井街道沿いにずっと商店街が続いている。その先は環七通りで、都営新宿線一之江駅が近くなる。一旦元の場所に戻りますね。
松江通り商店街の西側、みずほ銀行の向かいにまるで地方都市のゴーストタウン化した商店街にありそうな古びた商業ビルが残っていて、一階は靴屋が営業している程度で見た目にも相当くたびれている。こういうビルを見ると放っておけない。
元デパートだったという様子はなく、ビルの名前も「江戸川信販ビル」というので、サラ金会社の雑居ビルなのかいなという印象だが、一階の店舗テナントは靴屋一軒以外は軒並みシャッターが降りたままで、既に商店ビルとしてはオワコンもいいところだ。
しかしこのビルの二階に一軒だけぽつんと開いている中華料理屋があって気になったので入店を試みようとする。ガラガラ状態の一階商店フロアの奥にエレベーターと階段がある。実は5階建てで、4階から上は住居フロアになっているらしい。
2階にある「中華菜館喜楽」の、この古臭い看板に惹かれて、階段で行こうかエレベーターで行こうか少し悩んだ挙句…
2階なのにエレベーターを使う。物凄く古いエレベーターだ。「三菱エレペット」というのは現在使われていない商標で、恐らくは1970年代に製造されたものであろう。上階の住民も常時このエレベーターを使っているようだ。
2階には松江通り商店街事務所と、中華菜館喜楽が入居している。店の入口は奥にあるみたいですよ。
他に客もおらず独占状態の店内。ここも江戸川区松江ではかなりの老舗店で、かれこれ50年以上はやっているとか、食べログに口コミを書いている地元民が子供の頃、親の買い物で松江に連れてこられた時にここで食べるのが楽しみだったとかそういう事が書いてある。昔の「家族連れでデパートの食堂へ」みたいなノリで来ていた場所なんだな。
そんな喜楽で「五目うま煮そば」をオーダー、これが当取材班の晩飯になりました。日本人が作る優しい中華料理って感じでした。江戸川区松江は中核派の根城ですが、彼らもたまにはこういう所で食ってるんですかね。知らんけど。
