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【田園都市線とは何なのか】意識高い系も集う日本一セレブな河川敷再開発タウン「二子玉川ライズ」の痒くなりそうな街並み

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東京23区中でも端っこにあるにも関わらずとりわけ「優良住宅地」のイメージが浸透し中高所得層の流入が著しい「世田谷区」。その人口は23区中最多の89万8千人(2017年7月現在)、既に一部の弱小県の人口を上回っており、今後も人口増加傾向にある。そして渋谷から横浜市北部の田園地帯を抜け大和市の中央林間まで伸びる「東急田園都市線」は首都圏最悪の混雑ぶりを見せる鉄道路線であるが、この沿線もまた世田谷区内を東西に走っている。そのうち多摩川の手前、世田谷区内最後の駅となるのが「二子玉川」である。

通称ニコタマなどと呼ばれる河川敷タウン「二子玉川」の玄関口となる東急田園都市線二子玉川駅で降りる。過密運転状態となる朝のラッシュ時は急行電車が全て準急となり、この駅から渋谷まで全列車が各駅停車となる。さらに地獄の痛勤ラッシュで悪評高い田園都市線のバイパスとして機能する大井町線が溝の口を始発駅にここから分岐して大井町方面に伸びている。駅を降りるとのっけからシャレオツ感満載である。

地名の由来は多摩川を挟んで存在した二子村と玉川村

二子玉川の地名の由来は多摩川を挟んだ両側にあった橘樹郡二子村、荏原郡玉川村という二つの村の名前から来ている。すぐ川向かいに「二子新地」という駅もあれば川崎市高津区二子という地名も現存する。かつては江戸時代に「二子の渡し」という渡し船が多摩川の両岸を結び、交通の要衝となっていた二子村は宿場町ともなり、両岸の街はそれぞれ花街として栄えていたり景勝地としても名高い場所だったという。

川向かいの二子新地は「新地」と名がつく通り、未だに場末感漂う街並みが残り、花街跡の面影も残っているような街になっているが、すっかり再開発されきった感じのある二子玉川の方はというと、こっそり駅の近くの路地に古びたビジネスホテルがぽつんと営業しているのが見られる。

ビジネスホテルという割には昔の連れ込み旅館の名残りではないのかと疑わずにはいられない佇まいの「二子玉川イン」。24時間営業、明朗会計、ご滞在歓迎、お気軽にどうぞ、とのことです。

川向かいの二子新地だけではなく、かつては二子玉川やその周辺も待合茶屋が点在する郊外のプレイスポットだった場所でもある。戦前からの景勝地で連れ込み旅館がセットになっていたような、例えば吉祥寺の井の頭公園の脇とか上野の不忍池の隣とか、新宿角筈の十二社池の脇とか、そういう場所に近い妖気を放っていた街でもあったのだ。

遊園地「二子玉川園」から二子玉川ライズへの変貌

国土地理院撮影の空中写真(1979年撮影)

二子玉川が多摩川を望む戦前からの景勝地であり、怪しい歓楽要素のある街でもあった事には触れたが、昭和の時代まで二子玉川という街はレジャースポットとしての立ち位置が定まっていた。以前は駅の名前も「二子玉川園」で、同名の遊園地が昭和60(1985)年まで存在していた。昔の航空写真を引っ張り出してみると、ちょうど現在二子玉川ライズショッピングセンターやタワマン群が立ち並ぶ一帯がまるごと遊園地だった過去がわかる。

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田園都市線の前身である玉川電気鉄道が明治40(1907)年に開通、その直後から玉川遊園地を開設して以来なので結構な歴史があったようだ。特に昭和40年代には円谷プロが同じ世田谷区にあった関係でウルトラマンシリーズのロケ撮影が行われたり、ウルトラマンショーが行われるなどして当時の子供には絶大な人気を誇っていたというのが語り草である。

そんな二子玉川園が無くなり、一時期後継施設として存在していた「二子玉川タイムスパーク」が2006年に閉鎖されて以降、再開発工事が一気に進んで爆誕したのが現在の「二子玉川ライズ」となる。もちろん東急電鉄肝いりの再開発事業の一つであり、たまプラーザ駅のリニューアルと並ぶ田園都市線のイメージ戦略の要でもある。

二子玉川ライズに勘違いセレブと意識高い系が大集合

「二子玉川ライズ」は東日本大震災直後の2011年3月19日に街開きしている。渋谷や新宿などの都心部に引けを取らない大規模なキラキラ系ショッピングモールに加えてタワーマンションが併設され、田園都市線沿線の新たな商業拠点として東急電鉄独自のイケイケ志向の極致とも言えるド派手な再開発地域が東京の外れの河川敷タウンに生まれたのである。

二子玉川ライズショッピングセンターは二子玉川駅舎にも直結しており、駅と街がまさしく一体化した格好となっている。これはたまプラーザや青葉台の駅前が東急資本の商業施設で塗り固められているのと同じで、商売上手でヤリヤリな東急クオリティ全開の見事な街づくりがここでも実現している。

実際に土休日に二子玉川ライズにやってくると夥しい数の買い物客やリア充ファミリーが闊歩しているのが見られ、田園都市線沿線独特の鼻につく感溢れる小綺麗な格好をした、同じ世田谷の中でも一際選民意識の高そうな方々が揃って思い思いの時間を満喫している光景に出くわす。例のマツコの番組に出てくる自称「リッチピープル」のマダムも、あれは仕込みじゃなくて実際にいそうなノリではないかと思わせる程のアッパーぶりである。

特にショッピングセンターの中央にある吹き抜けの広場に休日に来ると、一般庶民がまず使いそうにない意味不明な高級ブランド品の宣伝イベントが行われていたりして長蛇の列を成している風景も見られる。購買力の高い二子玉川マダム相手ならさぞかし商売も捗るようで、同じ東京でも東の端っことはまるで世界が違うのである。「ル・クルーゼの鍋で煮込んだオリジナルスープの試食会」ですってよ、奥様。

二子玉川ライズは2015年に第二期事業開業となりグランドオープン、品川シーサイドにあったはずの楽天株式会社も本社機能を「楽天クリムゾンハウス」と称するビルに移転、オフィス街としての機能も強化され、さらに副都心的性質を帯びるようになってきた。

さらに駅とショッピングセンター、その先のタワマン群と二子玉川公園を結ぶ歩行者専用道路「リボンストリート」が開通、この通路の両側にもいけ好かないシャレオツ仕様の高級飲食店や高級雑貨屋などが続々開業しており、二子玉川の「日本一セレブな河川敷タウン」化を決定づけている。

日本初上陸というスペインの良く分からない高級食材店だとか、1400円もするエッグベネディクトを置いているアメリカの意識高そうな食い物屋(しかもメニューには英語しか書いていない)だとか、スープストックトーキョーの系列店「100本のスプーン」だとか、もはや貧乏人にはちょっとついて行けません的なノリのラインナップでため息混じりのゲップしか出ない。カジュアルそうに振る舞っていても大抵客単価3000円以上であり、もはや丸の内や銀座で食うようなノリである。せいぜいこの並びの店で貧乏人が入れるのは「一風堂」くらいですね…

極めつけに「蔦屋家電」でドヤ顔Mac決める意識高い系ノマドワーカーの溜まり場

二子玉川ライズ第二期事業の核店舗として開業以来話題騒然となっている、かつてはレンタルビデオ屋だったのに今ではポイントカードと意識高い系向け本屋に力を入れている大阪・枚方市発祥の「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが手掛ける新業態店舗「二子玉川 蔦屋家電」。代官山蔦屋書店に次ぐ意識高い系仕様ショップの首都圏第二弾に位置付けられる店舗である。シャレオツっぷりが凄すぎて何が何だか分からない店内に誰が買って使うのか分からない意味不明な高級家電が所狭しと陳列されていて、もう笑うしかない。

二子玉川の蔦屋家電でも他の意識高い系仕様の蔦屋書店同様、店内にスターバックスコーヒーを併設し、店内の書籍が購入前に読めるサービスを行っているのがウリだが、それ以上に目につくのがテーブルの上に揃いも揃ってiMacを広げて仕事や勉強をしている意識高そうなお客様の姿。代官山T-SITEでもお馴染みの光景だが、二子玉川の蔦屋家電は段違いにこの手の種族が多い。

一方で、同じ二子玉川ライズなのに全く雰囲気が違うエリアがある件。大井町線の高架寄りにある「オークモール」には野暮ったいチェーン系の薬局やら客単価の妙に安い喫茶店やローカル感漂う八百屋なんかも揃っている。恐らく再開発前からあった店舗が地権の関係で入居しているのか?と思うエリアだが、すっかり計算され尽くした無味乾燥な再開発エリアの中にあると、その存在すら気づかないほどに目立たない「残された庶民的な街並み」である。

日本一セレブな河川敷タウンのタワーマンションとスタバもある意識高い系公園

浮かれポンチ感全開の「リボンストリート」を抜けるとその先にはお約束のようにそびえ立つタワーマンション群が。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」と称する3棟のタワーマンションおよび低層高級マンションで構成された居住区である。2LDK、70平米程度の物件でも8000万とか、もっと広い物件だと余裕で1億オーバーというのだから、マジなリッチピープルでないと住めない、上京カッペの憧れの的だ。

目の前が多摩川河川敷という絶好のリバーサイドビューですが、数年に一度ホームレスが水死する多摩川における水害のリスクとか、常に多摩川から流れてくる吹きっさらしの風(特に冬場はこたえる)とか、そういう地理条件の悪さは全く考慮せずに住んじゃってるんでしょうね。上層階からの眺めはそりゃ絶景に決まっているだろう。直線距離で5キロ程離れた川向かいの武蔵小杉のタワーマンション群も見渡せるし、ここなら東京都民様・世田谷区民様を気取る事もできる。

そんなタワマンの隣に広がる「二子玉川公園」もまたリッチピープル・ニコタマ民の憩いの場であり、公園内にはここにもスターバックスコーヒーがあるという用意周到さ。蔦屋家電の店舗とは違って川を眺めながら優雅にコーヒーを啜りドヤ顔Macが楽しめる。

ちなみに二子玉川にはスタバが合計5店舗あり、そのうちの1つは「ネイバーフッドアンドコーヒー」と称する高級路線店で、この系列店のみが世田谷区ばかりに集中している。やはり世田谷区民はリッチピープルで意識高い系の巣窟なんだろうか。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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