星山温泉には風呂上がりの常連客がくつろぐ大広間があり、浴室よりも二回りくらい大きなバラック小屋が別に建っているのだが、その建物の側壁には先代オーナーが書いたと思しき有難そうな格言の数々がびっしり。ちょっと電波チックですよね。
「世の中のためになる様考えて職を楽しみ職に遊ばん」…いい言葉ですな。忙しい現代日本にどれだけ自分の職業を楽しめている人がいるのだろう。先代オーナーこそがどう考えても一番「職を楽しみ職に遊んで」いたんだろうな。
そんな先代オーナーがDIY心をこじらせて作り上げた大広間の建物は…なんと屋根からまるごと崩壊していた。2014年2月の大雪で屋根が落ちてしまったらしい。中ではカラオケもできる舞台もあったらしいんですが、もう入れません…
倒壊した大広間からさらに奥にも小さな祠があるのが見えるが、びっしり草木が覆い茂っていてこの先には進めそうもない。昔はこの場所にフィールドアスレチックの遊具なんかが沢山あったんだろうけど、その時代の面影はどこにも見当たらない。
さらにもう一つ休憩室と思しき部屋のついた小屋があるのだが、こちらはオーナーではなく常連客が自前でこしらえてしまった代物らしい。フリーダム過ぎる空間で楽しそうなんですが、ここも倒壊した杉の木が建物を直撃してしまっている。建物が丈夫で壊れなかったのが不幸中の幸いで、倒れた木もそのまま…
これだけワイルドな空間だともしもの時のトイレはどうなのか不安になるが、一応ながら敷地内の分かりづらい場所にあります。しっかし水洗トイレなのが意外だった。日帰りキャンプ気分で小一時間くらいのんびり出来る環境が整えられている。こんな終末感全開の温泉だが、我々の前にも後にも来客があり、殊の外に人の姿が多いのが意外だった。
星山温泉の敷地から庚申塔とは逆の歩道を下っていくとサントリーの自販機と増改築「タカラ」の看板が目印の車道に出る。公共交通機関を使ってここまで歩いてきた場合のアプローチはこちらの方が楽。
ところで、この場所から「水源地入口」方向に戻っていくと途中でこんなバラック建築が随分傾きながら残っているのが見える。これもまた星山温泉の関連物件でしょうか。
やはり星山温泉と関係のある建物らしく、古びた手書きの看板がいくつも継ぎ接ぎトタンの壁に貼り付けられている。ヤバ気なオーラが漂ってますが…
「稲龍大観音」「星山温泉」などと書かれた看板、いつの時代のものかと思わせる貫禄があるが、この「新倉國二朗夢男」という人物が稲龍神山スポーツランド及び星山温泉の創造主の名前。夢男というくらいだからさぞかし面白そうな人物だが、ご存命ではないのが残念…もし関西にあったら探偵ナイトスクープにパラダイスとして紹介されそうな勢いだな…
「稲龍神山スポーツランド」は昭和の時代の終焉とともに姿を消したという訳だが、相変わらずこのような看板があったりして昭和が部分的に生き続けている所に感銘を受ける。湘南葉山の温泉という場所柄、業者が目をつけて小奇麗なスパリゾートを作っちゃったりしそうなのだが、今の所、星山温泉は現役バリバリ。
傍らにある「穴守稲荷神社」にお参りした後帰宅。穴守稲荷は東京羽田にある有名な神社だが、神奈川では結構穴守稲荷信仰が厚いらしくこうした神社があちこち各所に祀られているのを見る。補助券が10枚溜まる前までに星山温泉が無くなりませんように…とお祈りした。
＜追記＞2016年3月29日をもって星山温泉は廃業致しました。
