違法工作物と言われても…八王子「北浅川流れ橋」を自己責任で渡ってみた

八王子市

東京都八王子市、新宿から中央線に乗って30~40分掛かる、東京西部最奥のベッドタウンといった所だが、少し町外れに出ると長閑な里山の風景が広がる、東京らしからぬ牧歌的な住宅地となる。

八王子市 浅川

そんな八王子に「流れ橋」があるという情報を聞きつけ、それも個人の手によって不法に設置された橋で問題になっているとかいう話で、どうにかそれを見に行きたいと思い現地にやってきた。場所的には八王子駅から北西方向に7キロ、車で20分くらい走らせた辺り。

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八王子市民には馴染みの深い、多摩川支流の浅川。日野市百草園のあたりで多摩川から分岐して八王子方面に伸びる川だが、流れ橋があるのはさらに八王子市役所付近で分岐して「北浅川」と呼ばれるところだ。近くに東京天使病院というのがある。

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ろくに舗装もされていない河川敷の道を進んでいくと、確かにそれっぽい橋が架けられている一画を発見。ほほう、これが流れ橋なのか。想像していたよりもずっとしょぼい。

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まずこの橋を渡る前に、近くに設置された警告看板に目を向ける。それは浅川の河川管理者である東京都南多摩西部建設事務所長の名義で、この流れ橋が「河川法の許可を得ていない違法工作物」である事を示している。つまり無断で架けた橋なのだから撤去せよというお達しだ。

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橋の手前の大楽寺町とその向こうの西寺方町大幡地区の間を結ぶ「北浅川流れ橋」と呼ばれるこちらの違法工作物、橋脚はなんと建築用足場に使われる単管パイプ、橋はベニヤ板を渡しただけという、橋と呼ぶにもどうかと思えるレベルのものになっているのだ。川の向こうの大幡町会が設置したものだ。

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流れ橋の長さは約25メートル、幅はわずか90センチしかなく、もちろん欄干といったものもないので、バランスを崩して足を踏み外したらそのまま川へドボーンである。まるで昔なつかし風雲たけし城の「ジブラルタル海峡」状態である。もっとも、通常時は川に落ちても死ぬような高さではない。

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しかもさすが手作り橋だけあって、ベニヤ板は微妙に水平を保っておらず、微妙に傾いた箇所もあって見た目に危うい。流れ橋と聞くと京都府八幡市の上津屋橋がまず最初に思い浮かぶが、あんなにちゃんとした橋ではない事だけは確かだ。

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地元民は慣れたものでこの流れ橋をチャリンコに乗ったまま渡っていく。「この橋を渡る場合は事故に対して全てに責任は負いません 自己責任と致します」と但し書きを置いているのは、橋の向こうにある大幡町会の名義だ。

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行政が違法工作物だと看板を置いたのもつい最近の話で、過去この場所には昭和30年頃から手作り橋が存在していて、何度も増水で橋が流されては建て替えたりを繰り返してきたという。違法な橋だと言われても、ここが対岸住民の為の生活道路であるには違いない。

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…というのもこの流れ橋が無ければ住民は上流側に離れて架かる陵北大橋を使わなければならず、回りこむと3倍の距離と時間が掛かり不便だというのだ。大幡地区住民が通勤通学でこの橋を使っていて、この橋があれば所要時間が片道10分も変わるというとそりゃみんな使うでしょうよ。

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橋の向こうの西寺方町大幡地区。約150世帯が暮らしているらしく結構な住民がいるみたいだ。大幡町会は八王子市に正規の橋を建設するように度々要請しているそうだが、橋の建設は費用がかさむので市側が建設を渋っているとか。

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流れ橋の形状から見ても分かるように、歩行者と自転車、それにバイクくらいしか使う事ができない。たまにバイクが転落する事故も起きているという。それでも流れ橋が無くならないのは、住民が昔から生活道路として認識をしているからだ。

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流れ橋の手前にある馬頭観音は江戸時代よりこの場所から北浅川を渡る人々の安全を祈願して建てられたともある。何度橋が流されようとも違法だと言われようとも、この場所に橋を掛けるだけの理由があるんですね。

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流れ橋を経由すると、北浅川を渡ったすぐ先のところに陣馬街道があり、西東京バスの「切通し」バス停があり、すぐにバスに乗って八王子駅や高尾駅方面などに出る事が出来る。

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そんな浅川の上を優雅に泳いでいる鴨さんには人間様のご都合などどうでもいいんでしょうけどね。探偵ナイトスクープのネタみたいにボート通勤する訳にもいかないしね。色々と難しい事情のありそうな「流れ橋」でした。


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