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【どこそれ?】世田谷最弱タウン!小田急線「喜多見」には何があるのか

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新宿から小田原の間を結ぶ小田急電鉄小田原線(以下小田急線)は23区随一の優良住宅地を自認する世田谷区民の足でもある。小田急、東急、京王などの私鉄各線が世田谷区内を走っているが、小田急線沿線に限ると実に10駅もの区間が世田谷区に属している。東北沢に始まり下北沢、世田谷代田、梅ヶ丘、豪徳寺、経堂、千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、成城学園前…とまでは何となく頭に入ってはいるが、あれ?あと一駅はどこだ?と名前に出てこない駅がある。

それが世田谷区の最も外れに存在する「喜多見」という駅だ。新宿からは成城学園前乗り換えで片道20分、各停だけだと片道30分近くも掛かる、便利とも不便とも言えないビミョーな立ち位置にある駅だ。もちろんDEEP案内取材班は過去に一度たりともこの街を訪れた事もなかった。無論、今回が初めてである。

喜多見駅は各停以外オールスルーという安定のローカルっぷりで、しかもすぐ隣はミスチルが1DKアパートに二羽のインコを飼うマイナー過ぎる街「狛江」である。これだけで、もうかなりの郊外で田舎臭い街であるように思えるが、それでも駅前にはスーパーサミットだとかそれなりに買い物便利そうな店も揃っている。

世田谷アドレスに縋る人々が最後に辿り着く穴場の街「喜多見」

世田谷区と言えばそれだけで「高級住宅街」扱いされたり、世田谷住みをアピールするだけで無条件にお上品ぶれる事が出来る、ブランドイメージだけならすこぶる良好な地域ではあるが、小田急線沿線で世田谷区の物件を調べるとべらぼうに高く、駅チカの新築だとちょっとすれば億単位になってしまう。とてもじゃないけど世田谷に家が建てられない…という人に注目されているのが「喜多見」である。

世田谷に数ある街の中でも最も郊外部に位置する上に、小田急線の駅も各停しか止まらない、さらに小田急線の車庫が喜多見にあるにも関わらず、喜多見駅の手前の成城学園前駅から線路が車庫に伸びているので、当の喜多見民は通勤便利なはずの始発電車の恩恵にあずかる事もできない。不遇続きである。「世田谷区なのに妙に土地が安い喜多見」というネタは世田谷の不動産に詳しい人間の間では定説になっている。故に「住むなら穴場」とされている街だ。

そんな喜多見のビミョーな立ち位置をこの上無く感じる事ができるのが喜多見駅から近い場所にあるこちら「世田谷区立きたみふれあい広場」である。言うまでもなく喜多見民の憩いの場となっている公園だ。しかも公園の一部が小田急線車庫の上にある。

公園の片側には喜多見民にとって羨望の的となっている隣の高級住宅街、成城の街並みが見られる。成城と喜多見はすぐ隣町であるにも関わらず、一級河川「野川」によって区切られ、同じ世田谷区の間に”越えられない壁”を築き上げているのである。

そんな一級河川「野川」、最下流部は二子玉川付近で多摩川と合流するが、上流は調布や三鷹といった多摩地域を流れている。野川の案内看板も英語表記がテキトーだった一昔前には「No River」と書いていたというがさすがに外国人の嘲笑の的にもなったらしく、今となっては正しい表記である。

そんな野川によって隔てられた喜多見と成城の間を結ぶ橋はこの通り非常に弱々しいものである。世田谷区随一の高級住宅街の代名詞である「成城」とはすぐ隣にありながら、喜多見が世田谷最弱タウンとしての地位に甘んじている理由がこれで理解できよう。

野川の向こう側の高台にびっしり連なる成城の戸建住宅群。あの向こうには溜息しか出ないような豪邸や、先日家の壁に”死刑”だとか落書きされてしまった所ジョージの「世田谷ベース」や、高級スーパー「成城石井」創業の地なんかがあるのだ。

一方、きたみふれあい広場(小田急線車庫上)から見た喜多見一帯の街並み。ここから狛江側に向かうとひたすらフラットな低地となっている。生活圏で言うなら世田谷というよりも狛江寄りである。

成城の戸建てには手が届かない…という人々が住んでいるような、まあまあそこそこ見られるようなフツーの戸建住宅が多いのが喜多見だが、駅に近い世田谷区喜多見8、9丁目は非常に区域が狭く、少し外れるともう狛江市に入ってしまう。住所が狛江になっても良いならもう少し相場が下がる。だが、それでも世田谷アドレスにこだわる欲張りさんは駅から離れて、宇奈根あたりの「世田谷のチベット」にでも篭もるしかない。

そんな喜多見の和菓子屋「心庵 梅むら」の店先には「縁起餅アボヘボ」なる地元の銘菓の幟が立て掛けられている。アボヘボとは「粟穂、稗穂」の意味。地元の喜多見氷川神社の祭礼に使われ、この地域一帯の年始の豊作祈願に作られる縁起かつぎの飾り物がその名の由来である。そんな古いしきたりも残る世田谷の元農村、それが喜多見という街なのだろうか。ここにも知られざる東京の姿が…

喜多見駅のすぐ西側から既に狛江市である

喜多見駅自体は世田谷区に属している上に「世田谷区喜多見」という住所表記があるためか世田谷の街だと認識されるのが一般的だが、喜多見駅の西側は既に「狛江市岩戸北」である。駅前の「業務スーパー喜多見店」も狛江市側にあり、隣の成城とは違って買い物客も住民の層もまるで高級感がない。飲食店も世田谷らしいアッパー感の欠片もない「餃子の王将」とかだし。

それどころか原住民でさえも喜多見駅周辺のどこが世田谷でどこが狛江なのかその認識すらもあやふやなのか、電柱広告の住所表記が喜多見なのに通学路の文マークが狛江市となっていて、この通り一緒くたである。

挙句の果てには狛江市のコミュニティバスも喜多見駅を発着する便があるのを見ても分かるが「喜多見はほぼ狛江」と申し上げて良い。喜多見駅を利用する狛江市民も相当数いるだろうと考える。ちなみに狛江市民が使う隣の狛江駅や和泉多摩川駅も各停しか止まらず、準急以上は全スルー。小田急線のエアポケット的存在、それが狛江市であり、世田谷の外れの喜多見という街である。

喜多見駅前のローカル感溢れる「喜多見商店街」を見てみよう

そんな喜多見駅前から南東方向に伸びる、唯一駅前商店街と認識できる存在となっている「喜多見商店街」の様子を見る事にする。まあまあ駅前は地元民の生活に根ざした商店や飲食店が点在するが、同じ小田急線沿線の経堂だとか祖師ヶ谷大蔵あたりには遠く及ばない地味っぷり。

さっきの駅前のガード下にあった業務スーパーもそうだが、この喜多見商店街にも百均ショップだとかビンボー臭い店がやけに充実している点が特徴的だ。終始アッパー感で支配される小田急線沿線の世田谷区の街の中では喜多見のみが異質さを放っている。まるで葛飾区の京成線あたりの下町を見ているかのようだ。ろくに車道もない商店街を車や自転車が頻繁に往来するあたりも、全く23区内の街並みとは思えない。

そんな喜多見商店街でとりわけ買い物客が殺到しているスーパー「たぐちフーズ」。こことサミットと業務スーパーが喜多見民の普段の食料品調達の生命線であるものと思われる。何度も言いますがここは世田谷区です。ピンからキリまである世田谷区の、随分キリ寄りの街ですが、それほどガラの悪い店も見当たらず、地味に暮らすだけなら悪くないのでは。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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