住みたい街人気急上昇!再開発タワマンに侵食される「武蔵小杉」の昭和と平成がせめぎ合う街並み

川崎市中原区

東京と横浜に挟まれた立地で、ベッドタウンとして急成長を遂げ人口146万人を数える神奈川県第二の政令指定都市「川崎市」の中でも近年メキメキと頭角を現し始めたのが、東急東横線、JR南武線に加えてJR横須賀線ホームまで新設され、再開発でタワーマンションが続々建設中の街「武蔵小杉」である。

川崎市中原区 武蔵小杉

というわけで、個人的にはあまり立ち寄る機会のない武蔵小杉駅にやってきました。多摩川沿いに川崎駅から北西方向に6キロ離れていて、同じ川崎市でも東急東横線沿いという事で雰囲気が若干大人しいのも特徴。しかし再開発で駅前風景はガラリと変わった。

川崎市中原区 武蔵小杉

ここ数年の間に武蔵小杉が変貌し過ぎてヤバイとは聞いていたが、一体何なんだこれは…特に東横線武蔵小杉駅東口からJR横須賀線ホーム側に向けた一帯は、完全に再開発されきって今時なタワーマンションやショッピングモールが誕生してしまっている。

川崎市中原区 武蔵小杉

武蔵小杉駅前には59階建ての「パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー」(2009年完成)、47階建ての「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」(2008年完成)が既にあり、それに加えて、ららテラス武蔵小杉に隣接する38階建て「パークシティ武蔵小杉ザグランドウイングタワー」(2014年完成)もある。全部頭に「パークシティ武蔵小杉」が付いている3つのタワマンは全て大手デベロッパー・三井不動産レジデンシャルが手掛けている。

川崎市中原区 武蔵小杉

さらに東横線駅西口には東急スクエアや中原図書館と一体化している39階建ての「エクラスタワー武蔵小杉」(2013年完成)がそびえている。このタワマン建設ラッシュは神奈川県内では横浜みなとみらい以上に勢いがあり、むしろ東京都心の豊洲・勝どきのバブルっぷりを想起させる。さらに駅の南側にもタワマンがもう3つぶっ建てられていて、この地区の10年間の人口密度の変化も凄まじいものがあるだろう。

川崎市中原区 武蔵小杉

「ステーションフォレストタワー」の階下にあるスーパーマーケット「フーディアム武蔵小杉店」、こう見えてダイエー系列の新業態店舗である。やっぱりダイエーのままだとおしゃれ感が乏しかったのか?

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それに加えて新興タワマン住民向けに出来た新しいショッピングモール「グランツリー武蔵小杉」(2014年11月開業)、セブンアンドワイホールディングスが手掛けるヨーカドーを核店舗にしたシャレオツスタイルのモールは川口や亀有あたりの「アリオ」とは一線を画するラインナップでタワマン住民のアッパーでハイソな生活を応援している。

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今や武蔵小杉のタワマン住みの主婦を指して「ムサコマダム」という言葉まで出来てしまい、住みたい街ランキングの上位に食い込んできたこの街…元々川崎らしい煤けた工業地帯だったはずの場所がそれとは真逆のお洒落タウンに生まれ変わるのは豊洲・勝どきと並ぶ程のドラスティックな出来事だ。

川崎市中原区 武蔵小杉

多摩川対岸、東京都側の田園調布の河川敷からも見える武蔵小杉のタワーマンション群は2010年代の東京近郊で最も変貌したサイバーでハイパーな空間である。この現状こそがネット上でよく見かけるコピペ「武蔵小杉最強伝説」の所以なのか…どんなに高級ぶっても住所を見れば「川崎市」なのは変わらないですけどね。

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しかしそんなタワマン群が大手を振るって威張りだした武蔵小杉の街だからこそ昔からの古臭い街並みが残っているか気になって見てしまうもの。東横線駅西口の一角は未だに雑多な駅前風景が残されている。

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特に古くからの武蔵小杉を知る者からすれば「武蔵小杉らしい風景だな」と思える「センターロード小杉」入口付近の雑居ビルが立ち並ぶ光景。ここが無くなってしまうと、もう完全に別の町になってしまいそうだ。

川崎市中原区 武蔵小杉

その並びにある昭和な佇まいの純喫茶「ブラジル」も健在。二階の系列店「洋酒コンパブラジル」も合わせて、創業40年を超える老舗だとか。タワマンに侵食されつつある武蔵小杉最後の昭和の牙城だ!

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1階喫茶店の脇から伸びる階段を登るとその上が洋酒コンパで、さらに3階には雀荘まであるというモロ昭和仕様。さらに2階の洋酒コンパでは昼カラオケも可能らしい。それにしても店名に「コンパ」と書いてるバーって首都圏広しと言えども見た事あるのは「江古田コンパ」とここだけですよ…

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武蔵小杉住みの呑んだくれオヤジ御用達の「センターロード小杉」。チェーン系の味気ない居酒屋や外食店舗が若干進出してはいるが、古くからの土着酒場も複数存在する飲食店街。東横線沿線ではもはや少数派となった風景…

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ここの土着酒場の筆頭と言えば「炭火焼鳥くろちゃん」でしょうか。平日朝10時から営業しており朝から呑める店は武蔵小杉では貴重な存在。元々工業地帯で働くおじさん達の街だった頃からの店だもの。店の前では常連客と店員が仲良くしゃべっていたりして、愛されてる感半端ないっすね。

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こういうベタなディスプレイを掲げるオシャレ感皆無の薬局があったりするあたりに時折元からあった武蔵小杉の「地」が見えるもので、それを探すのも一興。

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東横線の高架沿いにあったうらびれた雑居ビルばかりが立ち並ぶ一角も、辛うじてその佇まいを残している。線路を挟んで昭和と平成が対峙している格好になる駅前風景も、そのうち見られなくなるのかもね。

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とうとう新規出店のパチンコ屋までタワマン住民のレベルに合わせて「健康パチンコ」を謳い出す始末。健康パチンコとは何だろう、単に全館禁煙なだけでしょうか、よくわかりませんが…

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相変わらず歩道部分が狭く歩きづらい国道409号府中街道も健在。この道路を跨いだ先の法政通り商店街も変わらない佇まいで、少し安心した。川崎ならではの毒気は湾岸部よりはだいぶ薄いですがね…

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今度はJR南武線駅北側の一角。ここも駅前一等地を戦後のドサクサでゴニョゴニョしたかのような古い長屋店舗が残っているのだが、軒並みシャッターを下ろしていて廃業した店ばかり。もう、ここらへんも再開発が掛かってしまうのだろうかね。

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そんな駅前の一角で唯一営業している中華「大三元」。ラーメン半チャーハンのセットが700円と大変コストパフォーマンスに優れた街の土着中華料理屋さん。駅前ではもはや少数派ですよ…

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…という訳で今後も再開発の行方に目が離せない武蔵小杉駅周辺。またあと5年くらいしたら全く変わってしまったりするのでしょうかね。


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