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地上げで壊滅寸前「中野45番街」の現状 (1)

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またまた、かなり久しぶりに中野の街にやってきた。中野と言えばどこぞの調査で「住みたい街」「住んでよかった街」のランキングに常連で出てくるような街で、吉祥寺や下北沢だのといった浮ついたおのぼりさんの闊歩する街というイメージが個人的には強い。非常に人気の高い住宅地の一つだ。
そのせいか駅前繁華街の再開発のスピードが半端無く、気が付けば北口のバス乗り場がサンプラザの横に移転していたり、警察学校があった辺りのだだっ広い空き地も大規模再開発絶賛進行中で、大学が移転するなどの一大プロジェクトになっている。ますます無機質でカッペの憧れ臭い街へと「浄化」が進んでいる訳だ。
そして南口の五叉路の前にあったオンボロ市場跡「中野センター」もとっくに取り壊され、跡地は味気もないマンションに変わってしまっている。今回訪れる物件も、そんな再開発の攻勢に今まさに流されようとしている最後の場末的空間だ。
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オタクビルの中野ブロードウェイを通って早稲田通り沿いに出てきた。
人気の住宅地・中野北口の住民が「中野に住んでます」と言いながら実際は新井薬師や野方に住んでいるというネタだが、そうした住民がJR中野駅からサンモール商店街とブロードウェイ内の通路を経て自宅に行き交う動線ともなり人通りも絶えない、そんなメジャーな場所に「中野45番街」という潰れかけの飲み屋街がひっそりと残っている。


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そこは日常的に人々の行き交う街中に隣り合いながら、まるで存在自体が無かったかのように佇んでいる不思議な飲み屋街である。ブロードウェイの出口付近に「四十五番街入口」を示す看板があるが「明るい飲食店街」とは何かの冗談なのか。
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立派な案内看板があるというのに45番街の入口はその看板の真後ろにある、隣のビルとの間のわずかな隙間を縫って行くという、物凄いアプローチなのだ。
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不思議なアプローチと思いつつも興味のそそられるままに奥へと入っていくと、とある民家の玄関脇に出てくる。その先には唐突に飲み屋街が現れるのだが、随分と様子が変なのだ。
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飲み屋街の殆どの土地が地上げ屋によってことごとく破壊され、立ち退きが完了した土地は軒並みベニヤ板で封鎖されてもぬけの殻と化しているのである。飲み屋街との境目にある一軒の民家は随分な思いをしているに違いない。
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少し歩くと45番街の中核を成していた一帯に出てくる。殆ど廃墟とベニヤ板で囲まれた空き地しかないという惨状。見るからに異様だ。
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中野45番街の誕生もやはり戦後に遡り、当然ながら隣にそびえるブロードウェイよりも古く、昔からバラック酒場がずらりと並んでいた。ここと隣接する土地にはやはり怪しげな飲み屋街となっている「昭和新道商店街」があって、盛り場としての歴史を感じさせる。
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現状では45番街にある店のマスターが別の場所に移転するかもしくは高齢化で引退するか死亡するかしない限りは無理に取り壊す事もしないので、結果として年単位でじわじわと店舗の建物が解体されていく。3年前にはもう少し建物が残っていたはずだが、今では数軒ほどの廃墟がぽつんと残っているだけ。
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再開発による立ち退きなのかと思えるのだが、どこにも再開発計画が明示されておらず、公式なものではないようだ。つまり地上げ屋による攻撃を受けてじわじわと長時間掛けてなぶり殺しにされている模様。
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ベニヤ板で塞がれ空き地となった土地にはびっしりと蔓草が生い茂っていて、地上げが相当の年月を掛けている事を感じさせてくれる。玄関口もベニヤ板で塞がれたかつての盛り場の建物は、ただ自らの死期を悟ったかのごとく解体される時を待っている。
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だがその場所に未だに一軒だけ現役のスナックが営業している。「ぱじゃんか」という店である。この場所で半世紀以上、現在80代のママが切り盛りする小さな店が中野45番街の最後の生き残りだ。
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一軒を残して全てが廃墟になっているという飲み屋街の姿は、去りゆく老兵のごとく、東京という世界中でも類を見ない都会のど真ん中で、利益や効率という言葉の前に古い街並みが蹂躙される風景を目の当たりにしているのだ。
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一昔前には飲み屋街の各店舗を結んでいたはずの電話線やら電線の絡まり具合がたまらない。もう隣には綺麗なマンションが偉そげにデデーンと構えている。45番街が壊滅すれば、跡地は同じような没個性的で、利益と効率だけを重視したつまらないマンションになるのだろうか。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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