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野方でも高円寺でもない真空地帯「中野区大和町」の廃れた商店街

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サブカルかぶれの群がる街、JR中央線「高円寺」は東京都杉並区にあり、誰に聞いても杉並区以外の何者でもない場所だが、実はれっきとした高円寺エリアであるにも関わらず、はみ出し者扱いされている地域がある。「中野区大和町」だ。

高円寺駅北口から庚申通り商店街を抜けると早稲田通りに出る。ここから北側は杉並区ではなく中野区大和町。一丁目から四丁目まである大和町だが、同じ中野区に属する西武新宿線野方駅に近いのはごくわずかで、大部分は高円寺駅が最寄り。圧倒的多数の住民がチャリンコに乗るなりして高円寺駅までやってくる。

お家賃安めで高円寺ライフが楽しめる中野区大和町

さて、そんな中野区大和町に足を踏み入れてみよう。やはり高円寺駅周辺同様に風呂なしトイレ共同っぽいボロアパートがそこらじゅうに点在している。しかも大体駅から徒歩10分以上離れている上に中野区に属しているので家賃相場も随分お安くなる。それに足立区や荒川区のそれとは違い、町工場というものは皆無な純然たる住宅地で、貧乏臭いながらも住環境は滅法良い。

しかし大和町に住んでしまうと中野区民になってしまうので、高円寺にある杉並区役所の出張所といった場所で住民サービスを受けられなかったりして地味に不便をこうむる。普段から東京が生活の拠点なのに東京都知事選挙で一票を投じられない埼玉県民の寂しい心境に非常に近いものがある。

風呂なしアパートの多い高円寺には小杉湯やなみのゆといった銭湯も数多く残るがこちら大和町にも「大和湯」という渋い銭湯がある。住所にこだわりが無ければ、それから杉並区民ではない故に受ける多少の不便を飲み込めるのであれば、充分に高円寺住民面して過ごせる街なのである。しかし土着高円寺民の一部には「早稲田通りから先は高円寺ではない」と差別されたりといろいろ不遇な立場である事に変わりはない。

大和町中央通親和会という激寂れ商店街

そんな不遇の大和町にも一応ながら「商店街」と呼べそうな場所が存在している。大和町中央通親和会という名称の商店街で、早稲田通りを挟んだ向こう側の高円寺庚申通りの延長線上に伸びている。規模的には商店街というよりも、商店会ですかね。

そして大和町にも大勢の住民が暮らしている故にこの商店街も駅から相当離れてはいるものの、ちらほらと食い物屋が並んでいたり、コンビニが何軒かあるなどして地域住民の生活の利便性を辛うじて確保しているのである。だが立ち並ぶ店舗の建物には廃屋化した所も非常に目立つ。

別に高円寺駅前まで行かなくても薬局の一軒くらいはあるんですが恐ろしく渋い佇まいであります。何故かプラセンタエキスと滋養強壮剤・松寿仙を猛烈プッシュしている、怪しげな外観の「くすりのやまと薬品」。

完全に時間軸が昭和で止まってしまっている「駅から遠い商店街」の宿命たる光景である。街の洋品店ももはや地元の小中学生の制服や体操服の販売だけで支えられている感がある、この商売っ気の無い店構え。

しかしこの辺の建物とかもそうですが、戦後期に建設されてそのままになっているような看板建築だとか古びた商店の建物が非常に多く残っている。そんな身なりで「大衆酒処ともしび」とか言われたら寂寥感MAXですよね。

高円寺の駅周辺にも訳の分からない固定客がいて何をやっているのか判断できない怪しげな酒場がうじゃうじゃ存在するが、こちら大和町にもちらほらとございますね。テレビ露出が多めで知る人ぞ知る的な焼鳥酒場「大和鳥」ですけれども、きたなシュラン認定証がある店は割とガチです。

「民生食堂」とはなんぞ?戦後の香り漂う激渋大衆食堂

続いてこちらの渋めの店構えの定食屋も、大和町では指折りの老舗食堂の一つとしてバリバリの現役である。「民生食堂 天平」…一風聞き慣れない民生食堂という四文字が店名に入っている昭和感凄まじいお店なのですが、普通に食堂呑みが出来そうな街の大衆食堂以外の何者でもない。

終戦直後の食糧難の時期に『低所得者であって常時外食するものに対して、低廉で栄養価の高い食事を供食するとともに、災害時における一般都民に対する供食事業を円滑に進めることを目的とする』という要綱を元に東京都の指定を受けていた「民生食堂」という制度があった名残りの名称なんですが、戦後70年以上過ぎた現代にこの四文字を店の看板にデカデカと掲げているのはこの「天平」以外に知らない。

高円寺以上に貧乏臭く激渋すぎる大和町の大衆中華料理店たち

その他、大和町中央通にも何軒か存在している中華系大衆食堂の数々。店構えは総じて昭和のまんまで飾りっ気ゼロなところが共通している。自家製手もみ麺と看板にあるこちらの中華料理屋「中華料理 一番」もまた激渋度数高い。

店先に張り出されたお品書きも黒い紙に黄色の手書き文字、それを画鋲で固定しているという昭和過ぎるスタイル。格安の定食やセットメニューの数々も注目。ラーメン・野菜あんかけ丼700円、生姜焼肉定食650円…日高屋やぎょうざの満洲も太刀打ちできない驚愕の価格設定である。

さらに同じ大和町中央通にあるラーメン「勝楽」もこの堂々たる激渋な店構え。店先にカブが停められているあたり、出前も可能な街の中華屋といったところであろう。ビール瓶の通い箱が多めに積まれているのも、さぞかし仕事帰りの常連客が飲酒しまくるアルコール度数の高い店であることを伺わせる。

あと、大和町中央通から少し外れた住宅地にも「三楽」(みらく)というこれまたキツそうな店構えのオンボロレトロ大衆中華料理店があったんですが、数年前に廃業して建物ごと無くなってしまいました。従ってこちらの写真は在りし日の姿である。

「三楽」は先の店舗と比べてもお値段がまた一回りお安くなっていた。中華料理屋なのに「カレーうどん350円 おつまみにホルモンカレー300円」という脱線ぶりに「ウロンハイ」「チウハイ」「しよが焼」といちいち日本語が不自由なお品書きが渋さに磨きをかけている。高円寺激安食堂の底辺を担っていたはずの迷店舗もいつの間にか姿を消してしまった。

ちなみに大和町中央通を北上していくとその終端は妙正寺川に架かる川北橋である。さすがにここまで来ると高円寺駅よりも都立家政駅や野方駅のほうが最寄り駅になる。やはり高円寺でも野方でもない真空地帯、それが中野区大和町という立ち位置の微妙な街なのだ。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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