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上野御徒町 純喫茶「丘」

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昨今はどこの街にもスターバックスばかり出来て画一化著しくつまらない今日この頃だが、喫茶店のチェーン店化が進む一方で忘れられそうになっている「純喫茶」の存在を貴方は知らないだろうか。もしかすると、そもそも純喫茶とは何なのかという説明から始める必要があるかも知れない。
純喫茶とは、酒類を扱わずホステスによる接客を行わない純粋な喫茶店という意味で使われていた言葉である。
時代を遡ると戦後間近の昭和33年、売春防止法施行により赤線が廃止される前後、遊郭が特殊喫茶「カフェー」名目で営業を続けていた。その特殊喫茶(深夜喫茶、美人喫茶とも言われていた)に対する呼称として「純喫茶」と呼ばれていたものだ。
つまり喫茶という業態の店に対するいかがわしいイメージを廃するための「純」なんですね。しかし中年世代以降の我々にはそんな経緯があったことなど調べてみるまで知る由もなかったであろう。
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今では純喫茶という言葉は全く死語と化してしまった。純喫茶最盛期である昭和30~50年代頃に開業しそのまま営業を続けている店は現在でも全国各地にあるが、そのどれもがオーナーが引退したり潰れたりということで絶滅危惧種である。
上野は純喫茶のメッカとしてマニアには知られている場所だが、特にオススメしたいのが御徒町にある「純喫茶 丘」だ。その店の場所は古びた雑居ビルの中にある。うっかり通り過ぎてしまいそうな場所だ。


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「丘」の入口。この見事なほどのレトロ具合は他ではなかなかお目にかかれない。なんでも開業時期が東京オリンピック開幕の昭和39年だというのだ。
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看板のフォントがいちいち縦長。大昔の白黒映画の字幕を思い出すね。
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店の名前が「丘」なのに店の中は地下へと矢印が伸びているのが矛盾していて笑える。つくづくアンダーグラウンドな趣をしている喫茶店だ。入口だけでこんなにワクワクする純喫茶もそうそう見かけないだろう。
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案内看板を見るとレトロな情緒を醸し出すフォントに萌える。両側がステンドグラスになっているのもポイントが高い。
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上を見上げると立派なシャンデリアと天井の装飾がいちいち凄い。今時のインスタントな作りの喫茶店とはまるで違う。半世紀も時間が流れると喫茶店の定義はこうも変わってしまうものなのか。
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太陽の光が遮られた地下空間にぽっかりと「丘」の入口があった。
入店してみるとさらに店内は地下1階と地下2階に分かれていて驚く。表のしょぼい雑居ビルの外観とはまるで裏腹な展開。
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そして地下2層構造の吹き抜け部分にはこれまたひときわ立派なシャンデリアが吊るされている。まるで夢の世界、地下宮殿のごとき店内に息を呑む。
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我々は地下2階に案内された。総革張りの座席に身体を埋め込みふと天井を見上げると、明かりが色とりどりのステンドグラス装飾に彩られて独特の光彩を店内に放っていた。地上のアメ横の喧騒とは打って変わって別世界のような静けさが包む。
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しかし店内を見渡すと我々以外にほとんど客が居ない事に気が付いた。
厳密には2~3人の客が居たのだが何やら様子が変である。
全員男一人の客で、しかもみんなぐっすり居眠りをこいている。飲み物一杯だけ頼んで、この都会のオアシス的な地下純喫茶で仮眠を取っているのだ。よく見るとちゃっかりペットボトルまで取り出していて客としては完全に変である。
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よく考えればネットカフェで2時間仮眠を取るのと「丘」で飲み物を一杯頼んで仮眠を取るのとではコストパフォーマンスは変わらない。3時間以上だとむしろ元が取れてしまう計算になる。絶滅危惧種の純喫茶はいまやネットカフェ難民の休息の場となっていたわけだ。店内BGMは彼らのいびきの音だけがひたすら流れ続けるのみ。
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テーブルは昔懐かしい麻雀ゲーム。手元にロンとかチーとか書かれたキーボードが並んでいる。これに占いとピーナッツの自販機が備えてあれば完璧だがそれは残念ながら無かった。
オーダーしたナポリタンスパゲッティはしっかりとした太麺。昭和の味がした。
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オレンジパフェはどう見ても缶詰のみかんで笑えた。これぞ昭和の純喫茶クオリティだ。
「丘」の他にもまだまだ上野界隈には「王城」「古城」といったガチの純喫茶が存在する。上野の街でまたひとつDEEPな空間を堪能して満足して帰ったのでした。上野は本当に素敵な街だ。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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