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軍港・横須賀 (5) どぶ板通り商店街<前編>

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米軍基地が隣合わせに存在する横須賀の街で最も街の泥臭さを残す場所が、基地の真ん前にある「どぶ板通り」、正式名称は本町商店会。
いかにも泥臭い商店街の名前は、戦前にこの通りの中央にドブ川が通っていたのを、海軍工廠から分厚い鉄板を貰ってドブ川に蓋をした上に商店街が出来た事から来ているという。

敗戦後、旧海軍の敷地が接収されて米軍基地に変わるやいなや、この商店街は米兵を相手とする土産物屋や飲食店が立ち並ぶようになり、現在に至る。
かつてのドブ川は埋め立てられて、文字通りのどぶ板も存在しない。コンクリートブロックにどぶ板の模様が刻まれているだけだ。



どぶ板通りは京急汐入駅前から米軍基地の真ん前、国道16号横須賀街道の一本南側を並行して、中央大通りまで続いている。
今でこそ整然とした商店街となっているが、昔は酔っ払った米兵に何をされるか分からないと恐れられ、横須賀育ちであれば子供の時期には「どぶ板は危ないから絶対に行くな」と必ず教えられる程の場所だったそうだ。

今のどぶ板通りには、横須賀に馴染みの深い有名人の手形レリーフが飾られているなど、一転して観光拠点の一つとして整備されていて、かつての危ない場所という雰囲気はどこにもない。
しかし、2008年には米兵によるタクシー運転手殺害事件が発生して、その年の横須賀基地の桜祭りが大規模自粛する事態になるなど、全く危険がないという訳でもない。治安維持の為に地元警察に加えて、夜間を中心に米軍側のMPが繁華街を巡回している。

戦前の名残りは殆ど無いが、どぶ板通りの外れ、横須賀芸術劇場の敷地には旧海軍下士官兵集会所跡と記された石碑が置かれている。
戦後は米軍に接収されて「EMクラブ」となり、昭和58(1983)年に日本に返還されるまでは米兵の娯楽施設として使われ戦後日本におけるジャズ発祥の地ともなった場所だが、それを赤字垂れ流しの豪華ハコモノ施設に建て替えてしまうとはつくづく行政のセンスのなさを思う。

どぶ板通り中程にある「延命地蔵尊」。アメリカかぶれの商店街ではかえって目立って見える。その隣にはステッカーまみれのライブハウス。

どぶ板通りの前も急峻な山が迫っていて迫力がある。商店街のすぐ裏手に階段が伸びていて、その上にアパートや戸建て住宅が並んでいる。
崖下にはトンネルを利用した車庫のようなスペースがあるが、荒れ果てていて使われている形跡がない。

今は現役ではないのか公明党ポスターに蹂躙されたレトロでサイケデリックなデザインが特徴的な「スナックヨコスカ」。外人バーだらけのカオスで泥臭い歓楽街の風情が残る。

近年ではこれらの米兵相手の店も次々店を閉めているようで、シャッターが閉まったままの店舗や、そうでなくとも営業していなさそうな店の姿がちらほらある。微妙に寂れた感じがしなくもない。米兵達も京急に乗って横浜や都内に行くようになって、地元で遊ばなくなったのかもな。

どぶ板通りにも昼と夜の姿がある。昼間開いている店は米兵を対象とした土産物屋やファッションショップが目立っている。そのどれもが年季の入った老舗で、横須賀ならではだ。

だが、このどぶ板通り商店街で特筆すべきなのは「スカジャン」発祥の地として知られる老舗のスカジャン専門店や刺繍屋が現役で店を出している事だ。
光沢のあるジャンパーに龍や鷹や虎などの派手な刺繍を施したもの、今どきで言えばヤンキーが好みそうな服に思えるが、もともとは米兵の土産物として自分の着ているジャンパーにジャパニーズテイストな刺繍を入れてもらうファッションが元だったのだ。
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老舗のプリンス商会は「創業1947年」と大きく書かれた看板通り、終戦直後からスカジャン専門店としてどぶ板通りで営業を続けている。
スカジャンと言えば「横須賀ジャンパー」の略だったのね、とここで今更気付く。

昼間はひたすらシャッターを下ろして沈黙を保っているどぶ板通りの外人バーの数々。日が暮れると、どぶ板通りの様子は一変する。一杯羽目を外しにやってくる米兵の姿で溢れ返るからだ。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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