三浦半島の先端を往く (6) 三崎下町商店街<前編>

三崎港と城ヶ島を回った後に、どうしても行っておきたい場所があったので寄ってきた。
三崎港住民の集う「三崎下町商店街」である。商店街は「三崎銀座商店街」をはじめ「サンロード」「すずらん通り」「日の出通り」などと通り毎に違った名称がつけられている。

三崎港のバス停を降りた先で、朝市などが行われているのと逆方向に商店街がある。
最寄りに電車の駅すらないような半島どん詰まりの田舎町にあるとは思えない程規模が大きいが、その反面ことごとく寂れまくっていて、それがいい塩梅でレトロな風情を留めている。



バス停を降りて商店街に向かうと最初に通りがかるのが「サンロード」と書かれた通り。
日曜日だったせいもあるかも知れないがことごとくシャッター通りと化してしまっている。
商店街の大きさはマグロ遠洋漁業の町として栄華を極めた痕跡でもあるが、こうも寂れまくると傍目から見るとお気の毒に思えて仕方がない。

とっくに商売をやめてしまったかのような店の数々も、よく見るとすこぶるレトロな洋風建築が残っていて、リアルでタイムスリップしたかのような気分にさせる。婦人服・紳士服のマツウラの建物はとりわけ立派である。

東京では殆どの商店街でチェーン系店舗がどこかしらに出店しているものだが、三崎の商店街に限ってはそんなものは全く無縁である。

ある意味「昭和の商店街」を忠実に残している事から、地元NPO「みうら映画舎」の誘致活動によって、商店街の空き店舗等を使ったドラマや映画のロケが結構頻繁に行われている。
我々東京DEEP案内取材班がこの商店街を知ったのも、元はと言えば三木聡監督、上野樹里主演の映画「亀は意外と速く泳ぐ」を観たからという、実に受け売り全開な理由だったのだ。

港町特有の入り組んだ路地は迷路のように隠れる風景を次から次へ見せつけてくれる。路地裏にも一軒の喫茶店。この商店街は思ったより懐が広い。

三崎港の朝市にやってくる観光客を呼び込もうとマグロ丼ののぼりを掲げる店や、いかにも観光客向けな定食屋がちらほらあるものの、それはごく少数派である。老舗の釣具店が商店街に平然と並んでいる所も漁師町ならではの光景。

そんな商店街の傍らに神社への参道が伸びている。手前には漁師町らしいメニューを揃える食堂。

まっすぐ伸びる石畳を進めばその奥は三浦の総鎮守「海南神社」、その手前には民家や飲食店が並んでいる。

参道の途中にあるスナック、その名も「イタコ」。もしかして死人を呼び出して口寄せをするスピリチュアルなマスターでもいるのだろうか。

三崎港の民家はどれも年季が入りまくっている。こうした板葺きの壁を持つ家が非常に多いのだ。

海南神社は天元5(982)年創建というかなり古い神社で、藤原鎌足の後裔である藤原資盈(すけみつ)を祀っている。
皇位継承争いのごたごたで筑紫国に流される途中に暴風雨に遭い三崎に流された資盈公は、長年三浦半島の人々を苦しめていた房総の海賊を退治して村人に漁を教えて生涯地元の役に立ったそうだ。

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