三浦半島の先端を往く (8) 三崎下町商店街<後編>

映画ロケ地だったりゲームソフトのロケ地だったりして来た事はなくとも「そう言えば見た事があるかも知れない」デジャブに襲われそうになる商店街、それが三浦半島最先端、三崎港にある三崎下町商店街である。

しかし相変わらず閉めたままの店ばかりで泣けてしまうのである。
奇しくも三崎が遠洋漁業で栄えていたのは昭和の話だ。



マグロ漁で好景気に湧いた日本随一のマグロ漁港の繁栄は、外国産マグロのシェア拡大、3K労働で都市伝説という遠洋漁業マグロ漁師の高齢化と担い手不足、環境テロ団体からの攻撃、そして「日本人はマグロ食い過ぎだよね」という海外からの批判もあって徐々に衰退傾向にある。

昭和のまま時を止めた商店街には、それなりの理由があるのだ。
かつての栄華の跡はみるみる錆色に変わりつつある。

漁師町の住宅地もそれらしい男臭さはどこにも感じられず。マグロ漁師はどこに居るのだろう。ちなみに三崎港のある三浦市は神奈川県内で過疎化が激しい自治体の一つだ。

昔はさぞかし海の男達が出歩いていたであろうスナック街も、ひたすら静寂に包まれているばかりだ。

古びた路地裏の住宅地はどこを見ても絵になってしまう。ロケ地誘致という手段で町おこしを繰り広げているという三崎港だが、プレステ2の癒し系お散歩ゲーム「トロと休日」にこの街の風景が随所に出てくるというのは一部では有名。
そう言えば商店街の片隅に猫の人形が置かれていた。

迷路のような路地を抜けると、たいがい目の前に住民の生活空間が手の届く場所にある生々しさが新鮮である。昔の街と言えばみんなこんな感じだったはずだが、今どきの感覚では誰もこんな隙だらけの街並みを作ろうとはしないのだろう。いずれ消える事になる風景。

商店街から路地を入った住宅街のど真ん中に小高い丘と小さな鳥居がぽつんと建っている。

丘の上に登ると、そこには本当に小さなお稲荷様が祀られているだけで屋根すらない雨ざらしの寂しい神社があった。

その正面には三崎港の住宅街が屋根だけだが軽く見渡せる。手前の駐車場も地味に「亀は意外と速く泳ぐ」のロケ地だった。

丘の上から家々を見下ろすと視界に入ったのは昼寝の最中だった箱入り猫だ。漁師町には猫が似合う。三崎の猫はさぞかし肉付きが良いが、やっぱりマグロとか食ってるんだろうか。

三崎港もあらかた探索した事だし、ある目的があるので、そろそろ油壺…厳密には浜諸磯という集落へ行こうという事にした。浜諸磯へは三崎港からも本数は少ないがバスが出ている。
三崎港のバス停に戻ると目的地行きのバスがもう来てたので、慌てて飛び乗った。
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