世田谷らしからぬ超下町「エーダンモール深沢」 (2)

東京スイーツタウンの代表格「自由が丘」から駅前の自由通りを北上、目黒通りを挟んで旧呑川緑道に入りとぼとぼと歩いて駅からおよそ2キロの道のり、世田谷区深沢三丁目の一画に広がる超下町商店街「エーダンモール深沢」。

そこは戦後建設された都営団地の名残りが今に続く深沢地区で唯一の古い商店街だ。
周囲の新興スイーツタウンとは一線を画し、東京東側の下町ゾーンと見劣りしない古びて殺伐とした街並みが続いている。



あまりに寂れてしまっているせいか、商店街の端っこに行くと、玄関前に乱雑に荷物が積み上げられていて既に商売やる気あるのかわからないような店もちらほら見かける。
同じ深沢の街にありながら、自由が丘が大好きなセレブ住民には見事に無視される街。まさに孤高の存在と言えよう。

エーダンモール深沢商店街内の建物もおおかた建てかえられているものも多いが、一部には商店街発足時に建てられたと思われるアパート兼店舗の2階建て長屋が残る場所もある。やはりそこにも営業しているのかどうかも怪しい飲食店の姿。看板の黄ばみ方が半端なく時の流れを伝えている。

アパート兼店舗の1階には古いコインランドリーも残っていた。古いアパートには洗濯機置き場すら無かったりする訳で、今でもコインランドリーを使い続ける住民がいるからこそ残っているものだろう。

一方で、ちゃんとした下町だったらコインランドリーもあれば銭湯もあるものだが、エーダンモール深沢界隈には銭湯が残っていない。もし部屋に風呂が付いていなかったら、どこの銭湯に行けばいいのやら。

晴れた休日の午後、一昔前だったら買い物客が闊歩する姿が見かけられたかも知れない。しかし商店街を通りがかる人の姿も殆どなく、世田谷らしくいたって「閑静な住宅街」と化してしまっていて皮肉である。綺麗に舗装された商店街の歩道が虚しく映る。

凄まじく年季の入った木造平屋建ての家屋が商店街沿いに建っているが、見た目のボロさとは裏腹に戦後建てられたものだろうと思われる。もともとこの土地には都営団地しかなかったからだ。

街の電気屋さんの店先もレトロ仕様過ぎて一体いつの時代に現役だったのかすら不明な状態で放置されている。ここもどう見ても営業しているようには見えない。

既にシャッターを下ろしたままの商店は単にタバコの自販機が置かれているだけ。大きな看板には辛うじて「販売所」とかすれた文字が読める程度でどんな店だったのか分からなくなっている。

しかも空き地と化した商店の跡には何故か「東京都所有地」と立て札が掲げられて杭が打たれている。どういう事なのだろう。元々都営団地があった跡に商店街が出来たエーダンモール深沢ならではの事情だろうか。

至る所がガラクタ置き場になっていたりして、おおよそ商店街らしくない。整然とした街並みを見慣れた世田谷新住民の目から見れば、さぞかし奇妙な場所に映る事だろう。

なぜかバリ島土産か何かの置物まで置かれていて意味不明だ。欧米かぶれしたスイーツタウンを尻目に、エーダンモール深沢界隈は東南アジア系マーケットの臭いすら漂わせる特異な空間が未だに残っている。

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