日本最古の地下街・神田「須田町ストア」

東京に暮らす人なら誰でも乗っている、地下鉄。
ちょっと前までは営団地下鉄と言っていたものが民営化に伴った事もあって「東京メトロ」だなんて名前で呼ばれている。
銀座線から副都心線まで9路線、戦前戦後を通して東京都心の交通網としての役割を担ってきた訳であるが、近年では表参道だの池袋だの、JRに見習うようにエキナカスイーツ化計画進行中。
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最近じゃ改札口の中まで甘ったるくなってきて東京DEEP案内取材班も鼻が曲がりそうになる昨今だが、そんな東京メトロの銀座線神田駅に「日本最古の地下街」がひっそりと存在しているという話を聞いて、一度見に行きたいと思っていたのだ。


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日本最古の地下街がある地下鉄銀座線は日本最古の地下鉄路線でもある。浅草から新橋を通るのは「地下鉄の父」早川徳次率いる東京地下鉄道、新橋から渋谷を通るのは東急の五島慶太率いる東京高速鉄道、戦前に別々に建設された2社の地下鉄が一体化して直通運転しているものだ。
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銀座線神田駅を降りて、JRの駅がある反対側の須田町方面改札に向かう。日本最古の地下鉄だけあって、どこの駅のホームもやたら天井が狭い。
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須田町方面改札に登る階段の脇に、こっそりと地下街の名を示す看板が隠れているのだ。
「須田町ストア」… 正確には神田須田町地下鉄ストアといい、それは今の銀座線の前身となる東京地下鉄道時代、万世橋駅(現存せず)から神田駅間が開通した昭和6(1931)年に駅と共に誕生した日本最古の地下街。それが今でも地味に残っている。
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須田町方面改札を降りると5番出口と閉鎖中の6番出口があるが、そのまま真っ直ぐ6番出口方面に続いている地下街が「須田町ストア」になる。
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しかし地下街と思しき店は散髪屋一軒を除いて全く見当たらず「地下通路に散髪屋がある」程度の光景が広がっていて拍子抜けすることだろう。
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それでもこの地下街には散髪屋、美容室、靴屋、テーラーといったオフィス街らしい店がわずか4店舗、今でも地味に営業し続けている。昭和初期から東京地下鉄道、帝都高速度交通営団、東京メトロと事業者が2度変わっている訳だが、テナント契約が解消されていない為に店が現存しているらしい。
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地下街の壁にも「この先の店舗は営業しております」と書かれたちゃんとした案内表示があるのだ。「カットショップSUGI」「地下鉄美容室」「テーラー宮崎」「佐々木革靴店」。
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改札口の近くには、地下街の店舗のための郵便受けまで置かれていて何気に面白い。
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ついでに駅のトイレも地下街が並ぶ反対側に置かれている。つまり改札外トイレということである。

店舗の看板も昔ながらで、天井の配管に針金で巻き付けられているというショボさがたまらない。

ちなみに現存する靴屋やテーラーも営業時間が非常にマイペースで、営業日だとしても夕方まで開いておらず平日にやってきてもびっしりシャッターが閉められていたりして容赦ない。
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神田はオフィス街である。間違って日曜日なんかに来てしまうと地下街の店はことごとく閉鎖されているので残念な光景を見る事になる。奥は閉鎖された6番出口へ続く地下道。「5番出口をご利用ください」と常に案内音声が流れている。
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閉まったシャッターにはテーラーと靴屋の長年のご近所づきあいの一端が垣間見れる張り紙が貼りつけられている。

6番出口が封鎖していなかった頃。かなり奥行きがあったことが窺える。そして戦前に作られた地下街なので天井が狭いったらありゃしない。余裕で手が届きそうだ。
昔の開削工法で作られた地下鉄銀座線が浅い場所を通っている名残りだ。

気まぐれに閉まりがちな靴屋やテーラーはともかく、散髪屋は遅くまで開いているようで、営業中の姿を見られる難易度が若干下がる。世相を反映しているのか、ここの散髪屋は千円カットを売りにしている。

今はビルの建設工事のために閉鎖されている6番出口。実はあまり知られていないが秋葉原電気街にも近い。東京メトロ・地下の近道シリーズ。

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