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藤沢辰巳町新地の連れ込み宿「仙成旅館」に泊まる

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先日訪れた藤沢駅北口の旧辰巳町にある赤線跡「藤沢新地」。その一角に何軒か連れ込み宿(転業旅館?)の建物が残っていたのだが、そのうち唯一営業を続けている「仙成旅館」に先日宿泊してきた。
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この土地には仙成旅館の他、隣接する駐車場用地にあった「菊水旅館」、そして見るからにカフェー建築の「旅館松竹」の三軒が並んでいた。東海道藤沢宿の飯盛旅籠の成れの果てだろうか、詳しくはよく分からない。


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日が暮れた頃に再び藤沢辰巳町へと至る路地にやってきた。飲食朋友会のバラック建築は夜ともなると闇に包まれたまま姿を留めている。こんな不気味な路地でも、奥のマンションの住民が駅や藤沢銀座商店街方面を行き来するために通り抜けるため、人通りが全くないわけではない。
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すっかり廃墟と化して人の消えたかつての盛り場、夜の飲食朋友会は猫の盛り場になっていた。廃墟の建物内に勝手に猫が繁殖しまくっているらしく、建物の隙間から猫が出入りして我が物顔で暮らしている。子猫や親猫も含めて10匹くらいが「集会」を開いていた。
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仙成旅館へは予約を取らず直接訪問した。まさか客が来るのかといった表情で出てきた宿の女将は60代といった所だろうか、本当に泊まるのかと言わんばかりの態度で宿泊の意思を示したら、しぶしぶ2階の突き当たりの部屋へ案内された。
「さっき予約のキャンセルが出たので、お部屋はすぐご案内出来ます」と言っておきながら、誰も泊まっている様子もなく、2階の廊下の電灯は消えたままになっている。他の客がキャンセルとは、体裁を保つための客への方便だろうか。
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シャワーならすぐご用意できますけど、お風呂は3~40分掛かります、と女将。どうやら風呂を入れるのも面倒らしい。出来ればシャワーを使ってくれという意味だ。女将の態度も宿の部屋も全く商売っ気はない。人の部屋に泊めさせてもらうような気分。
表には部屋代一人3000円と出ていたのに、実際は3500円取られた。500円余分に取った意味は、土日料金と言いたいのだろうか。せっかくなので風呂も入れてもらう事にした。
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客室に使っている2階は突き当たりの1部屋と、廊下左右に5部屋?が並んでいるのみ。トイレと洗面台は共用、各部屋の扉はふすまに粗末な錠前が付いただけのものとなっている。機能的にはドヤ並みの最低限のものだ。
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しかもふすまの錠前はちゃんと閉まる事もない。ちょっと力を込めればすぐに壊れてしまいそうな酷い錠前なのだ。もう笑うしかない。知恵を絞った挙句、錠前の輪っかにタオルを通して、辛うじてロックされる。西成のドヤなど酷い宿にいくつも泊まった経験があるが、「タオル錠」を経験したのは生まれて初めてだ。
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肝心の室内は、既に2人分の布団が敷かれている。かなり古い和室で、既に築50年は経過してそうな風格がある。
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他にも、周囲の壁には有り得ない程ハンガーが掛けられまくっている。使っていないだけなのだろうか、長期滞在するわけでもないのにこの大量のハンガーは無意味過ぎる。
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その割には浴衣やバスタオルがどこにもなく、押し入れを開けてみたらこんな事になってしまっていた。物置き状態の押し入れから適当に着れそうな浴衣を取り出す。
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さらに部屋のクーラーは壊れていて扇風機だけしか置かれていない。「扇風機だけでよろしいですよね?」と女将。幸いそれほど暑い夜ではなかったので困らなかったが。意味もなく置かれた日本人形と八角形の小窓が連れ込み宿の風情を垣間見せている。
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時代遅れの14型ブラウン管テレビと謎の木箱と人形、大量のうちわ、それに灰皿がなぜか二つ、室内設備のテキトーさが凄まじい。
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テレビの横には埃を被った真っ黒な布袋様が不敵な笑みを浮かべていて尚更気味が悪い。
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階下から「お風呂のご用意が出来ました」と女将の声が掛かり、1階奥の風呂場へ向かう。その途中で腰の極端に曲がった白髪の老女とすれ違った。先代の女将だろうか。親子なのかどうかは分からない。宿にはこの2人しかいない様子である。
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3~40分掛かりますと言われた風呂も、そこらの家のものと変わらない、マイコン制御の湯沸かし器で入れる普通の風呂だった。やっぱり風呂の準備が面倒臭いだけだったのだろうか。古いには変わりないが、比較的風呂場も清潔にされている。
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付近は色街で風俗店やスナックがいくつか残っている場所だが、既に役目を終えた店も多いせいか夜中まで騒がしいと言う事もなく、朝まで安眠出来た。日本人形が朝日の光を浴びてその姿を見せている。
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ちなみに客が泊まっていないのをいい事に他の部屋も見てみた。狭いめの一人部屋もある。無意味に週刊漫画雑誌も積まれていて、男の一人客を想定しているのだろうか、デリヘルの利用といった用途を想像してしまう。
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階段付近に建物完成時の記念に置かれた屋号の名が掲げられた額が大事そうに置かれていた。屋号は「仙成旅館」ではなく「千成」とある。往時の姿を偲ばせる数少ない物証。やはり転業旅館だったのだろうか。
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仙成旅館の建物横手から見た板葺きの外壁。相当建物自体も古い事だけは確かだ。
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我々が宿泊した突き当たりの一室。建物裏手の一面だけは赤いトタン葺きの外壁に変わっている。
周囲のマンション開発の猛烈さに負けて、あと5年か10年もすれば恐らく消えてしまいそうな転業旅館と赤線跡の存在。藤沢に残る数少ない昭和遺産を早めに体験しておいて損はないだろう。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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