東京を代表する巨大ドヤ街「山谷」の歩き方 (2010年)

台東区

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引き続き東京最強のDEEPゾーン「山谷」の街並みを見物していく事にしよう。城北労働福祉センターの建物を中心としてその周囲およそ半径500メートル付近に簡易宿泊所を始めとしたドヤ街が形成されている。

街を歩けば行き交う人々その殆どが白髪か頭のハゲた年寄りの爺さんばかりで面食らう事だろう。山谷が労働者の街だなんていうのは昔の話だ。今では高齢化してまともに働けなくなった労働者の成れの果てが生活保護で細々と暮らす「福祉の街」へと変貌した。

山谷エリアにある飲食店はその殆どがこうした大衆食堂形式の店で、早朝から酒が飲めるようになっている。逆に日曜昼間などにやってきてもまともに開いている店が少ない。完全に労働者の生活リズムに合った営業体制になっている。

やはり場所柄のせいだろうか、もつ料理を扱う店がやたら多いことが特徴。西成釜ヶ崎だってホルモン焼きの屋台がやけに多いがそれと同じ。臓物料理は貧困と差別と戦う人間が編み出した真性のソウルフードである。

しかしホルモン焼きの店も多いにはせよ、どう見ても潰れて営業していない店も多い。山谷の雰囲気は一言で言って「寂れまくり」である。西成釜ヶ崎のアーケード商店街のような喧騒を求めてやってきても期待外れに終わる事だろう。とにかく活気が無い。

ドヤ街名物激安自販機も山谷エリアには結構な確率で見かけられる。それでもせいぜい80円とか90円といったもので、西成釜ヶ崎で当たり前で見かける「50円」といったデフレ爆発自販機はレア。やっぱり物価が高いなこっちは。

一方でデフレ現象が際立つのが駐車場料金。南千住駅近くのコインパーキングでは昼間のフリータイムで1500円、夜間にいたってはわずか300円という場所まであった。これは23区だと足立区や江戸川区の端っこまで行かなければ見られない。駅に近いにも関わらずこの料金は安いなぁと思うのだが、付近の街並みや治安を勘案しているのだろう。

酒や薬に溺れてしまったのか知れぬがドヤ街には頭がすっ飛んだ人々も決して少なくない。電柱に思いっきり卑猥な落書きをすることなど朝飯前である。吉原がすぐ近くにあるのにお金もないのできっと遊べないんでしょうね。

街角でよく見かける立小便禁止の張り紙も「犬以外」と断り書きがされているのは珍しい。どうやら犬は立小便OKのようです。山谷は本当に寛容な下町ですよね。

労働者の皆さんが住むアパートのポストにも、怒った住人の言葉が綴られていて笑える。「チラシ入れるな ばっきんだぜ ふザケルナ」日本語が微妙にぎこちないですが怒りたい気持ちもよく分かる。場所柄デリヘルや人材派遣関係のビラが多そうです。

吉野通り沿いに建つマンモス交番こと日本堤交番の角から「いろは会商店街」へ続く道に入るとそこにも労働者やホームレスのオッサンが常にたむろしている怪しい一角がある。

傍らの「大衆食堂きぬ川」は山谷のオッサン達に愛される老舗の食堂。ここも早朝から開いているが昼間はやっていない。「孤独のグルメ」に掲載されていて有名な店だ。400円もあれば腹いっぱいになれる。

その隣の「野田屋酒店」。酒の自販機が5台連続で並んでいるがうち1台は破壊されたまま放置。何とも酷い有様。この酒屋の前は年がら年中酒盛り会場と化していてアル中でヤバイ目つきのオッサンが路上にあぐらを掻いて我々のような部外者に容赦なく恫喝の視線を送ってくる。まるで人間動物園。素人さんはここで記念写真を撮るのはやめておこうね。

野田屋酒店の前がいろは会商店街の入口、そこを横切る路地が城北労働福祉センター方面に続いている。山谷エリアでも玉姫公園と並んで危険な香りが漂う場所だ。派手な行動は慎んでおいた方が良い。

西成釜ヶ崎と同様、ここ山谷においても貧民救済を題目としたキリスト教団体が非常に多い。いろは会商店街入口に建つ特徴的な建物が「日本基督教団日本堤伝道所センター」。

建物玄関に「山谷労働者福祉会館」の看板が並んで取り付けられているのが見られる。地区で炊き出し等を行っている団体だ。

いつもこの場所にはホームレスのオッサンが所在無げに座り込んでいる。

さらにその近くにはカトリック系の「神の愛の宣教者会」山谷の家。本部はなぜか西新井病院の近くにある。やはり建物周辺にはホームレスが座り込んでいた。

建物の傍らにはマザー・テレサの写真とともに祈りの言葉や週間スケジュールなどが書かれた紙が貼りつけられた掲示板がある。ここも火曜と土曜に炊き出しを行っている模様。

山谷の街を一通り歩いてはみたものの、血気溢れる労働者の街といった風情はもはや何処にもない。やはり山谷は完全に「福祉の街」に様変わりした模様だ。

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