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ブランドタウンになりきれない京王グループのシマ・多摩市「聖蹟桜ヶ丘」を歩く

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首都圏の数ある私鉄沿線の中には東急や小田急のようにブランド化に成功し、憧れだけでその街に住んでしまう浮かれポンチ層を取り込むことに成功したところもあれば、西武や東武のように地の底に這いつくばるように地味ったらしく貧乏人や田舎者や埼玉県民を相手に堅実にやっているところもあるわけで落差が激しいんですが、そのどちらとも言えないビミョーな立ち位置にあるのが京王線という路線。

だがそんな京王線沿線でも一応ながらブランドタウン的なものを作ろうと試みたような郊外型ニュータウンというべき街がある。「聖蹟桜ヶ丘」という街だ。天皇行幸の地を意味する”聖蹟”とはえらく大層な字面だが、明治天皇が兎狩りに来ていた御狩場が近くにあったことに由来している。駅周辺は京王聖蹟桜ヶ丘ショッピングセンターを中心に京王電鉄および京王グループ各社の本社が集中する「京王グループのシマ」である。

新宿から京王線特急電車で約26分という微妙に遠い位置にある聖蹟桜ヶ丘駅。大正14(1925)年に当時の玉南電気鉄道の関戸駅として開業し、戦前の昭和12(1937)年から今の駅名に改称している。多摩市北部に所在し、駅のすぐ北側を多摩川が流れているが、駅の南側の高台には戦後に京王グループが整備した一大ニュータウン「桜ヶ丘住宅地」がある。

ジブリ信者が歓喜する「耳をすませば」のモデル・聖蹟桜ヶ丘

駅の発車メロディまでカントリーロードになってしまった「聖蹟桜ヶ丘」という街を有名にしているのは、やはりジブリ作品「耳をすませば」のモデルとなったことである。駅前にはわざわざ「聖地巡礼」にやってきた観光客向けに散策マップまで置かれている親切ぶり。そこには駅から桜ヶ丘住宅地への道のりが記されている。

郵便ポストと間違われて郵便物が投函されてしまうことが多いらしい「耳をすませば」ファン向けに置かれた作中の「地球屋」の店舗をモチーフに置かれた「青春のポスト」。既に1995年と20年以上も前の作品ですが、NHKの連ドラや大河ドラマ以上の影響力を街に及ぼす日本のアニメーション産業の力は世界的に見ても特殊なんでしょうね。

「耳すま」で有名になった桜ヶ丘住宅地も造成から既に半世紀以上が経っているし、急峻な高台の上にある住宅地であるが故に通勤不便だと若い世代には避けられ高齢化が著しく空き家だらけでヤバイという話をどこかで聞いたんですが、こちらの方も既に訪問済みですので次回にレポートしようと思う。

再開発したのにどこか垢抜けない京王クオリティ

聖蹟桜ヶ丘駅の周辺は90年代末期までに再開発が行われ、京王百貨店だのオーパだの大型マンションだのが集まるイカニモなニュータウン的駅前風景に変わっている。東急のたまプラーザや青葉台あたりのように鉄道会社が主体となった田園都市を計画していたのだろうが、どこかブランドタウンになりきれていない部分が垣間見える。

まず駅前広場にたむろしているのはご老人だらけというオチである。しかも背中に大きなリュックサックを背負ってこれから山登りに行くかのような格好をした爺さんが多い。やはりそれが京王クオリティなのだと思えば納得である。東急の真似をして京王がオシャレ路線を気取ってもせいぜい「高尾山にハイヒールで登りに行く似非山ガール」が関の山なのである。

駅改札向かいの京王ストアもなかなかの庶民派ぶりで、店の前で大量のダンボール箱を並べてお菓子の特売会を実施。それに群がる地元のオバチャン軍団の熱気が半端ない。もはや「綺麗な上野アメ横」状態と化している。

さすが京王グループのシマだけあって駅構内も含めて一大ショッピングセンターとして機能していることが分かるが、ガード下の小奇麗なモールは何やら金太郎飴的なチェーン店ばかりで感心しない。笹塚とかにもある「京王クラウン街」ってやつですが、笹塚のやつと大して見分けがつかんぞ。

で、ひと度駅前の京王グループのシマを抜けて周辺の街並みを見るとのっけから「フィリピンクラブ プッシーキャット」だったりするのが聖蹟桜ヶ丘の本性なのである。これがたまプラーザあたりだったら土着の上品ぶったババアが「何がプッシーザマスか!下品ザマス!」とお怒りになるのだろうが、そこまで上品な街ではないということだ。

何やら怪しい佇まいのスナックだったりコリアンパブっぽいのもあって意外に仕事帰りのサラリーマン親父向けの隠れ家的な息抜きどころがあるのが田園都市線沿線のお上品タウンとの違いだ。不純な要素を徹底的に排除するか成り行き任せかという意識の違いは同じベッドタウンでも相当違いが出る。

思えば聖蹟桜ヶ丘は多摩市で最も早く市街化した地域で、京王相模原線が多摩ニュータウンを通るようになるまではここが中心だったわけだから、そこが少しくらいはっちゃけた街並みになっても自然の道理というものだ。一方の京王相模原線沿線の永山とか多摩センターなんかは不純物が殆ど一切取り除かれておりまた別の意味の辛気臭さを感じる。

また京王線のガード下には似非レトロ風味な佇まいの「聖蹟桜ヶ丘ミートセンター」と名乗る呑み屋街もあり仕事帰りのサラリーマン達を出迎える庶民的な居酒屋が連なっている。串カツ田中とか、チェーン系ばっかりですけど。

まあ似非レトロなんで別にどうってことはないけど、この「精肉組合共同冷蔵庫」はちょっと笑えました。

桜ヶ丘中央ストアーという昭和の残滓

聖蹟桜ヶ丘駅前を東西に貫く「川崎街道」の大通り沿いの交差点角にそびえる「桜ヶ丘中央ストアー」もこれまた年季を感じさせる作りとなっている。名前の割には市場としての機能はほぼ果たしていない。オバ服屋とかクリーニング屋とかオリジン弁当だかが何軒か表に出てますけども…

建物中央に通り抜け可能なそそられる通路がぽっかり口を開けている。どうやらこの通路の先に「萩原靴店」という靴屋も一軒あるようだ。

そんな通路の奥に足を踏み入れたが靴屋は定休日でやってませんでした。店の看板はさっきのミートセンターのような似非とは違ってガチレトロでございました。

桜ヶ丘中央ストアーの裏手。散髪屋とパチンコ屋とその駐輪場のあたりに出る。 まっさらなニュータウンというわけでもなく新旧清濁入り混じっている、というのが聖蹟桜ヶ丘の街並みである。


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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