渋谷総鎮守「金王八幡宮」とその周辺 (1)

2012年に東急東横線が副都心線地下ホームと直結するのに合わせて、渋谷駅東口あたりでは大規模な再開発が進められており「渋谷ヒカリエ」とか言う商業ビルも出来る予定で、今後の繁華街化が顕著になってきた。所謂若者の街とか言われるのはセンター街や道玄坂のラブホ街などがある渋谷駅の西側であって、一転東側に来ると宮益坂あたりの雰囲気もどこか大人びている。今後も渋谷の街はより一層人種の二極分化が進む事だろう。

そんな渋谷駅東口から明治通りを並木橋方面に南下していくと、ステレオタイプ的な渋谷の姿とは違うもう一つの「大人な渋谷」の世界が広がっている。首都高を跨いだ南側は駅前の喧騒を間近に控えながらまるで雰囲気が違う訳だが…



日曜日の昼などにこの場所を訪れると、並木橋交差点近くの「ウインズ渋谷」から流れてくる大量の人混み、おおよそ若者の街と呼ばれる渋谷のイメージとは真逆な競馬オヤジ軍団の姿を見る事が出来よう。

買ったか負けたかは人それぞれだろうが、相変わらず鼠色のコートを着たいかにもなオヤジ軍団がゾンビの群れのようにも見えて何だかなーと言った所。何か大きなレースでもあったのか知らんが人通りが半端なく多い。警備員もあちこちに立っていて何だか物々しい雰囲気である。瞬間最大風速的には錦糸町や立川に負けていないよこの一瞬。
それでも若干若いお兄さんが混じっているあたりが渋谷という土地柄なのかも知れない。

そんな競馬オヤジの大名行列をどうにかやり過ごして、渋谷警察署がある側の明治通りから路地になだれ込む。そこには渋谷総鎮守である「金王八幡宮」がひっそり佇んでいる。

金王八幡宮は渋谷八幡とも呼ばれていて実は渋谷の地名発祥の地でもある。そんな由緒ある場所だが今では街の片隅の場末もいいところになってしまい、普段から何の目的もなく渋谷でたむろするような連中にはアウトオブ眼中といった場所である。

神社入口付近に案内が詳しく書かれている。寛治6(1092)年にこの土地に渋谷城が築かれたのが始まりで、金王八幡宮の名前も渋谷城の主である渋谷氏の祖の嫡子、渋谷金王丸常光から取られているとか。

神社の社伝によれば千年以上も前にここに城があったという話だが確かに現在でも神社境内だけが高台になっていて、地形的にも城の名残りを伺わせるものがある。

金王八幡宮が昔渋谷城だったという物証を物語るのが境内に置かれている渋谷城の「砦の石」である。そんな大昔のものが僅かに残っているというだけでも奇跡的だが…

ちなみに案内板の説明によると渋谷城は戦国時代の1524年に北条氏に焼き払われて渋谷氏も滅亡したそうだ。しかし後に徳川家の信仰を受けて三代徳川家光の乳母である春日局により立派な社殿が建設されたりして、ちゃっかり平成の世となる今でも残っている訳である。

現在付近の地名も渋谷区渋谷三丁目という味気ないものへと変わってしまったが、近所のビルの傍らに残された古い門柱がオブジェの如く残された所に昔の住所「渋谷區金王町69番地」と刻まれているのを見る事が出来る。

神社の周囲はオフィスビルばかりが乱立するうすら寒い風景となっているがピラミッドのような形の珍建築「三基商事東京支店」のビルが目立つ。新婚さんいらっしゃいのスポンサーでおなじみ健康食品のネットワークビジネス「ミキプルーン」の会社。

そしてミキプルーンの向かいには「ちんちん」という直球ストレートなネーミングの如何わしい店が。金王八幡宮の周囲には濃密な「大人の渋谷」な世界が広がっているようだ。

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