池袋のお隣・帝銀事件でおなじみ「椎名町」 (1)

池袋を始点として練馬や西東京、そして埼玉の所沢や飯能へ至る西武池袋線の各駅停車に乗ると、池袋の隣に椎名町という駅がある。

今回はこの椎名町駅周辺をうろうろ歩く事にした。駅名は椎名町だけど、付近の住所は豊島区長崎とか西池袋になる。のっけから下町臭くせせこましい駅前風景だが、最近西武鉄道が駅の建て替えに積極的で、この駅も真新しく変化していた。



椎名町の駅前には金剛院、それに長崎神社が隣り合っている。巣鴨ほどメジャーではないが爺さん婆さんの参拝客がちらほら見かけられる。

金剛院や長崎神社などがある路地の向こうに駅前商店街が広がっている訳だが、駅の建て替え工事で付近がなんだか騒がしい。そういえば椎名町という地名を聞いて確かめておきたい事が一つあった。

旧豊島郡長崎村、この土地の鎮守である長崎神社の境内に程近い場所にあったという帝国銀行椎名町支店で起きた「帝銀事件」の事だ。戦後事件史に挙げられる重大事件一つとしてよく知られた話だが、その割には現場となった街の話を聞かないので、心の隅に引っかかっていたのだ。

長崎神社境内に入ると七五三の参拝を済ませる家族連れの姿があるだけでいたって平和そのものな日常風景。

帝国銀行椎名町支店はこの長崎神社を挟んだ向かい辺りに在ったそうだが今では名残りすら見当たらない。

言葉巧みに銀行員に青酸カリ溶液を飲ませて12人が死亡し、その凄惨な現場は新聞の紙面に大々的に掲載された(→詳細)。しかし写真の掲載に猛抗議を受けて、その後マスコミは遺体写真を紙面に掲載する事を自粛しだしたそうだ。

帝国銀行に使われていた建物は「大きな蔵のある瓦葺きの民家」だったそうだが事件後に長崎神社のお祓いを済ませたのち、料亭やら不動産屋が入居していたそうだ。しかしそれも取り壊されて現在真新しいマンションに変わっている。

帝国銀行跡地と思われる場所に建つマンション付近、駅前らしく飲食店が多い。スナックや居酒屋もあれば質屋もある。そして何気にボロアパートも多いのが池袋生活圏らしい特徴である。

なにせ帝銀事件が起きたのもGHQ占領期の昭和23(1948)年の話だから、現場の面影を求める方に無理があるというもの。しかしスナックだらけだなあこの辺。
なお、事件の容疑者として捕まった平沢貞通という人物は長年冤罪の可能性が高いと言われ死刑確定しながらも刑の執行はされず、確定死刑囚としては一時期世界最長記録でギネス認定となった39年間(14142日間)の獄中生活後に息を引き取っている。

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