55階建てタワマン建設中!かつて地上げに荒らされた街…「新宿区富久町」の再開発地区を歩く

新宿区

巨大ターミナル・新宿の繁華街からも歩いて行ける目と鼻の先の場所に、激しい地上げ攻撃に晒された末に荒れ放題になった土地が残されていた。その中でもとりわけ有名なのが、都営新宿線新宿三丁目駅と曙橋駅のちょうど中間地点にある「新宿区富久町」。

新宿区 曙橋

バブル期から続いた地上げ係争地が30年ごしの泥沼の争いの末、一部ではゴーストタウンと揶揄されバブル経済によって破壊された街…その跡地に55階建ての超高層タワーマンションが今まさに建設中である。ここが現在どうなっているのか、様子を見に行った。場所は靖国通り沿い、外苑西通りがぶつかるT字路「富久町西交差点」の先。

新宿区 曙橋

「Tomihisa Cross」と名付けられたこのタワマンなんですが、55階建てというのは山手線の内側では最高層で、既に本体は55階部分まで出来上がっていて、野村・三井・積水・阪急だのデベロッパー合計4社が販売に携わっている。総販売戸数992戸は強気の価格設定にも関わらず新宿駅徒歩圏内という立地の良さだけあって完売御礼という状況。いやぁ、お金のある所にはあるもんですねぇ…

新宿区 曙橋

靖国通り側から北向きに坂道を下った裏手に伸びる医大通り沿いには付随の商業施設が現在建設中で、このへんも今年5月竣工、入居開始が9月下旬頃を予定しているとかで、3階建てのどでかい工事関係者用プレハブが工事の規模のでかさを窺わせる。今まさに開発のラストスパートといったテンションである。

新宿区 曙橋

ところでこのタワマンが建てられている、かつて「西富久地区」と呼ばれていたこのブロック、昭和のバブル期の時代から延々と続いてきた地上げの結果、狭小住宅が立ち並ぶ住宅地のそこかしこが歯抜け状態になって、バブル崩壊で地上げ屋の業者が倒産するなどして収束した頃には住民の6割が街を去るまでに寂れていった。

新宿区 曙橋

2010年頃から再開発工事が着手し、残っていた昔ながらの住宅も解体され、現在までタワーマンションの建設が続いている。建設中のタワマンを遠目に眺められる向かいの「富久さくら公園」では地元の爺さん婆さんが変わりゆく町並みを眺めながら日向ぼっこしている。

新宿区 曙橋

再開発で跡形も無くなった西富久地区に唯一残されたのは、富久町の守り神「富受稲荷大明神」…かつての地権者が共有して熾烈な地上げ攻撃から街を救ったお稲荷様という事で、この神社だけは大事に祀られている。元にあった場所とは微妙に違うようですが…

新宿区 曙橋

お稲荷さんだけに、神社には供え物の油揚げがずらり。30年ごしの地上げとの戦いに終止符が打たれ、ようやく街に平和が訪れようとしている、そんな感じの場所である。

新宿区 曙橋

そんな西富久地区から少し離れた、富久さくら公園の裏側の道に入ると、今度は地上げではなく計画道路による立ち退きが進められて歯抜け状態になった区画が現れる。環状4号線(外苑西通り)が富久町内をぶち抜いて若松河田駅付近まで延伸する手筈になっている。

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この環状4号線の計画予定地に建っている家屋はかなりの数が立ち退きを終えていて、タワマン完成を目処に2016年度の開通を予定しているそうで、二重に立ち退き問題に直面してきた街がここ富久町なのである。

新宿区 曙橋

二度ばかりも立ち退き問題の舞台になり虫食い状態になった土地の寒々しさたるや、尋常なものではない。これも新宿駅徒歩圏内という地の利がもたらした因縁なのであろうか。しかし55階建てのタワマンは街のどこに居てもよく見える。

新宿区 曙橋

残された家屋や空き地の多くも、既に空き家同然になっていたりで生活感も乏しく、コインパーキングとして再利用されている箇所もある。歪な変貌を遂げた富久町の行く末はいかなるものか、今後も目が離せない。


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