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実録・ワラビスタン!外国人だらけの町「蕨」に亡命クルド人が住んでいる件

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赤羽から京浜東北線で3駅隣。埼玉県の小さな貧民都市「蕨市」を幾度と無く訪れている我々取材班。共産党市政だったりネカフェに住民票が置けたり外国人労働者の流入が激しかったり色々と貧困層に優しい街づくりが展開されているのだが、ふとWikipediaにこんな事が書かれているのを目にした。

埼玉県蕨市や川口市を中心とした埼玉県南部には、1990年代にトルコ政府の迫害を恐れたクルド人たちが友人を頼って来日し、トルコ国籍のクルド人の難民約300~400人が集住している。蕨市周辺はワラビスタンとも呼ばれている。

warabistan.png
ワラビスタン(Republic of Warabistan)

(※国旗は当取材班のただの妄想を具現化したものです)

…そんな謎の独立国家が、あんな街にあったのか。知らなかった…クルドというのはトルコ東部やイラン、イラクの国境を跨いだ山岳地帯に住む「国を持たない民族」とされ、それぞれの国では母国語の会話を禁じられたり色々弾圧を受けているという。それが1990年代以降、日本の入管法改正を契機に、亡命目的で流れ着いた人々が集まったのが埼玉県蕨市周辺だというのだ。在日クルド人の9割がこの界隈に住んでいるという。

ワラビスタン、その言葉の響きに導かれるかのように、我々は再び京浜東北線に乗り蕨の街に足を踏み入れた。蕨と言えばこれまで中国人だらけの芝園団地やらミニ劇場やら住民票が置けるネカフェなどがある西口ばかり見てきた気がしたのだが、今回は同じ蕨でも東口だ。…で、そのクルド人ってどこにいるんですか。

蕨駅東口を出て、目の前にある最も開けていそうな商店街「東口一番街」に向かう。通勤時間帯の夕刻ともあってなかなか人通りが激しく人口の多さを実感できよう。蕨市は「日本一面積が狭い市」でもあると同時に「日本一人口密度が高い市」でもあるのだ。東口一番街は無難なチェーン店が多く、一見するとごく普通の商店街のように思えるのだが、クルド人はどこにいるんだ。

…いた。クルド人。しかも十数人単位で、なぜか商店街の入り口のセブンイレブンの真ん前でたむろして母国語でなんか駄弁っているようなのだが、顔つきはいかにもな中東系で一発でそれと分かる。だが思ってたよりみんな若いのである。そしてどことなく柄が悪そうな身なりをしている。彼らが蕨周辺で生活する在日クルド人二世だというのだ。

1990年の入管法改正からはや20年以上。安住の地を求めて異国日本に移り住んだクルド人の子孫が、既に蕨の街中で普通に見かけられるようになった。彼らは身なりも顔つきも中東系のそれ同然。しかし日本に生まれて日本で育って、日本の若者と同じようにコンビニにたむろしてチャリンコに跨り、携帯電話を弄ったりしている在日クルド人二世。日本語も一応分かるんでしょうかね。

しかしその一ヶ所を除けばごくごく普通の下町系商店街の風情を見せる蕨駅東口一番街。蕨市の人口約71300人のうち外国人人口は約2700人。つまり市民のうち26人に1人が外国人で、その比率も埼玉県内の自治体でもトップだ。そのうちクルド人は300~400人。

貧乏暮らしがデフォルトの外国人労働者世帯にとって、元から中小工場が多く外国人住民に対する免疫もついている土地柄で、しかも庶民的な店がわんさか立ち並ぶ京浜東北線沿線ほど住みやすい街はないという事か。日暮里に本店のある激安衣料「ヘイワ堂」(滋賀県のスーパーとは無関係)の店舗もありましてよ。

全国チェーンのイトーヨーカ堂も蕨にやってくると低価格路線のディスカウントストア「ザ・プライス」だったりする有様。わざわざ貧乏臭い地区だけをピックアップしてこの形態に衣替えしているヨーカ堂さん商売がうまいですね。殺到する買い物客。蕨駅前で最も繁盛しているスーパーである事は言うまでもない。

そんな低所得者層向けヨーカ堂の隣はワラビー歯科でした。さすが蕨だけあって至る所にワラビーがいるので探してみてくださいね。やさぐれた貧民都市でまったりほのぼの和める数少ないネタです。

んで、我々はそのまま東口一番街を突っ切って蕨のクルド人にゆかり深いという「蕨市民公園」にも立ち寄る事にした。公園の名前の通り普段は蕨市民の憩いの場になっていてランニングに励むオッサンオバサンや犬連れファミリーなどで賑わっております。今となってはごく普通の公園にしか見えないが、90年代、日本に殆ど着の身着のままでやってきたクルド人の中には、この蕨市民公園の中でホームレス同然で生活をしていた者も居たらしい。

彼らはトルコで迫害を受けて亡命を決意するのだが、ブローカーに4000ドル、5000ドルもの大金を払って第三国経由で観光ビザを使い日本にやってきたらしい。当然ながら観光ビザだとオーバーステイになる事は必至で、そのため入国管理局に捕まって強制送還される者もいる。

日本ではクルド人の難民申請は例外なく却下されてしまう。なぜなら日本はトルコとの関係が良好なので、クルド人の問題に取り組むのは積極的ではないからだ。一度でも難民認定してしまうと、トルコに少数民族への政治的迫害がある事を日本政府が認めた事になる訳で、両国の関係に水を差す事になる。

ではクルド人はどうやって日本で何十年も生活しているのかというと、結局不法滞在者のまま暮らしていて、入管施設にいつ入れられるか分からない「仮放免」状態でいるというのだ。中にはニュージーランドやカナダといったクルド人難民を受け入れている国に再移住する例もあるという。

ここ蕨市民公園では毎年3月の春分の日に在日クルド人が集まってクルドの「ネウロズ」(Newroz)と呼ばれる新年を祝う伝統行事が盛大に行われるというのだ。クルド人の伝統音楽やら踊りやら見られたりケバブ屋台が出たりするそうで、これは3月にまた来なければなりませんな…

参考記事

「ワラビスタン」第二の故郷 クルド人ら埼玉で共生:日本経済新聞  

クルド人とクルディスタン―拒絶される民族
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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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