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旧吉原遊郭「千束四丁目」路地裏にひっそり残る戦後の赤線カフェー建築

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日本最大級の遊郭として江戸時代から昭和33(1958)年の売防法施行まで340年間の歴史を歩んできた吉原遊郭だが、吉原大火、関東大震災、東京大空襲と幾度も災難に見舞われてきた故に残念ながらこの土地に伝統的な遊郭建築は一切残っていない。

台東区 三ノ輪

しかし、吉原には戦後に赤線地帯として勃興した時期に建設されたカフェー建築がいくつか残っている。その中で最も密集しているのが江戸町二丁目通り裏手の「伏見通り」に面する一帯。2016年1月現在、なんと5軒ものカフェー建築が現存している。

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伏見通りを南側からアプローチしていくとまず最初に右手に現れるのがこちらのファサードが波打っちゃってる白いアパート。建物名称は不明だが現役当時の屋号は「黒潮」だったと聞いております。

建物両側に玄関が付いていて一階と二階で一部屋ずつに分かれているんでしょうか。その間に公明党の竹谷とし子議員のポスターがベターっと貼られているのがアクセントです。最近東京の公明党ポスターはこの人ばかりですね。

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次いで程無く左手に現れますは「大和田荘」という同じく白いアパート。これも見るからにカフェー建築の特徴丸出しで狭い間口に玄関ドアが三つも取り付いている。現役当時の屋号は「親切」。どこがどう親切だったのかは知りませんけど、事情が分かるおじいちゃんに聞いてみてくださいね。

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真正面から大和田荘を見る。そう言えば一番左端の玄関に「貸室有」の張り紙がしてあったのだが、未だに現役賃貸物件として稼働中なのだから凄い。売防法施行の昭和33(1958)年以前のものだと築60年近いには違いない。お安く借りられますかね。

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さらに江戸町二丁目通りの抜け道があるT字路付近にそびえる茶色い外観の「マスミ荘」。これも転業アパートである。隣の「皮漉所」の看板が浅草エリアならではの地場産業な訳ですが、これはマスミ荘ではなく隣の建物ですね。

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茶色いペンキ一色に塗りたくられて多少見えづらくなってはいるが、二階部分のファサード上部にくっきり「マスミ」の屋号が見える。現役当時の屋号も同じく「マスミ」。

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ちなみにこの「マスミ」の元経営者は売防法施行後から現在まで土手通り沿い(いろは会商店街を出て矢吹丈の人形前の横断歩道を渡ったところ)で寿司屋「満す美寿司」を経営している。店内には遊郭部先生が既にランチタイムに行かれてますが、遊郭建築の大工に内装をこしらえてもらったらしくカウンターに豆タイルを使ってたり、さすが元カフェー経営者の寿司屋だけの事はある。

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Googleマップで「サークル甲冑娘」と出てくる謎のビルの正面から伸びる伏見通りと江戸町二丁目通りの間の狭い路地はかなりハイグレードな煤けっぷりで素晴らしい。とっくに廃業したまんまの「喫茶24リゲイン」。玄関横に置かれた立て看板から見ても、これはゲーム喫茶の類だったようです。24時間戦えないしそもそもネタが古い。

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そして「吉原のカフェー建築」で恐らく最も知名度が高いと思われるこちらの角にアールのついたモダンな建物。みんな大好き「岩渕荘」様の登場でございます。まあここも例に漏れず転業アパートの一つだ。現役当時の屋号は「プリンセス」。

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「岩渕荘」のこのアール部分、赤線跡探索マニアには鉄板過ぎてイカニモ裏観光スポットと化している感ありますけどね、人の住んでるアパートですんでね、建物の前でキャッキャウフフしながら記念撮影した後にinstagramなんぞに写真をアップロードしてないで黙って眺めて黙って帰ればいいんですよ。

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さらに岩渕荘の横っ面もこのナイスデザインっぷりが良い!赤線愛好家系サブカル女子が住みたいカフェー建築ナンバーワンといった所でしょうか。多分風呂なしトイレ共用だと思いますけどね。大丈夫ですか?

赤線跡を歩く―消えゆく夢の街を訪ねて (ちくま文庫)

ちなみに岩渕荘の向かいに転業アパートの「金よし」があったが、2006年に取り壊されており現在は駐車場に変わっている。今なお赤線愛好家のバイブルである木村聡氏の「赤線跡を歩く」に往時の姿を収めた写真が掲載されている。

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仲之町通りに一番近い側に最後の5軒目「モリヤ荘」がそびえている。現役当時の屋号は「モリヤ」。日本人の「モリヤ」さんから取ったのか外国人の「モーリヤ」さんから取ったのか由来は今ひとつ分かりませんけども。

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「モリヤ荘」の特徴と言えば、この窓枠の格子に赤い郵便ポストが各世帯分括りつけられている点である。ここも岩渕荘同様に部屋以外は全て共用部分になった「昭和30年代のオールドファッションスタイル」(by 駒込・江戸駒旅館)なアパートメントなのでしょう。

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あともう一軒吉原のカフェー建築で有名な「ハート形の建物」云々言われる物件は、この伏見通り沿いではなく角町通りと京町二丁目通りの間の路地から裏手に入ったところにそびえている。よく見るとこの建物最大の特徴である壁の凹凸の意匠、「ハート型」と断定できる形でもなく「ハート型みたいな」と形容した方が近い。ピンク色なので余計そう思うのかも知れないけど。

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他にも吉原にはまだまだ戦後の色街の残り香が感じられる場所が沢山残っているが、これらの建物は築60年オーバーのものばかりで、正直いつ解体されてもおかしくない。赤線跡探しの続きは現地でどうぞ。

吉原・千束四丁目マップ


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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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