ギラギラとした赤坂の繁華街「一ツ木通り」を歩いていると急に視界に飛び込んでくる、妙に場違いな感じがしないでもない寺の山門。
周りの雑居ビルに負けじと高く掲げられた朱塗りの山門を表通りに出している「赤坂不動尊」。その奥へ導かれるままに入っていく。
そこは智劔山威徳寺という古い寺だった。開山400年を誇る、かなり歴史のある寺だが、その割にはこじんまりとした趣きである。記念碑が置かれているその向こうには急な登り坂が控えている。
その手前左側にはコインパーキングと、歌舞伎役者である市川猿之助プロデュースの居酒屋「うまや」。赤坂でこのビジュアルだからと言っても老舗の高級料亭ではない。
ここから境内地となっていて昼間は自由に抜けられる為、サラリーマンが抜け道代わりに往来する姿を見かける。時折参拝者の老人がちらほらいる程度で非常に静かな場所だ。それにしてもかなりの急坂だ。
その急坂の途中にも廃ビルが取り壊されたまま放置されているのか知らないが荒れた街の姿を見る事ができる。コインパーキングと廃墟の多さは赤坂が夜の街として確実に衰退している事を示しているような気がしてならない。
反対側を見ると寺の墓地が段々畑のように広がっている。都会のど真ん中に置かれたエアポケットのように佇む。
坂を登り切ると右側に小さな朱塗りの拝殿がちょこんと置かれている。紀州徳川家御祈願所で由緒のある赤坂不動尊は400年の歴史を誇っているとは思えない、殊の外小さな寺だった。
赤坂不動尊の境内は非常に小さいが、山門から登るとかなりの高さがある。寺をお参りするにもちょっとしたハイキング状態。眼下には寺の風情とは180度違う俗っぽい歓楽街が広がりギャップが激しい。
裏手は屋根付きの駐車場になっているが、とんでもない所に百度石が置かれている。土地が狭いから仕方がないが、こんな場所でお百度参りするとさぞかしシュールな光景が見られるだろう。
駐車場の奥には裏の道に抜ける階段も置かれている。昼間は通りぬけに使うサラリーマンが忙しく往来している。一応境内地で個人の敷地のようだが黙認されている形だ。
ここで引き返して、再び一ツ木通りに戻る。
一ツ木通りをTBS方面に歩くともう一つ「浄土寺」という寺の入口が現れる。
こちらは何の変哲もない寺のようだが、本堂の左側に変な石像が建っているのが妙に気になる。
閻魔大王像。しかもメガネを掛けていると思しき変わったいでたちの閻魔様だ。きっと実在のモデルでもいたのだろうか。キムチと焼肉の臭いが充満した赤坂の街にも、すぐ裏側を見るとまだまだ日本らしい風景が残っている。