浅草寺裏花やしき隣、浅草観光一等地の蔦まみれ終末空間「浅草観音温泉」はもはや遺産級 

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古今東西、レトロ銭湯と呼ばれるものは数あれど、レトロといった言葉を付けるのも憚られる程にボロかったり終末感を漂わせている物件がある。それは単に「ボロい」といった否定的ニュアンスの言葉では断じてしまってはならない、もはや遺産級の価値を持つ事だってあるのに、不思議なくらい見過ごされている場所も存在する。

台東区 浅草

そういう銭湯が東京のど真ん中にもあったのにこれまで気が付かなかった。というか身近過ぎてその存在を見過ごしていたといった方が正しいかも知れない。やってきたのは都内屈指の観光タウンである浅草、それも観光客でごった返す浅草寺のすぐ裏手、花やしきのすぐ隣にある「浅草観音温泉」だ。

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一際古めかしさを感じる四階建てのコンクリート建造物、その屋上にはすっかり錆びついてしまい二度と灯りが点く事もなさそうなネオン看板がそびえている。「もはや戦後ではない」という言葉が経済白書に記され流行語で出た翌年の、昭和32(1957)年開業という、老舗の温泉施設だ。

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建物は一面蔦でびっしり覆われ、三階から上の部分は殆ど壁が見えていない程の状態である。特に休日には大勢の観光客が行き交う浅草の街だが、この温泉施設の前だけは忘れ去られたように人々は素通りしていく。

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四季色々に外観が変幻自在に変わる浅草観音温泉・春夏秋冬をお楽しみ頂けますでしょうか。蔦の葉が全開に生い茂る6月あたりはご覧の通りのモジャモジャっぷり。伊達に築57年じゃありません。関西人であれば往時の甲子園球場でも思い出すようなこの貫禄。今どきな東京人がこれを見ると「ラピュタみたい…」とかすぐジブリを持ち出す紋切型なコメントを発するのでしょうか。全くもってバルスである。

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秋になれば壁の蔦の葉はうっすら黄色味を含め物悲しさ漂う色合いに変わって参ります。大浴場と外とを隔てるでかいガラスブロックが敷き詰められた壁もまた、あちこち補修された跡が残るあたり、非常に昭和満開のセンスである。

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そして蔦が枯れる冬にならなければ全貌が現れない浅草観音温泉正面玄関の看板にはまたしても昭和センスを感じさせる「酒は大関」「男は黙ってサッポロビール」「唄と踊りで今日も楽しく 浅草観音温泉」と書かれた文言が何とも言えない哀愁を漂わせる。ところで、とっくに唄と踊りの音も聞こえなくなってしまったようですが…

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それもそのはず、浅草観音温泉は徐々に営業規模を縮小し、今では一階にある大浴場しか営業していないのだ。二階から上には「唄と踊り」こと大衆演劇や演芸などが楽しめたという大宴会場なんぞもあって、今で言う所の小岩の「ファミリー湯宴ランド」みたいなノリらしかったんですが、見ての通り長年の営業により建物もいいかげん老朽化しまくっている。

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建物の裏手に回るとホームレスさんが大量に私物を壁に積みまくっていて無法地帯という状態が見れたりするのも浅草ならではといった所でしょうか。よくこれで怒られんものだと感心するしかないが…

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さらに驚くべきは更衣室の窓が半開きになって、開いた部分から見えるロッカーの裏らしき面に張り紙がベタッと貼られていたのだ。

「外国人男性よりクレーム有り、この窓で女性客を喜ばせる営業活動をするな!!」とある。ちょっとどういう事なのか想像が付かないんですけど、これも浅草の場所柄ならではの問題なんでしょうか。「ヒゲのお前だよ」と一言付け加えられている所もなんとも…

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それだけではない。最近新たに貼り付けられた注意書きがこれ。「人力車 当店の説明は一切不要」。どうやら観光客向けの人力車を迷惑がっている模様。どんな説明をされてるのかだいたい想像が付きそうなのもアレなんですが、全方位攻撃態勢が整っているようで、何とも入りづらさを感じる訳なのです。

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既にかなり入りづらい感が漂っていて、これまで何となく入った事のなかった浅草観音温泉だが、一応れっきとした天然温泉だというし、一度チャレンジしてみようと思い、勇み足で正面玄関の前までやってきた。

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