95年の歴史に終止符!2015年3月末に閉鎖された「文京区設真砂市場」

文京区

東京には至る所に戦前からの歴史を持つ古い市場が生き残っているのだが、先日練馬区の江古田市場が無くなったばかりなのに、また大正時代からの歴史があった市場が無くなろうとしている。文京区にある「文京区設真砂市場」だ。

文京区 後楽園

「文京区にある大正時代からの市場」というのはにわかにはイメージしづらいのだが、どんなロケーションにあるのか、そして「文京区設」という事から考えると、所謂公設市場的な立ち位置のものだろうと思って実際に訪れると…都営三田線春日駅の真上にある、こちらの古めかしい団地に入っているらしい。

文京区 後楽園

「都営文京真砂アパート」と団地の壁にでかでかと書かれた特徴ある字体が目立っている。その外観の古さから逆に存在感が際立つのだが、案の定昭和42(1967)年築という高度経済成長期ど真ん中物件である。

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11階建ての団地の1階が真砂市場で、2階と3階が文京区民センター、4階に社会福祉協議会といった公共系テナントが入居している。5階から上が住居フロアに分かれていて、見るからに公共施設感満載なんですが…

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春日通りと白山通りが交差する春日町交差点の角にあって、文京シビックセンターの斜向かい、さらに真向かいには「都営本郷一丁目アパート」もあって、付近は団地や公共施設で占められている。すっかりガチセレブタウンと化した文京区でもこんな風景があるんですね。

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団地の一階部分に下駄履きで入居している市場が、目当ての「文京区設真砂市場」。住所は「文京区本郷四丁目」と、今時の感覚では「都心に住まれていて結構なご身分ですね」と思われてしまいそうな場所だが、旧町名は「本郷真砂町」であり、市場の名前もここから来ている。

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真砂市場の入口は、出来た当時は近代的に思われたであろうガラス張りの自動ドア。公共施設的な地味っぷりは案の定の事だが、殊の外買い物場所に困るド都心文京区では貴重な庶民の生活空間でもあったはずだ。文京区だからと言ってセレブな教育ママの独壇場ばかりではないのです。

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市場の入口に隣り合って、文京区民センターの玄関口もある。主に会議室利用がメインになっているらしくスケジュールがびっしり書き込まれている。

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真砂市場の中に足を踏み入れると、既にかなりの店舗が退去済みになっていて、実に寂しい佇まいに変わっていた。3月末の閉鎖が決まっていて、早々と店じまいを済ませてしまったようで、福祉系ショップと食料品店が2軒しか開いておらず、市場の通路は半分くらいの所で封鎖されていた。

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「パン・菓子・牛乳」の看板を掲げる食料品店「はとや」だけが現役。かなり場末感漂う空間だが、昼間やってくると結構沢山のお客さんが昼飯を買って帰る。場所柄学生風の客が多いのは文京区ならではだが、この界隈で気軽にパンや惣菜を買って帰れる店は貴重なのである。

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福祉系ショップの向かいの空き店舗は机とテーブルを並べた「井戸端会議」スペースに変わっていた。買ってきたカツ丼に黙々とかぶりつく地元のおじさんが一名。

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文京区設真砂市場の歴史とも言える戦後の営業許可書や写真、新聞記事の切り抜きなどが元八百屋のスペースの壁に申し訳程度に掲げられている。元々は大正7(1918)年に起きた米騒動による物価高騰対策で、食糧の安定供給を図るべく当時の東京市が市内14ヶ所に開設した公設市場が前身で、その最後の生き残りが真砂市場なのである。

文京区 後楽園

市場は大正9(1910)年に開設され、戦後の昭和22(1947)年に東京都から文京区に移管され、昭和42(1967)年に都営文京真砂アパートの建設により団地の一階に入居、現在に至っている。

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ちなみに2009年当時の古い写真があったので参考までに一枚。この頃は市場としての体裁がしっかりしていて、ここで肉から魚から食料品一式揃えられる状態だった。買い物客は上層階の団地住民が中心だったろうし、一貫して庶民の為の市場として生き続けてきたには違いない。

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そんな市場も95年の歴史に終止符を打つ事になった訳だが、当然ながらその理由に「建物の老朽化」というものがある。しかし文京区のサイトを見た限り、「解体」ではなく「改修工事」と書いてあるんですね。上層階の住民を全て立ち退かせるのはやはり人道上難しいものがあるんでしょうかね。

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市場や区民センターとは別の所にある「都営文京真砂アパート」の入口。現在もここの5階から11階にかなりの数の世帯が入居していて、その多くは例によって高齢者ばかりという、都心の限界集落とも言える団地の一つだ。


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