【多摩川と在日】川崎は誰もが知ってるのに、ここは誰も知らない「調布多摩川コリアタウン」という場所

調布市

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あと、住所で言うと調布市上石原三丁目にあたるが、大型マンション「コスモ・ザ・パークス調布多摩川」に隣接する敷地に「東亜トレーディング」という在日韓国人系企業があり「沈菜館」というキムチ工場と惣菜工場が併設されている。日本橋三越やららぽーと豊洲等にチェーン展開するシャレオツ系の韓国料理屋「韓美膳」もここの系列らしいです。

調布のキムチ屋さん安田商店でワイルドな韓国ランチを

多摩川土手沿いの道にまるで戦国時代か何かのように大量の幟を掲げる店舗がある。よくよく見るとキムチだの焼肉弁当だのスンドゥブチゲだの書かれていて、韓国料理を扱う店であることがひと目で分かる。こちらは「調布のキムチ屋さん 安田商店」である。

昭和35(1960)年創業、かれこれ半世紀以上当地で自家製キムチや肉類、各種韓国食材を扱っている調布多摩川コリアタウンの胃袋を支える老舗店である。多摩堤通り側から入れる専用駐車場もあって車で買い付けに来る客も多い。

そんな安田商店だが、キムチや韓国食材を買って帰るだけでなく店先に置かれたテーブルで韓国料理の数々を食って行くこともできるのである。店内ではなく「店先で」というロケーションがツボである。これはワイルドな昼飯になりそうだ。

というわけでビビンバ(600円)を頂くことにする。付け合わせの無料小キムチとコーン茶飲み放題のサービスもコスパ的に素晴らしい。新大久保じゃこうはいかないよね。寒い日にはスンドゥブチゲや参鶏湯も宜しいが、夏場には冷麺、ピビン麺、パッピンスも提供しているらしい。

朝鮮総連と韓国民団の事務所が両方ある

とりわけ在日コリアン物件が集中する調布市多摩川二丁目、上石原三丁目にまたがる一帯はかつての地名で「二本松」と呼ばれる地域となっている。ご丁寧にこのような地図(二本松エリアガイド)も掲示されており余所者にとっても非常に散策しやすくなっている。

こちら調布多摩川コリアタウンには日本にある二つの在日コリアン団体、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)と在日本大韓民国民団(韓国民団)の事務所が両方存在している。まずは上石原3丁目56-17にある朝鮮総連の「西東京南部朝鮮会館」へ。以前はもう少し渋い佇まいのザ・朝鮮総連的な3階建ての施設があったが、最近この通り建て直したようで、小綺麗な町内会の集会所のような建物になっている。

日本国内の総連施設も一昔前なら仰々しいハングル文字を並べて同胞がどうのこうのといった看板を掲げていたのだろうが、朝鮮総連や北朝鮮への風当たりの強さもあって最近は外部から見ても分からないような地味な佇まいをしているところが多い。ちなみに系列の有限会社アオバの名義で同じ建物内に月極のレンタルスペース「クローゼット・アオバ」を運営している。

続いて多摩川4丁目26-10にある韓国民団の「調布韓国会館」へ。ここは朝鮮総連の施設からは結構離れていて、京王多摩川駅そばの京王閣競輪場の西側、多摩川堤通りの創価学会調布文化会館近くの住宅街に建物を構えている。

玄関口の横に掲げられたプレートには「調布韓国会館」ではなく「調布韓僑会館」とある。華僑とはよく使う言葉だが「韓僑」はいささか聞き慣れない呼び方である。

プチ池上町状態な迷路の路地にバラック住宅が残るガチな街並み

実のところ調布多摩川コリアタウンには未だに区画整理の進まない住宅地がわずかながら残っている。航空写真で見れば分かるが家の向きがてんでんばらばらになっている箇所があり、あの川崎の池上町を彷彿とさせるものがある。で、安田商店の裏手の路地あたりを歩くとこのような平屋建てのバラックめいた木造住宅が未舗装の路地の奥にひっそりと建っている。

規模的にはほんの小さな箇所しか残っていない風景だが、未だに戦後の朝鮮部落と呼ばれていた時代の貧しさを感じさせる「長屋暮らし」の生活空間を生で見られるとは思いもしなかったのだ。狭い路地に物干し台を置いて、住民の洗濯物が肌が触れそうな距離に干されている光景。東京都内にもまだあったんですよ。

迷路のように狭くややこしい未舗装の路地、夜間や荒天時には自宅に帰るのも結構大変なのではなかろうか。こうした街並みは昭和の時代にはどこの街でも見られたかも知れない風景だが、いつの間にか消えてしまった。ところが調布多摩川コリアタウンは健在なのである。

川崎の池上町や京都の衣笠開キ町あたりのクオリティの高さを感じさせる路地裏風景がまさか調布に存在していた事に驚愕する。もはやジブリ作品のロケ地に選ばれてもおかしくないレベルである。いや、選ばれないか。

調布多摩川コリアタウンマップ


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