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江東区・夢の島公園と第五福竜丸展示館

江東区夢の島。戦後の高度経済成長期に「東京ゴミ戦争」と呼ばれる熾烈な都市化の裏側で巻き起こった出来事はとうの昔に忘れ去られ、かつてのゴミの島は鬱蒼と森が生い茂る公園へと姿を変えた。
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そんなゴミの島に隣接する第十五号埋立地に一隻の廃船が捨て去られていた。
太平洋戦争終結後にアメリカによって極秘裡に行われていたビキニ環礁の水爆実験で死の灰を被り乗組員が放射線障害で命を落とした痛ましい出来事。その歴史を物語る漁船「第五福竜丸」が展示された施設がこの夢の島公園の中にある。
「第五福竜丸展示館」である。


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あくまで船体を保存する目的で作られた建物なので、それ自体が船の形に近い。傍から見ると珍建築な感じだが扱っているテーマがヘビーなので、そんなにはしゃいでもいられない。
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第五福竜丸は焼津港を本拠地としていたマグロ漁船だ。戦後のGHQ統治時代から遠くない昭和29(1954)年3月1日にビキニ環礁付近で水爆実験後の「死の灰」を浴び、乗組員は被曝しながらも焼津港に帰還。
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しかし被曝から半年後に放射線障害で乗組員の一人が死去。第五福竜丸自体も後に放射能除染が行われてから改造され東京水産大学の練習船「はやぶさ丸」として余生を送るが、昭和42(1967)年に廃船となり、あらかた部品が抜き取られた後に夢の島に隣接する埋立地に廃棄されてしまった。
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展示館の建物脇には放射線障害によって引き起こされた血清肝炎により死去した乗組員・久保山愛吉氏の名が刻まれた石碑が建っている。
「原水爆の被害者はわたしを最後にしてほしい」との言葉は日本国内で強く反核運動を推し進めるきっかけになった。
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他にも「マグロ塚」の石碑もある。第五福竜丸はマグロ漁船で、被曝後帰還した時に水揚げされたマグロは「原爆マグロ」として市場に出回らずその場で処分され、築地市場の地中に埋められているという。しかしなぜか石碑だけがこの場所にある。築地市場の豊洲への移転話があるが、それまでの間に一時的に置かれているらしい。
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同じく建物脇に展示された第五福竜丸のエンジン部分。第五福竜丸の廃船後に貨物船「第三千代川丸」に搭載されていたのだが、翌年に熊野灘沖にて座礁、沈没する事故を起こし、28年後に海底から引き上げられてこの場所に展示されているものだ。
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第五福竜丸の残骸が発見された時から保存運動の熱が高まり、船は当時のままに改修され、以来現在に至るまで反核運動のシンボルとしてこの土地に保存展示されるに至る。
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第五福竜丸展示館は昭和51(1976)年に開館、当時のマグロ漁船だった頃の船体をそのまま再現しつつ、周囲には「死の灰」の現物やら乗組員の手記やら様々な展示物が置かれている。9時半から16時まで、月曜休館、入場無料。
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運命の巡りあわせなのか、2011年3月11日の東日本大震災によって引き起こされた東電福島第一原発の事故で放射能汚染の恐怖がこの東京にも現実味を得てしまっている。
渋谷駅井の頭線連絡通路に展示されている岡本太郎の描いた「明日の神話」はこの第五福竜丸がテーマになっているのだ。そこに福島第一原発の壊れた建物の絵がこっそり付け加えられたのは笑えないけどリアル過ぎるブラックジョーク。
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船体の現物は隣接する足場越しに上からもじっくり眺める事が出来る。終始重苦しい空気に支配されている。放射能の恐怖は遠い昔の話ではなく今我々が生きているこの東京にも確実に降り注いでいる。
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今ではその生涯を終えて、あまり人の目に留まる事もなかろう夢の島公園の奥地でひっそりとその存在を示している「第五福竜丸」。
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ほぼ同時期にオープンしたお台場の「船の科学館」に行く事なく、打ち棄てられていた土地の近くにぽつんと展示施設があるというのも、どこか意味深である。
反核運動、延いては反米運動のシンボルでもあるこの船が、右翼のドン笹川良一率いる日本財団の傘下が運営する施設に行くはずもない訳だが。
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今も物々しさを放つ「死の灰」の現物。戦争で原爆を落とされ戦後になってもこんな事故に遭っているのに、今になって巨大地震を食らって恐らくチェルノブイリを超えるであろう東電福島第一原発の事故で収束せずにいつまでも放射性物質をまき散らし続けている。全くこの国は放射能に祟られっぱなしだ。
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館内に置かれた大量の千羽鶴は日本各地の学校の名前が書かれていた。やはり長野の松代大本営や広島の平和記念公園などと同じ意味合いがあるのだ。
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そして千羽鶴に刻まれた学校名を見ると不自然な程に西日本、とりわけ関西の学校名が多いという共通点も、松代大本営や広島平和記念公園のものと恐ろしい程符合する。
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ニュートラルな平和教育とは明らかに違うイデオロギッシュな反米反核のプロ市民教師の匂いがする千羽鶴たち。
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千羽鶴に留まらず、平和と反核の思いを記した絵葉書の数々も非常に香ばしい。いたいけな子供が赤く染められている姿が目に浮かぶ。ラブ&ピースとか書かれているのを目にすると、もういたたまれなくって…
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反核がテーマなのになぜ「差別」の文言が出てくるのか意味不明。同和教育がお盛んな三重県の某聾学校の生徒が書いたものだ。「反核・反米・差別・人権」アカ教師にお題目のように刷り込まれているのだろうか。
くだらない右左のイデオロギーよりも、リアルに迫る放射能と日本の原子力発電所を取り巻く問題を本気で考えていかなければならない。長引く平和ボケに安穏としすぎたツケを我々の世代が払わされる羽目になるのだ。菅政権や東電、自民だ民主だ原発利権だ云々言えども、我々がツケを払わされる事、それだけは決まっている。そのうえ放射能が気になって街歩き出来なくなるのは、切ないぜ。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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