墨田区のDEEPゾーン、それは東武・京成曳舟駅を中心とする向島エリアである。
この界隈は都心からもさほど遠くない位置にあるにも関わらず長年開発の手が届かず昔ながらの下町の風景が残っている。昭和30年代から時間が止まっているような下町「京島」、皮革産業の集積地である「八広・東墨田」、旧赤線街玉の井で知られる「東向島」。どれも他に見られない味わい深さがある。
東武亀戸線小村井駅と曳舟駅の間くらいに位置する「キラキラ橘商店街」では七夕祭りの真っ最中だった。
キラキラ橘とは随分くだけたネーミングだなと笑えるのだが正式名称は「向島橘銀座商店街」。駅前からも離れているのでよそから来た人はなかなか場所を把握することはできない。
地味な存在ではあるものの総延長450メートルに及ぶ墨田区でも指折りの規模を誇る商店街である。
チェーン店は一部ダイエー系列のグルメシティがある以外はほとんどが個人商店。昭和の時代にはごく当たり前に存在していた街並みを見せるが、平成も21年目に入ると逆に珍しくなってしまい新鮮に映る。
もちろん下町エリアなのでベタな韓国食材の店も充実している。
「キムチ」を「朝鮮漬」と呼ぶのも、いかにも昭和なスタイルである。
朝鮮漬と呼ばれていた時代はそもそもキムチそのものが日本の食材としてポピュラーでなかった頃の話だ。
さすが下町、ニダーもあればシナーもアルヨ。これが山の手ならスイーツ(笑)が喜びそうな欧米かぶれしたカフェなんぞが加わるのだろうが、そうはいかないのが純な下町である墨田区の実力。
七夕祭りがあるので普段以上の賑わいを見せているキラキラ橘商店街。店の屋根の上から七夕飾りの七福神が身を乗り出している。これは相当手の込んだ作品だ。
こっちの七夕飾りはドラゴンボールの神龍である。もはや七夕飾りというよりも個人の趣味の領域じゃねえのかと突っ込みたくなるがご愛嬌である。地味な下町でしかないと思っていたのに意外に戦闘力は高いぞ…
下手に観光地化していないぶん、素の東京の下町風情が楽しめる都内でも数少ない生きた文化遺産的な商店街だ。場所は分かりにくいが、一度訪れてみることをお勧めする。


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