わかりやすい埼玉県案内(2019年改訂版)

ダサイタマと一言で片付けられない都市と田舎のハイブリッド文化

ダサイタマだの存在感がないだの人口732万人(2019年1月現在)を誇るにも関わらず常に他都県に見下されネタにされたり馬鹿にされてしまう、不遇の「埼玉県」。当の県民も「何もない」「寝に帰るだけ」と自虐を込めて住み続けているこの土地、つい一括りにされがちでもあるが、鉄道路線ごとの郊外都市文化と土着の田舎文化が複雑に入り混じり、土地ごとに全く違った特徴を備えている。そのへんの事情を少し掻い摘んで簡単に案内しようと思う。

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1・京浜東北線族(川口市・蕨市)

中国人に占拠された街「西川口」

競馬競艇オートレース大好き!パチンコ大好き!アルコール大好き!●●大好き! 埼玉県随一のDQNオヤジのパラダイス路線。それは荒川を跨いだ向かいのダメオヤジタウン「東京都北区赤羽」からの延長線上にあり、そちら側の下町文化を受け継いでいる。そして鋳物産業と工業で栄えた川口市も「キューポラのある街」の時代から、全国各地から仕事を求めてやってきた有象無象の労働者世帯や在日コリアン、その他マイノリティを受け入れてきた歴史がある。

中でもこれまで最も象徴的だったのが、街全体が違法ピンクタウン化した暗黒街「西川口」の存在だが、違法店舗は度重なる摘発で地下に潜ってしまい、空きテナントには続々と中国人が進出し新興チャイナタウン化。隣の蕨駅周辺も含めて都心に近い割に家賃がお安いことから外国人労働者が続々移住する移民の街としてすっかりその地位を固めてしまっている。

同じ埼玉の中の同じ鉄道沿線なのに文教都市浦和民にはことごとく蔑まれていて、赤羽から浦和までの京浜東北線沿線は教育熱心で意識の高い浦和民には湘南新宿ラインで華麗にスルーされる。川口も蕨も確かにガラが悪いが、お安く食える店や弁当屋なども多く生活上の不便は感じない。手頃に貧乏暮らししたいならお勧めの街だ。

【街一覧】 川口/西川口//東川口
【主な見どころ】NK流(壊滅)、本場の中華料理店各種、川口芝園団地(日本一のチャイナ団地)、クルド人集住地域、川口オートレース

2・東武伊勢崎線族(草加市・越谷市・春日部市)

埼玉で一番安い250円弁当が買えるスーパーマルサン。貧乏暮らしが捗る

浅草・押上・北千住といった東京東側のド下町を起点にハイクライムタウン足立区の竹ノ塚を抜けて東埼玉の郊外にだらだら続いていく路線。貧乏臭さ漂う街並みは京浜東北線沿線のDQNゾーンに共通するが、駅前はともかく国道沿いもカオスな場合が多い。人口比のパチンコ屋とラブホテルとスーパー銭湯の多さは他の追随を許さない。

街中の電柱にデリヘルのビラが大量に貼りつけられていたり、外国人が些細なトラブルで刃傷沙汰になったり、売防法違反で中国人のババアが捕まったり、ファミレスでヤクザが乱闘騒ぎを起こすなど香ばしい事件が多いのもこの地域の特徴。

家賃相場も京浜東北線沿線より安く、身分の不確かな人種を受け入れる安アパートだけは無尽蔵にある。そのため外国人労働者、食い扶持を失ったアウトロー、そしてアパートを借りるのが難しいオウム真理教信者なんかも多く住んでいる。治安のリスクはそれなりに用心して暮らすべき土地である。

【街一覧】谷塚/草加/獨協大学前/新田/蒲生/南越谷/越谷/北越谷/せんげん台/武里/一ノ割/春日部
【主な見どころ】草加せんべい、クレヨンしんちゃん、南越谷阿波踊り、オウム真理教施設(越谷市)、スーパーマルサン越谷花田店、アジア一でかい団地(松原団地、武里団地)、マウスコンピューター(一ノ割)

3・東埼玉街外れ族(八潮市・三郷市・吉川市)

巨大モールと巨大団地を取り囲む広大な田舎地帯「新三郷」

埼玉県最東端、この付近は東京都23区に隣接していながら有り得ない田舎っぷりを見せる。いわば最後のフロンティアであり、武蔵野線やつくばエクスプレス沿線は開発が進む一方で、暴力団抗争もあったり、工場地帯、産廃業者や中古車業者の敷地が目立つ。

23区一のDQNタウン足立区の延長線上にある八潮市にはオウム真理教信者が工場倉庫内に移住していたり、中古車販売業を営むパキスタン人が集住するなど、独特の発展を見せているエリアだ。土地の値段も死ぬほど安い。

一方で武蔵野線沿いは越谷レイクタウン、新三郷駅前「ららシティ」と次々ショッピングモールを核とした新しい街が開発されまくっていて、以前は競馬新聞片手に耳に赤鉛筆を挟んだギャンブル親父だらけだった車内の様子が一変。武蔵野線の車内リア充率の上昇に貢献している。しかし一歩街を外れると絶望的なくらいに田舎臭さが残っている、ここは首都圏に残された最後のフロンティアなのである。

【街一覧】八潮/三郷/新三郷/吉川美南/吉川/越谷レイクタウン
【主な見どころ】オウム真理教(八潮市)、ヤシオスタン(パキスタン人集住地域)、みさと団地、新三郷ららシティ、なまず料理(吉川市)

4・埼京線族(戸田市・さいたま市旧浦和市西部・旧与野市)

田んぼとプールとロッテの工場しかなかったタワマン乱立地帯「武蔵浦和」

当初は大宮でどん詰まりだった東北・上越新幹線の上野延伸の際、沿線住民の熾烈な反対運動の結果生まれた副産物的路線「埼京線」。その沿線にはベッドタウン埼玉都民がねぐらにする街がずらりと並ぶ。その住民の殆どが通勤に東京まで出る人々で、地元への愛着ゼロ。ついでに日常の用事も東京で済ませてしまうので、どの街もまともな商店街らしい商店街すらなく沿線風景は非常につまらない。

とかく無個性的と言われる“埼玉都民”のモデル地域。埼京線沿線に住んでいると退屈な生活だから男どもは痴漢に走るのだろうか分からないが、少し異様な路線である。しかも終電がやたら早い、運転間隔は長いのに電車は10両編成しかないのでやたらと混む、と悪いことづくめ。だが、そんな埼京線でしか行けない街である「戸田市」は都心への近さと地価の安さ、競艇場などによる財政力の高さからサラリーマン世帯には非常に人気の高い街になっている。

しかし基本的に工業地帯か元農村でしかなかった土地でもあり、武蔵浦和のタワマンに引っ越して「文教都市」面している小金持ち教育ママの勘違いぶりも目に余る。埼京線と並行する新大宮バイパス沿いの風景の酷さを見れば理解ができようというもの。ちなみに埼京線利用者の女性の8割が痴漢被害者と言われている。半端ねぇ…年頃の娘を持つ親、この沿線に住むことのリスクをどうお思いだろうか。

【街一覧】戸田公園/戸田/北戸田/武蔵浦和/中浦和/南与野/与野本町/北与野
【主な見どころ】戸田競艇場、美女木のフィリピーナ、田島団地と創価学会、武蔵浦和のタワマン、ロッテ浦和工場、沼影市民プール(通称・沼プー)、埼玉大学、ロヂャース浦和店、埼京線高架沿いの空き地

5・浦和原理主義者(さいたま市旧浦和市中心部)

レッズ or お受験、それが埼玉の文教都市浦和スタイル

合併して同じさいたま市になっても相変わらず仲が悪い大宮と浦和だが、とりわけ旧浦和市民の文教都市としてプライド、さらに県庁所在地としてのプライドもあってやたらと浦和住みである事を誇りに思っている。ここは県内屈指の名門進学校が一堂に会する「文教都市」。東大を目指すエリートの卵とその家族が県内最高の教育環境を求めて浦和駅周辺に移り住む。常盤、仲町、高砂、岸町…こうした地名のついたマンションは下手な東京都内よりも高かったりする。

ちなみにこうした浦和原理主義者は浦和の中心部のみにブランド意識を持つ傾向にあり、その他の地域は全くもってアウトオブ眼中(死語)、タワマンが乱立する武蔵浦和やレッズサポが多く住んでいる、埼玉スタジアムの最寄り駅・浦和美園などは一切見下している。

また隣接する南浦和も県内各所から名門校目指して受験戦争に臨む学生が足繁く通う予備校や塾が異常に集まる「予備校銀座」でもあり、生涯ダサイタマのヤンキーで収まるわけにはいかないと尻に火のついたような表情の学生が武蔵野線に乗ってやってくるのだ。とにかく勉強勉強、また勉強。それが浦和原理主義者。あとサッカーも大好き。

【街一覧】浦和/南浦和/北浦和
【主な見どころ】偏差値70オーバーの進学校(県立浦高、市立浦高、浦和一女等)、浦和レッズとレッズサポ、彩果の宝石、うなぎ

6・大宮原理主義者(さいたま市旧大宮市域・旧岩槻市・上尾市・桶川市・蓮田市など)

埼玉で一番の大都会・大宮駅東口で演説中の枝野さん、ちわっす

埼玉県を代表する巨大ターミナル駅と大繁華街を抱えるアーバンシティ「大宮」。埼玉ナンバーワン都市のプライドとして県庁所在地の浦和と長年反目し合う犬猿の仲。それぞれ別のサッカーチームを作って街中オレンジ色に変えてしまっていてよそ者から見れば滑稽に見える。さしずめ浦和が埼玉のワシントンDCなら大宮は埼玉のニューヨーク。県内屈指の「特殊なお風呂屋さん」も宮町四丁目の北銀座にありますよ。

しかしそんな大宮にも自慢の氷川神社や大宮公園、鉄道博物館もあれば盆栽町など歴史・文化資産もそれなりにある。だが駅前の繁華街「ナンギン」の風紀の悪さを見ての通り、文教都市のクソ真面目ちゃんタウン・浦和とは正反対でひたすら庶民的でDQN仕様な街として我が道を行く大宮。やはりどう見ても水と油。

なお周辺都市に岩槻や上尾、蓮田などがあり、この辺はおおまかに大宮都市圏に入る。東京まで出てこないダサイタマのヤンキー軍団と、逆に東京から追われた都落ちアウトローがガチでタイマン張る街、それが大宮。やはりこの街には穏やかならぬものを感じずにはいられない。

一方、そんな大宮のやさぐれ具合に嫌気が差した人種に最近人気が高いのが、駅前にどでかいスーパーアリーナと大型モールを抱えた「さいたま新都心」である。コクーンシティにはダサイタマ感を払拭する意識高い系の店舗も勢揃い。さらにはヨドバシカメラまである。もういちいち都内まで出なくても良い…そんな安堵の声も聞こえてくる。同じ大宮でも古臭さ漂う大宮駅前と真新しいさいたま新都心、それぞれで人種が二極分化している。

【街一覧】大宮/さいたま新都心/土呂/東大宮/蓮田/宮原/上尾/西大宮/指扇/大宮公園/大和田/七里/岩槻
【主な見どころ】氷川神社&大宮公園、大宮競輪場、冨士大石寺顕正会、鉄道博物館、大宮アルディージャ、大宮北銀座&南銀座、さいたま新都心

7・東上線族(和光市・朝霞市・志木市・富士見市・ふじみ野市など)

オボちゃんと新元素ニホニウムでお馴染み理化学研究所もある和光市

池袋を起点に川越や東松山、越生、寄居までを結ぶ首都圏マイナー路線の一つ「東武東上線」。家賃もそれなりに安いし東京からもそれなりに近い、そんな理由で「妥協」で住みだす埼玉都民のベッドタウン。しかし東京直通とは言ってもそこも埼玉の植民地池袋なのでさっぱり垢抜けてないし車内にいる人種もどこかダウナー系が多い。それでも和光市駅周辺は副都心線開業効果で家賃がダダ上がりになっており、和光市民の一部には「ほぼ東京だし」「東京の24区目になりたい」などと主張し埼玉県からの離脱を目論む始末。

川越の手前まで微妙で聞き慣れない駅が続く東上線の車内には「債務の返済」の広告だらけ、パチンコ帰りの貧乏そうな夫婦か池袋帰りのヤンキーカップルの姿が必ずある。DQN率の高さは伊勢崎線に負けてません。特に上福岡駅周辺は不穏な気配。やたらと変な輩と外国人が多い。

しかし慶應義塾志木高等学校があり駅周辺が栄えている志木駅、ニュータウンの趣きが強く「TJライナー」の停車駅にもなっているふじみ野駅周辺は不動産人気が高い。最近は鶴瀬駅から送迎バスも出ている「ららぽーと富士見」が開業し、これまで日常生活の大半を池袋に依存していた沿線住民は「これで休日の買い物に池袋まで出なくて良くなった」と好評を博している模様。

【街一覧】和光市/朝霞/北朝霞/志木/柳瀬川/みずほ台/鶴瀬/ふじみ野/上福岡/新座
【主な見どころ】和光樹林公園周辺(元米軍基地)、陸上自衛隊朝霞駐屯地、キャンプドレイク跡地、モッコリ豚(ラーメン屋)、志木ニュータウン、ららぽーと富士見、鶴瀬駅前富士ビル

8・小江戸川越(笑)(川越市・鶴ヶ島市・坂戸市など)

官庁街はないけどゴルフ場と角栄商店街がある埼玉の霞ヶ関

埼玉県唯一と言っても過言ではないドメジャー観光地「小江戸川越」を抱える川越市。歴史の息づく街だけに住民のプライドも蔵造りの町並みに負けないくらい頑丈。浦和ほどでもないけど有名名門校だってある。

ひときわ存在感のないダウナー電車・東上線沿線でも川越だけは別格扱いで、他の東上線沿線の街に住んでいても「川越に住んでます」とつい言ってしまいそうになる事請け合い。もっとも埼玉県に住んでいても「東京の近くに住んでます」と言っちゃう奴の方が多いだろうが。

そんな川越に本社を置く埼玉ローカルスーパー「ヤオコー」も首都圏のスーパーマーケット戦争を掻い潜り好調ぶりを見せている。なにせヤオコーは惣菜が旨い。激安路線を行くロヂャースやマルサンなどとは一線を画するアッパー志向で、いまや東京都内にも10店舗進出。毎年さいたまスーパーアリーナを貸し切り豪華芸能人を呼んで盛大に開かれる恒例の社内行事「ヤオコー大運動会」は、秩父夜祭、埼玉政財界人チャリティ歌謡祭と並ぶ“埼玉三大奇祭”の一つに数えられる。

さらに川越を外れた郊外にある坂戸市には「ぎょうざの満洲」の本社工場もある。首都圏はおろか関西にまで進出中の中華料理チェーン店の餃子は全て坂戸の入西(にっさい)ニュータウンにある工場で作られているのだ。

【街一覧】川越/本川越(川越市)/新河岸/南大塚/南古谷/霞ヶ関/鶴ヶ島/若葉/坂戸/北坂戸
【主な見どころ】蔵造りの町並み、川越唐人揃い、びん沼の陶器手榴弾、聖天宮(坂戸市)、ぎょうざの満洲本社坂戸工場

9・西武線族(所沢市・狭山市・入間市・飯能市)

航空発祥の地だけど空港はありません!所沢航空記念公園

西武線でしか行けない埼玉県。航空発祥の地・所沢市を筆頭に、入間市、狭山市、飯能市といった田舎臭さ溢れる地域が連なる。一部で「至高の住宅地コピペ」が出回っている所沢なんか、特急レッドアロー号で新宿・池袋まで20~30分で行けることもあってベッドタウンとしてそれなりの地位もあるが、いかんせん道路状況が悪く、市内は年中渋滞が発生する。さいたま市周辺と比べて人口の伸びが悪いのが特徴だ。

所沢市民にとっては同じ県内の他の街について、新幹線がある大宮はまだしも、電車一本で行く事ができない浦和や越谷や川口辺りの事は何も知らない住民も多い。西武ライオンズや西武遊園地、航空公園や入間基地があったり狭山茶が有名だったりするが総じて地味。それとやたらどの駅前にも焼鳥屋が多いのは、昔から畜産が盛んだった事に由来するのだろうか。部落差別がらみでよく槍玉に挙がる「狭山事件」の犯人とされ、長期間服役していた被告も狭山の養豚業者に勤めていた。

この西武線沿線の街では浦和や大宮のようなサッカー熱もなく野球の西武ライオンズを応援しているという時点で同じ埼玉県でも文化の違いを感じる。もっとも廃藩置県のあった当初は埼玉県ではなく入間県だったのもあるし歴史的にそもそも違う土地な訳ですね。

そんな所沢に住んでいた時に埼玉を徹底的にこき下ろす漫画「翔んで埼玉」を描いたのが“パタリロ!”の魔夜峰央。まさか漫画を出版してから30年越しで映画化されるとは夢にも思わず、といったところか。なお、所沢市に隣接する東村山市、清瀬市といった一帯は、住所こそは東京都だが、実質的には所沢の属国である。三市の市境が入り交じる秋津駅で降りて街を見てみよう。ここはどう見ても埼玉にしか思えない。

【街一覧】所沢/東所沢/新所沢/西所沢/西武球場前/小手指/狭山ヶ丘/武蔵藤沢/稲荷山公園/入間市/入曽/狭山市/新狭山/仏子/元加治/飯能/東飯能
【主な見どころ】西武園ゆうえんち、航空記念公園、入間基地、ジョンソンタウン、狭山の茶畑、鳥居観音

10・秩父原人(秩父市・秩父郡)

みそポテトと並ぶ秩父原人の主食ホルモン焼

埼玉のチベット、隔離地域、雄大な自然に囲まれた「秩父」の街へ辿り着くには新宿・池袋から西武線で2時間近く延々揺られることになり東京通勤圏としても無理がある。それでもSLが走る秩父鉄道、春には羊山公園の芝桜、冬には秩父夜祭に観光客が殺到するし、ハイキングをはじめレジャーの定番スポット。まあそれなりに地位は築いている。

山に断絶された地理的要因もあって原住民は秩父弁という言語を話し、たまの贅沢には秩父原人のソウルフード・ホルモン焼。どうも東松山やきとり同様、この土地にも在日コリアンがもたらした食文化が息づいているらしい。

秩父市街地からも見える武甲山を眺めながら地酒のつまみに秩父おなめ(なめ味噌)を食らい、みそポテトをかっ喰らう生活。家族で矢尾百貨店に出掛けるのが昔も今も変わらぬトレンドである。

また武甲山のセメント産業など、石にこだわりを持つ民族でもあるので、人面石に取り憑かれた原住民のコレクション室である「秩父珍石館」という施設もある。奥秩父に足を伸ばすと廃村と化した「日窒鉱山」の社宅が立ち並ぶ一画もある。地場産業の秩父銘仙も壊滅状態だしセメント産業も下火になり、いよいよ過疎化が本格的になりつつある。

【街一覧】西武秩父/横瀬/芦ヶ久保/皆野/長瀞/三峰口/小鹿野町/大滝村(奥秩父)
【主な見どころ】秩父夜祭、羊山公園の芝桜、珍石館、秩父鉄道、三峯神社、日窒鉱山

11・秩父山地東側(東松山市・日高市・比企郡など)

埼玉のディズニーランドの異名を持つ「サイボクハム」

秩父山地の東側一帯、東武東上線や西武池袋線、もしくはJR川越線経由など、どうやって行こうとしても東京から片道1時間以上掛かるエリア。古代朝鮮高句麗の末裔が住むという“高麗郷”がある日高市には古代朝鮮の香り漂う高麗神社やサイボクハムがあり、毛呂山町には武者小路実篤が作り上げた“理想郷”「新しき村」が現存、そこから鳩山町にかけては古びたニュータウンが点在している。

東松山市には戦後に在日コリアンが生んだ土着ソウルフード「やきとり」を出す居酒屋が大量にある、香ばしいお土地柄。東武東上線の終着駅である秩父路の入口・寄居町には伝説の限界ニュータウン「磯村建設分譲地」が今も存在し、かつて片道90分の電車通勤を続けていた昭和のサラリーマンの途方もない我慢強さが伺える。

しかしどうにも解せないのが、人口700万オーバーの埼玉県屈指の医療機関であるはずの埼玉医科大学の本拠地が、なぜか毛呂山町という田舎に存在している事。もうちょっと街中に建てようとは思わなかったのだろうか。八高線の車窓の風景はまるで北海道の原野みたいだし、思えばとんでもない辺境の地である。

【街一覧】高麗/高麗川/毛呂/越生/武州長瀬/高坂/東松山/森林公園/武蔵嵐山/小川町/男衾/寄居/鳩山町/吉見町
【主な見どころ】高麗神社&聖天院、サイボクハム&大川興業、巾着田の曼珠沙華、新しき村、越生梅林、東松山やきとり、こども動物自然公園、磯村建設分譲地

12・利根川流域族(久喜市・加須市・羽生市・幸手市)

八戸マノン亡き今、日本最北の成人向劇場となった「ライブシアター栗橋」

埼玉県北東部、利根川流域に近いエリア。東京の地下鉄半蔵門線が久喜や南栗橋まで乗り入れしているので、軽くベッドタウン化してはいるが大部分が広大な農地が続く田舎地帯。文化的には茨城・栃木・群馬などの北関東寄りで、老人は言葉も微妙に訛っている。都内からだと1時間そこそこ掛かる土地だが、こんな場所からも都内に通う強者がいるらしい。

「らき☆すた」で成功した鷲宮神社が発端となってか、近年は全国的に“萌えおこし”に躍起になってオタク観光客を節操もなく呼び込んでいる街が増えたが、そんな鷲宮町も平成の大合併で久喜市の一部となった。一部の古参ネットユーザーにはよく知られる「凄い病院のホームページ」の総本山・愛生会病院も同じ久喜市にある。また桜の名所・権現堂堤が有名な幸手市と旧栗橋町に隣接する茨城県猿島郡五霞町は生活圏が完全に埼玉寄りになっていて、幸手市との越県合併の話が持ち上がっていたものの、実現せずに終わっている。その他、利根川の北側にあるのに埼玉県に属する旧北川辺町には隠れキリシタン伝説もある。

基本的に田舎過ぎてやることもないので、市名とたまたま同じという理由だけで勝手にスケートの羽生結弦選手をわざわざ韓国・平昌まで飛んで応援しに行った羽生市のような暇な街もあるし、どこもかしこも平和な田舎町なんでしょうが、日本一暑い街としてPRしていたものの、観測所の場所がおかしいとツッコミが入り「ズル林」呼ばわりされていた群馬県館林市にも近く、夏の暑さは異常なものとなる。

【街一覧】久喜/鷲宮/東鷲宮/加須/羽生/幸手/栗橋/栗橋
【主な見どころ】鷲宮“らき☆すた”神社、加須のうどん屋、さいたま水族館(海がないのに)、むさしの村、ライブシアター栗橋

13・グンタマ族(熊谷市・深谷市・行田市・鴻巣市など)

熊谷の日本一暑いホルモン焼屋、水よし本店。クーラーはありません

大宮から群馬に至る高崎線に沿って続く街も同様にベッドタウン化している場所もあるが、行田や熊谷まで行ってしまうと別の文化圏だ。特に埼玉県第二の都市である熊谷と埼玉県名発祥の地がある行田のプライドは高い。さいたま市が漢字表記の“埼玉市”になれなかったのは行田市埼玉(さきたま)地区の住民が名称の使用を許さなかったからだと言われている。

このエリアの特徴と言えばとにかくクソ暑いという事に限る。日本一暑い街として知られる熊谷市で一番繁盛している食い物屋は、昼間から営業してはノンクーラーでホルモンを七輪で焼きまくる「水よし本店」。夏場の40度超えの酷暑日でもお構いなしである。一方、籠原あたりに行くと氷菓「ガリガリ君」が全国的な知名度を誇る赤城乳業の本社もあり、食い物の温度差だけはやたらと激しい。

秩父鉄道行田市駅前には昭和の趣きそのまんまで寂れまくりの商店街もあれば、園子温の映画に使われたサイケな佇まいのドライブイン「鉄剣タロー」や関東屈指の「さきたま古墳群」もある。さらに渋沢栄一の故郷の集落「血洗島」がある、ネギで有名な深谷市やその向こうの本庄市まで行くと、殆ど生活圏的には群馬そのものである。

【街一覧】熊谷/籠原/深谷/岡部/本庄/神保原/行田市/鴻巣/北本/桶川
【主な見どころ】八木橋百貨店の温度計、アフリカケンネル、籠原自衛隊前の飲み屋街、血洗島(渋沢栄一生誕地)、本庄・上里町のブラジル人街、さきたま古墳群、鴻巣びっくりひな祭り、北本の解脱会施設

【番外編】主な埼玉ローカル物件の数々

生存証明
さいたまんぞう全曲集

【音楽】なぜか埼玉:さいたまんぞうという謎の歌手が唄う歌謡曲。昭和56(1981)年当時に放送されていた「タモリのオールナイトニッポン」で取り上げられてブレイク。ちなみにタモリは「ダサイタマ」という言葉を用いて埼玉をおちょくった張本人である。これも“ご当地ソング”という括りにはなっているが歌詞には具体的な埼玉の地名が出てこない。ちなみにさいたまんぞう氏も岡山県出身。

死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対! (プラケース仕様)
スネークマンショー「愛のホテル」

【文化】ホテルニュー越谷:昭和50年代のラジオ番組で活躍していた桑原茂一、小林克也、伊武雅刀の3人によるコントユニット「スネークマンショー」にあった「愛のホテル」という、架空のホテルCMをテーマにしたコント。越谷市に同名のホテルは存在しないが、いい加減古いにも程があるこのネタがきっかけで未だにホテルニュー越谷が実在のホテルであると勘違いしている埼玉県民が多いらしい。

このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉 (Konomanga ga Sugoi!COMICS)
埼玉県民の根底にある田舎コンプレックスをいたずらにくすぐる「翔んで埼玉」

【漫画】翔んで埼玉:元々は昭和57(1982)年から少女漫画雑誌「花とゆめ」に3度連載された漫画で、新潟出身の漫画家・魔夜峰央が当時の出版社の勧めで引っ越してきた所沢市で執筆した作品となる。虐げられる埼玉県民の姿を風刺した元祖「埼玉ディス漫画」でもあったが、作者が横浜に転居したため、3話のみで連載を中断。その後30年以上経ってからマツコの番組に取り上げられ、なぜか再ブレイク。映画化までしてしまうというオチ。いくら地元を面白可笑しくディスられてもその事を喜んでいるのが埼玉県民、という構図がよく分かる事例である。

一時期やたら流行った「さいたまFLASH」の一例

【サブカル】さいたまFLASH:2001年~2003年にかけて2ちゃん界隈でブレイクしたFLASH動画ブームの中でもアスキーアート「さいたま」が登場するFLASH動画の総称。さいたま市が政令指定都市化した事とタイミングが被った事も相まって様々なFLASH職人がよってたかってさいたまをおもちゃにした。さらに「さいたま」を連呼するだけのBGMも粗製乱造されブームはヒートアップする。同時期には埼玉県久喜市の「愛生会病院」のホームページがヤバイと2ちゃんでお祭り騒ぎになり、まとめFLASHまで作る職人も現れた。この頃から埼玉とサブカルの親和性が高かった事を窺わせる現象だ。

しまむら創業の地、比企郡小川町にもある同社店舗

【企業】しまむら:埼玉が世界に誇る企業、それが衣料品チェーンストア「ファッションセンターしまむら」。日本では都心より田舎の郊外に積極的進出を遂げ、田舎の風景にはコメリと並んでお馴染みの存在となってしまった。昭和28(1953)年に埼玉県比企郡小川町に「島村呉服店」として開業したのが始まり。ユニクロよりも飾らない気取らない、ダサいようで実用的、実に埼玉らしい企業。

埼玉農民のソウルフード冷汁うどん、川島町では“すったて”と呼ぶ

【郷土料理】冷や汁(ひやしる):埼玉と宮崎と山形にそれぞれ同じ名称の郷土料理があるが、それぞれ別物。埼玉の冷や汁はざるうどんのつけ汁として使われるもの。大まかな調理法として、胡麻を摺ったすり鉢に味噌や薬味を混ぜて作る。あとは上記写真の通りに盛り付ければOKだ。昔も今も埼玉の田舎農家のソウルフードである。加須うどん店「子亀」で出される冷や汁うどんが発祥と言われているが、川島町で「すったて」と呼ばれている他、埼玉県北部一円に冷や汁うどんを出す店舗がある。

コバトンかわいいよコバトン

【マスコット】コバトン:埼玉県の鳥「シラコバト」をモチーフに作られた県のマスコットキャラ。2004年開催「彩の国まごころ国体」のマスコットキャラとして使われたものが出世したのだ。埼玉県では「ゆる玉応援団」と称して街おこしの一環で県内各地に所謂「ゆるキャラ」を大増殖中。微妙なキャラと微妙な県民性がマッチしてなんともゆるゆるカオスな雰囲気を作り出している。なお、浦和の埼玉県庁内にはコバトン推し全開の「ワールドピッツェリア コバトンカフェ」もあり、店内でコバトングッズが多数販売されている。

「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦 in 加須」のステージで熱唱中のにゃんたぶぅ

【ご当地ユニット】にゃんたぶぅ:埼玉県内を中心にステージイベントなどの活動をしている「歌のお兄さんお姉さん」ユニット。声優の並木のり子をリーダーに据えた三人組。大人はみんな東京にばかり目が向いて地元の事に注目してくれないので、いたいけな子供を洗脳良い子のみんなに埼玉の魅力をアピールすべく歌と踊りで楽しませてくれるよ!そのわりにはメンバー3人中、埼玉出身者は1人しかいない。(現在は埼玉に限らず全国で活動されているそうです…)

一年に一度しか販売されない埼玉県限定一日乗車券(西武鉄道Ver.)

【鉄道】埼玉県民の日記念一日フリー乗車券:毎年11月14日の「埼玉県民の日」だけ県内の鉄道駅で特別に販売される私鉄の一日乗車券。埼玉県内の私鉄各社の鉄道駅全てが一日乗り放題になるという内容で、東武・西武・秩父鉄道・埼玉高速鉄道・埼玉新都市交通(ニューシャトル)などで一斉に販売されているのだが、当の県民ですらそんな一日乗車券の存在を全く知らない事が多い。それどころか千葉県にある東京ディズニーリゾートに遊びに行くのが定番となっている。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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