駅前が狭苦しい事では都内トップクラスの印象を持つ埼京線十条駅前を引き続きぶらぶら歩いてみる。
今度は十条銀座とは真逆の改札口を出てきた。都内のJRの駅なんてみんな立派なもんだと思っていたら十条と隣の板橋に限ってはそうではない。東武東上線あたりのボロ駅と対抗出来るこの風格。旧赤羽線時代に遡ると駅の開業は明治期で、山手線が全通する前から存在していた古い駅なのだ。
そしてこちらも駅前徒歩0分とは思えない煤けた風景が広がっている。のっけから場末的空間である。埼京線で通勤している人々にはなぜこんなショボイ駅で全列車停車なのかとみんな不思議に思っているのだが、戦前の基準で作られた路線なんだからしょうがないよね。
駅前のラーメン屋が蔦まみれでカオスっぷりをいかんなく発揮しているのだ。確かに店への入りづらさでは「一番」であろう。客が入っているかどうかも怪しい変な個人商店ばかりが駅前のいわば一等地にある訳だ。
それどころか廃墟化したまま何年も放置プレイかまされている店舗も残っていたりしてますます訳が分からない。再開発計画があるからとかそんな理由もないんですけど。
改札口から駅ホームの真裏に沿って続く路地を抜けていこう。車も通れない細道になっていてそこに住宅やら焼鳥屋なんぞが軒を連ねている。すこぶる狭すぎる。実際にホームの上にいても建物に手が届きそうな距離感覚である。
路地を潜って行くとその先には演芸場通りとも言う「十条中央商店街」、さらに踏切を跨いで十条銀座に出られる。中央商店街も色々とネタがあるのでここはまた後で訪れる。
この踏切に立つと、中央商店街側に何やら戦後のドサクサ的な匂いの漂う一角が残っているのが見える。居酒屋などがちらほら並んでいるだけだが、やはりここも再開発といったものからは縁遠い土地だという事か。
気になってその路地に入ってみると、思った通りの風景だった。もう何十年も土地に根付いている古い雀荘にスナック、店の看板は昔のまま、市内局番は3桁のまま。
わずかばかりの長さだが味わい深い駅前の路地裏ゾーン、その先にはなんと「天国」がありました。こんな場所によもや天国があろうとは人生って分からないもんですね。
これがその、天国に続く扉ですか。いまどきこんなクッション入りのスナックの扉なんて希少価値高い気がするんですが。意外に入りづらさ満開の「天国」でございます。
天国の少し先にはこれまた個性の強そうな鍼灸院の看板が立てられている。鍼灸院と思ったら、ヨーガ・禅・瞑想療法などと書かれていて随分手広くやっている感じだけどかえって怪しさを倍増させている。
その鍼灸院の建物は…どうやらこのアパートの一室のようだ。大丈夫なのかこれ。
すぐ真裏が埼京線の線路でひっきりなしに電車が通る訳だが、ここで瞑想とかするんですか。ある意味人間としてタフになれそうな環境である。
そんな路地にある肉屋の軒先には犬猫さんがおもいっきり寛いていらっしゃいました。街並みがゆるけりゃ人間どころかワンコもニャンコもゆるいのが十条クオリティ。
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