西武本川越駅から市街地を北に進むと古い町並みが残る美観地区が現れる。よりにもよって街中人だらけになる川越まつりの日にやってきたわけだが、普段は物静かな郊外都市といった雰囲気である。街を歩けばそこらじゅうに山車が動き回っている。山車の出る祭は秩父や八王子など関東各所に存在するが、やはり川越まつりのものは規模や動員数の点で一歩抜きん出ている。
本川越駅から北へ徒歩5分程の場所に「大正ロマン通り」といういかにもなネーミングの通りが現れる。川越は小江戸と呼ばれる蔵造りの街だけではなく、明治・大正時代に建てられたモダン建築も数多く残っている。
しかしここが以前は古いアーケード街だったということは全く想像もできない。
もとは川越銀座商店街というごく普通の商店街だったものが、1995年に商店街を囲うアーケードが撤去され、電柱を取り払い地中化し、美観地区として再整備したものだ(→詳細)
蔵造りの家にはちょっとした饅頭屋があるなど、観光客の食べ歩きを想定した店も目立つ。まあいかにもな雰囲気だが…
いかに街の歴史があろうとも、よそに知られなければ何も始まらない訳で、自ら意識して観光地化に取り組んだ成果がそれなりに現れているのが川越の現状であると言える。
しかしこの店だけはちょっと雰囲気が違う。
大正ロマン通りが出来てから、地元の花屋の社長がこの地で人力車の店を始めたという「川越陣力屋」。見た感じは観光地によくありがちな店の趣きだが…
ここの名物が「不思議な犬」。
しかも究極の癒し犬、接待部長とまで肩書きの付いた看板犬がいる。
それに、この派手な看板は何だ…
よく見ると「不思議な犬」を抱いて記念撮影に応じるホンジャマカ石塚の姿が。
で、店の前ではこの「不思議な犬」のプリアちゃんを抱いて記念撮影に興じるお客さんの姿が次から次へと。
よく見たら中国語でも何か「幸せになれる犬」だの書かれていてテンションが尋常ではない。有り難そうにプリアちゃんを抱っこする客は老若男女問わず、凄まじくスピリチュアルでパワースポット(笑)なのだが一体どうしてこうなった?!
見た目には何の店なのか分からんのだが、店の奥が喫茶店になっている。
石焼ホタテカレーが名物だとか。
どうやら店内で食事を取った客に「不思議な犬」との記念撮影特典がついてくる模様。よくわからんがテレビや雑誌に紹介されまくりで、中国か台湾の観光案内本にまで掲載されているらしい。一緒に記念撮影すると願いが叶うだか幸せになるだか。
しかも店内にはプリアちゃんキーホルダーまでしっかり売られているという力の入れよう。うーん、スピリチュアル(笑)
もう一軒、大正ロマン通りで名物店…だったのが、この「みこもり煎餅」の店舗。
残念ながら数年前から全く営業していないという。
このみこもり煎餅では川越の裏名物とも言われた激辛せんべい「発狂くん」が売られていたのだが…わざわざ商標登録までしたというのに店じまいだなんて残念無念。
大正ロマン通りは北側でT字路に突き当たるが、その右側の通りにもびっしりと蔵造りの街が続いている。そのうちの一軒、星野清次郎商店という建物に入る。川越まつりの最中だけあって、店の表では焼き鳥焼きまくり状態なのだが、店内が出入り自由で見学できるようだ。
酒屋だという情報があったが、実際店内は骨董品屋の倉庫のような状態になっていて、店の奥の方にトロッコのレールが敷かれている。
トロッコの上には、何故か巨大な亀の剥製。
亀の剥製と言えば、昔から銭湯の壁によく掛かっていた記憶がある。
縁起物というのは分かるのだが、何故銭湯でばかりよく見かけるのか…
それはともかく、店内にトロッコが置かれている商家は京都など古い家屋の多い街でも見かける事が多い。京都などでも同じ事が言えるが、玄関の間口で税金を決めていた江戸時代に「うなぎの寝床」式の家が節税の為の知恵だったという名残りだ。
しかし骨董品屋ってたいがいこういう怪しいブツが置かれているよな。裸で抱き合うイヤラシイ木彫りの男女。愛の思い出はプライスレス。エロに賭ける情熱にお値段つけられない。