観光不毛県・埼玉の星!小江戸「川越」をぶらーり 

川越市

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今度は大正ロマン通りのみこもり煎餅の店舗の筋を入った突き当たりにある「蓮馨寺」へ。規模は小さいものの、天文十八(1549)年に開かれた古い寺で、毎年の川越まつりの時期には境内にレトロなお化け屋敷や見世物小屋が出る事で知られている。

蓮馨寺の正面の路地にもびっしりと屋台が立ち並んでいる。

ここでまたしても小腹が空いてきた。

焼きそばの臭いがプーンと漂ってくる。実にお祭りらしい。

それが普通の焼きそばではなく、どうやら川越周辺だけで出回っているローカル焼きそばの一つ「太麺焼きそば」だ。富士宮焼きそばのブレイクから久しく時代が過ぎたが、今ではあっちこっちでこの手の「ローカル焼きそば街おこし」をやっているよな。

で、思わず食らいついた。確かに太くて熱い…

しかし味は普通の焼きそばそのものだ。屋台だからこんなものかと妥協点。

なお、川越まつりの時期でなくとも蓮馨寺境内では太麺焼きそばの屋台は常に出ているようで(食べログにも載っている)、どうやら2009年放送の連ドラ「つばさ」と埼玉県全体がB級グルメで街おこしをしている(→詳細)ダブル効果で認知度が高まっているとか。

蓮馨寺の門前には年季の入った魚と小動物のペットショップ「川越水族館」。海の無い埼玉県民に水族館は貴重な存在だ。

その向かいにも、いかにも古い映画館の跡と思われる建物がそのまま残っている。地方都市の映画館って軒並み潰れまくっているよな。ちなみに川越にはスカラ座という映画館が一軒だけ現役で営業中だ。

川越まつり開催時の蓮馨寺境内は凄まじくカオス。いまどき日本では絶滅危惧種の昔ながらの手作り「お化け屋敷」と「見世物小屋」が仲良く並んでいる。

特に見たかったのが、現在日本では興行会社がたったの1つしか残っていないと言われる「見世物小屋」の屋台だ。

江戸時代から明治時代にかけて盛んに行われていた興行であるが、障害者を見世物にするとはけしからんなどとつまらぬ人権団体のクレームが厳しくなる中で社会の片隅に追いやられてしまった存在の一つだ。

生きたヘビを旨そうに食べる女、熱い蝋を飲み込み火を吹く女、色々けったいなもんが見れる屋台は大人600円。しかし人権団体からイチャモンが付けられるような、奇形や小人といったジャンルの見世物は一切ない。これも時代の流れか…

見世物小屋の「大寅興行社」は今でも全国各地を回っており、首都圏では7月の靖国神社(みたままつり)、8月の麻布十番納涼祭り、11月の新宿花園神社酉の市などで目にすることができる。

商売が成り立たないからあと数年で興行を終わりにする、と宣告する某◯ッキーマウスに扮した見世物小屋の進行役の言葉の後に出された「河童のミイラ」。江戸時代のミイラ造形師が他の動物の死骸を組み合わせて作ったとされるが、見世物小屋では子供の夢を壊すような種明かしはしないのがお約束。

他にも「人体の不思議展」に出てくるプラスティネーション標本を出して来られたが、それもあえて見世物小屋で出すネタじゃないだろうと。

昔はもっと凄い事をやっていたようだが、こういうアングラな業界から表現の規制はどんどん厳しくなっている。

隣のお化け屋敷も全部手作りとは思えない手の込みようである。表で客引きをするオバハンの口上が手馴れている。こちらも見世物小屋同様に絶滅危惧種。

現在、遊園地のアトラクションで見かけるものではない、興行としてのお化け屋敷も見世物小屋同様に江戸時代から始まった文化である。

ろくろ首とか幽霊とかいるんですが全部手作りなところが素晴らしい。一年に一度だけ現れるお化け屋敷の存在は、高度情報化社会となった今でこそアナログの極みであり、謎に満ちた神秘の世界。

この人形は水戸黄門に助さん格さんか。人形の一つ一つを見てもリアルさが際立つ。

こうしたお化け屋敷や見世物小屋は類まれなる職人の集まりであり、店の表の地獄絵図を描く絵師や人形師の存在、内装、ディスプレイ、興行スタッフ…これらの職人達が江戸時代から続くアナログな技術だけでいかに人を驚かせるか腕を磨いてきた。

だからこそ今の時代に貴重な存在なのだが、やっぱりこれだけで食っていくのは大変なようです。

さらし首なのに「人形さんにさわらないでネ!」とわざわざ注意書きが貼られているマヌケな現状が悲しくもあり。今どきの想像力が欠乏したアホガキならどーせ人形だし、などとイタズラしちゃうんだろう。乾いた時代だぜ。

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観光不毛県・埼玉の星!小江戸「川越」をぶらーり(2009年)


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