【西海岸で飲む、いつもの味】意識高い系が集う街!「清澄白河」にいま何が起きているのか

江東区
意識高い系が集う街「清澄白河」にいま何が起きているのか

これまでネットスラングだった「意識高い系」という言葉が独り歩きし始めて、最近ではNHKのドラマのタイトルになるなどして様々な場所で使われだしている。元々は「自己啓発(自分磨き)に熱心で、周りに自分を売り込む事だけに必死で、根拠もなく自信に溢れており、常に謎の上から目線。実際は全然大した事もしていない、中身のない人間」を揶揄する言葉だったものだ。勿論「意識高い系の人間」というのは、批判的かつ皮肉に満ちた言葉であり、そう言われた側は気分の良いものではないが、しかし巧い言葉だとも思う。

江東区 清澄白河

2015年2月、東京都江東区平野、清澄白河駅近くの住宅地に、アメリカ西海岸を拠点とするコーヒーチェーン店「ブルーボトルコーヒー」が華々しく日本第一号店をオープンさせた。開店当初、様々なネット記事に「コーヒー界のApple」という言葉が躍り、さらにツイッター上ではとあるIT系ジャーナリストの発言が「典型的すぎる意識高い系の文章」だと大きく注目を浴びた。

意識高い系

「良かったな」「嬉しいな」ではなく、わざわざ「おめでとう」と言うのが上から目線、「西海岸で飲む、いつもの味」と、さりげなく、そして自慢ったらしくアメリカ住みでコーヒー通ぶってみせている、この句読点が丁寧に多い、たった53文字の短い文章に「意識高い系」特有の鼻に付くイヤラシイ感じをありったけ詰め込んだ、これ以上ない名文である。

そしてブルーボトルコーヒーの開店で、これまで東京の中ではマイナーな位置にあった街「清澄白河」への注目度も俄然増している。

江東区 清澄白河

そんな清澄白河、これまで「何もない街」だと漠然と考えていただけなのであまり来た事が無かったが、ブルーボトルコーヒー開業前の段階から「アートとカフェの街」と呼ばれ俄に「意識高い系」の人が集まりだして妙な事になっているらしい。都営大江戸線に乗ってやってきましたよ。清澄白河へ。

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大江戸線自体バブル期に建設されただけあってどの駅の構内も金掛け過ぎて妙なデザインになっているのだが、ここ清澄白河駅でもホームの壁がギンギンにメタリックでアートな感じになっていたりする。こんな所から既に「意識高い系」である。侮れない。

江東区 清澄白河

大江戸線清澄白河駅ホームの「ホーム壁アートデザインの説明」プレートによると、造形作家・樋口正一郎氏が製作した「20世紀文明の化石」と題したもので、作品の素材は20世紀の高度経済成長期に江東区でも多く生産されてきた各種工業製品のスクラップを再利用したものだとある。

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ここ清澄白河は「東京都現代美術館」の最寄り駅でもある。木場公園の北側に隣接する区画に、やはりバブル期真っ只中に建設され1995年に開館した東京都現代美術館のごつい建物があり、それ以来「アートの街」という認識になっているらしい。目の前を走る三ツ目通り沿いにも、テラス席を備えた真新しいカフェが何軒か見られる。「アートとカフェの街」だそうだ。

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2000年に都営大江戸線清澄白河駅が開業、さらに2003年に半蔵門線が長らく水天宮前止まりだったものが押上まで延伸されて、半蔵門線清澄白河駅が開業、地下鉄二路線が使える便利な街になったのは、ここ10年ちょい以内の話である。門前仲町あたりとは違い駅前の発展度もまだまだ中途半端だ。しかし半蔵門線に乗れば大手町からたったの3駅、スカイツリーがある押上までも3駅である。話題性をもたらすのに充分の地の利がある訳だ。

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そんな清澄白河駅前に降り立つと目の前には清洲橋通りが。その道沿いには昭和8(1933)年築、築80年超という4階建てコンクリート住宅「清洲寮」の建物がデーンとそびえる。同潤会アパートを思わせるレトロモダンな造りだが、現役バリバリで賃貸物件になっていて、その一階部分は店舗と駐車場スペースである。

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この清洲寮の一階にまで、真新しい小洒落系ギャラリー&カフェが誕生している。店の看板がわざわざ英語で書いてあるあたりもイカニモ感漂うが「ギフトラボ・ガレージ」とある。以前来た時にはこんな店は無かったはず。やはり、去年12月に開業したばかりのようだ。

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同じく清洲橋通り沿いにある新築マンションの一階部分にも、以前来た時には無かったはずの、真新しく小洒落た佇まいのカフェレストランを発見。休日ともなれば満員御礼、店の前のテラス席にアッパー丸出しな犬連れ客が陣取っているのも、お決まりのパターンか。2012年2月に開業した「エルエスカフェ」だ。

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エルエスカフェの売りは北海道を中心に仕入れている有機栽培野菜を使ったカフェ飯である。ランチに千円叩くのも性には合わないが、意外にもしっかりと旨い。この店が出来るまでは、清澄白河住みの「意識高い系」新住民のお眼鏡に適った飲食店が特に駅前周辺には乏しかったようで、9割型女性客というイカニモな客層を見るあたり、概ね好評である。昼間から一杯480円のオーガニック・ワインを片手に優雅なひと時を楽しまれておられます。マダム達の会話がアメリカに行って買い物したとかそんな話ばっかりなのも笑えます。

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カフェレストランに留まらず店内で八百屋風に有機栽培野菜を販売している所もまた意識の高さを伺わせる。無論意識高い系住民にとって「無農薬・有機栽培・オーガニック」の食材は「人とは違う食生活をしている」優越感をくすぐらせる必須アイテムである。健康意識と自尊心を保つ為なら市価の3倍4倍でもどんどん買っていく。こちらのお店の野菜は意外にリーズナブルでしたが。

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東京都現代美術館、オーガニックカフェ飯に次ぐ清澄白河のアイデンティティが、天下の名園・東京都名勝第一号と謳われる「東京都立清澄庭園」の存在である。入園料150円を支払う為の行列が出来ている。観光地でもないのに庭園に行列かよ…

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元々は紀伊國屋文左衛門の屋敷があった場所だとか(諸説あるそうだが)言われたり、明治時代には三菱財閥の岩崎弥太郎が買い取り庭園としてこしらえたものだという由緒正しい日本庭園なんですが、カフェ飯食ってブルーボトルコーヒーを飲んで、現代美術館でアートを鑑賞したり、清澄庭園を散策するのが今どきの「意識高い系」新住民の休日の過ごし方になっているそうです。

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別に中国人観光客の団体とかじゃないんですが、池の畔には客がうじゃうじゃ居てイマイチ落ち着きません。皆様これが天下の名園・清澄庭園です。一度は行ってみましょう。

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清澄庭園と言えばもう一つ見所なのが庭園外周部の清澄通り沿いにある、関東大震災後の昭和3(1928)年に建設されたという「旧東京市営清澄庭園店舗向住宅」。築85年超を誇るモダンな外観の鉄筋コンクリート耐火建築は現在も個人所有の戸建て住宅として利用されている。

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で、ここも以前はしょぼくれた個人商店の残骸ばかりしか無かったはずなのに、今では小洒落た佇まいのカフェやギャラリー、雑貨店がいくつも進出してきている。アールデコ調の装飾が施された建物の外壁が真っ白に塗り直されているのがやたら目につく。

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その真向かいにも「有機栽培コーヒー¥350」の張り紙を掲げた意識の高そうなカフェが…それにしても、さっきから歩いている通行人も、ペアルックのカップルだったり、かなり甘ったるい事になっている。

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オーナーは元航空会社のCAだったという縁で店内に飛行機のオブジェや航空会社関連の展示物が多数置かれている「hane-cafe」あたりなんかも個性的で面白いかも知れませんね。

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店内BGMは空港のアナウンス放送がエンドレスで掛かっていたり、所謂「効率・利益重視」なトーキョー的な飲食店とは違って、店内を座席だらけにして窮屈になる事もなく、広々と店内スペースを確保していたり、夕方6時でさっさと店じまいする辺り、清澄白河的な特有のポリシーがあるのだろうか。

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機内食の食器に盛られて運ばれる店自慢の「ハネカフェプレート」千円也。なかなか本格的。カフェ飯に一食千円費やすのは意識高い系の間では極普通の事である。財布が気になるなら、「意識高くない系」の元からあるような江東区らしい下町中華料理屋なんぞも沢山あるので、そういう場所に行きましょう。

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