吉祥寺駅あたりで見かける西武バスの行先表示に「都民農園セコニック」という妙な名前の路線があるのを目にした事はあっても、それが一体何を意味するのかは知らないままでいた訳だ。
「都民農園」と「セコニック」の間の言語感覚のギャップも違和感バリバリなのだが、何となくロハスでオシャレなテレビ的ノリで作られた流行りの観光農園ですかね?というようなイメージを勝手に持ったまま放置プレイをかましていた。しかしその珍妙な名の行き先が書かれた路線バスの終着点はここ練馬区の最果て大泉学園町の先にあった。
関東大震災後に開発された碁盤目状の郊外型新興住宅地、大泉学園町を南北に貫く大泉学園通りを北上すると突然都県境を跨いで住所が埼玉県新座市になってしまう。この先に「都民農園セコニック」バス停があるのだ。
風致地区と名付けられた優良住宅地的な風景は都県境を越えると急激に下町臭くなる。のっけからキムチ屋があったり場末感が加速してきた。ちなみにここを左に折れると新座市の栄四丁目商店街となる。
一方の練馬区側はご立派に街路樹まで整備されていい雰囲気の住宅街っぽさを見せている。物理的には五十歩百歩の違いしかないのに、見た目には東京と埼玉の違いをまざまざと見せつけられる訳だ。
そして足元に目をやると歩道の路面には「彩の国まごころ国体」(2004年開催)のプレートが誇らしげに飾られている。新座市ではレスリング競技が行われたらしく埼玉県のマスコットキャラ・コバトンが2羽闘っている。この芋臭さが紛れもなく、ザ・埼玉といった所である。
新座市側に入っても練馬区側と同じで大泉学園通りは相変わらず商店街っぽい風情を保っている。だが住所が埼玉県というだけで確実に場末感は倍増している。23区の中かそうじゃないかというだけでもここまで違うものなのか。
鉄道駅から遠く離れたこんな場所にある商店街の存在なんて、何か秘密基地でも見つけたかのような気分になって変にワクワクしてしまう。新座市栄の商店街については色々と面白いので後述したいと思う。
とりわけ吉祥寺や武蔵関あたりの住民が気にしながらも正体がよく分からないままであろう「都民農園セコニック」バス停を降りた景色がこれだ。都民農園らしきものもセコニックらしきものも、よそ者の目にはよく分からない。目の前にはスーパーいなげやなどが入居する「大泉学園ショッピングセンター」があるのみだ。
そしてこれが長年頭の中に蓄積・充満した謎「都民農園セコニック」バス停の正体。ここで吉祥寺駅方面から来た路線バスは折り返していくが、大泉学園駅などから出ている別の路線バスがさらに先へと向かう。
何とも珍妙な名前のバス停だが「都民農園」というのはこのバス停のかなり手前、サミットストアのある辺りに「都民農園バス停」や「都民農園前交差点」というのがある。非常に紛らわしい。しかもそのバス停で降りてもやはり農園らしきものが見当たらない。
どうやらかつて東京都がレクリエーション農園を建設する計画があったらしいが、これも色々あって頓挫したらしい。構想が実現せずに地名だけ残った中途半端さは大学を誘致出来なかった大泉学園町の地名の由来ともどこか共通する。
この付近の街灯にセコニックのロゴが記されている。セコニックはオシャレな農園の名前でも何でもなく、写真用露出計を主力製品にした精密機器メーカーの社名なのだ。
大泉学園ショッピングセンターの敷地はセコニック旧東京工場の敷地の一部となっている。そのためショッピングセンターの建物にもセコニックの社名ロゴが掲げられていて、会社オフィスも隣接している。ちなみに会社の所在地はショッピングセンターの所在する新座市ではなく練馬区大泉学園町。
長ったらしく続いた大泉学園通りも新座総合技術高校の前でブツ切れとなり、埼玉県道108号東京朝霞線にT字に交差している。その北側には朝霞駐屯地の広大な敷地があり、東側には司法研修所やら税務大学校といった施設が集まっていて、親方日の丸関連の土地が非常に多い。
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