【現存せず】何気に朝鮮総連中央本部もある街「九段下」の駅前にあったコリアン雑居ビル

千代田区

再び九段下の駅前から。地下鉄東西線、半蔵門線、都営新宿線と3つの路線が交差している駅であり利用者は多いのだが、地上に上がるとさほど通行人で溢れかえっている訳でもない。

ただし、日本武道館で大きなライブがあったり、北の丸公園の桜が満開になったり、あとは靖国神社がみたままつりと8月15日の時に限っては、とんでもない大混雑ぶりを見る事になる。

とりわけ大きな商業施設があるわけでもないし若干オフィス街が広がっている程度の地味なエリアであることは否めない。しかしこんな九段下の地にも東京DEEP案内が大喜びするような香ばしい物件があったことをこれから伝えようと思う。

それは九段郵便局の入る団地の裏手から見える、小汚い雑居ビルの存在だ。

雑居ビルの屋上に置かれた貯水タンクと思しきボックスには「焼肉」と書かれた跡が見える。挙句の果てにその下にはキリスト教会であることを示す十字架が。焼肉とキリスト教会と来たら、これはもうアレしかない。まさか九段下にまでこんなものがあったとは。

九段の…いや件のビルへ近づくために路地へ入っていく。ほとんどオフィスビル街しかないと思っていた九段下駅前だが、この裏通りに限っては低層木造住宅に店が並ぶ横丁的な一画があり意外に思った。

その奥には「しょうけい館」(戦傷病者資料館)の建物がある。

「昭和館」や靖国の境内にある「遊就館」と同じく、日本における戦争の歴史に関わる展示施設である。

裏手に周ると、しょうけい館に隣接する場所に先ほどの怪しげな雑居ビルの前に辿り着く。しかし既にビルの周囲には鉄柵が置かれており中に入ることもできない状態だった。既に立ち退き後であり、ただの廃墟と化していたのである。居酒屋の看板と、キリスト教「愛宣教会」の看板が見える。

愛宣教会は1994年からこの場所を借りて布教活動を続けていたそうだが、2008年に建物の閉鎖とともに移転している。上野公園でのホームレス救済活動も行っていたそうだが、移転後の場所や活動についてはWEB上にも情報はなく一切不明だ。

雑居ビルのゴミ置き場。「分別セヨ コノ前ニ ゴミオクナ」注意書きがなぜかカタカナ書き。文章化するとなんだか女神転生の悪魔会話のようである。

次は雑居ビルの横手に回った。するとそこには既に廃業してしまった焼肉店・中華料理屋・「ハレルヤホーム」の店舗看板が残っていた。この雑居ビルだけが周囲の環境とはかけ離れてコリアタウン化していた事を物語っている。

「ハレルヤホーム」は不動産屋ではなく、愛宣教会が運営する高齢者向け福祉共同住宅だったようだが、その施設も立ち退いてしまっており現存していない。

本当に誰も気が付かないような場所に九段下のDEEP物件は存在した。すぐ真ん前には首都高の高架が走っており日当たりも悪い。ここで暮らしを営んでいた住民や愛宣教会のスタッフはどこへ行ったのだろう。

ちなみに現在、この雑居ビルは見事に取り壊されており、跡地はコインパーキングになっている。以前訪れてから1年もしないうちに、建物の姿自体が消えてしまった。実に儚い。

ついでに話すと、九段下と言えば朝鮮総連の中央本部が鎮座する、国交のない北朝鮮との事実上の「大使館」が置かれている街なのだ。しかもあの靖国神社の真裏にあるのだから、なにやら運命的な因縁を感じずにはいられない。例え国交がない国であっても、傍若無人のチンピラ国家であっても、トラブル防止のために四六時中警察官が見張っていらっしゃいます。平和に甘んじているだけで気づかなかっただけで、日本と北朝鮮は、実はとても近い。


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