【横浜市】東日本屈指の沖縄南米タウン・鶴見区「仲通商店街」を歩く(2009年)

横浜市鶴見区

鶴見線の醍醐味である京浜工業地帯沿いにあるオンボロ木造駅舎を巡る小さな旅をほどほどに満喫した後、我々はもう一つの目的である鶴見区の「沖縄タウン」訪問のために最寄り駅である弁天橋駅を降りた。

日本は大正時代の工業化によりそこで働く労働力を確保するために沖縄や朝鮮などから多くの人手を受け入れた。それが大阪では尼崎から大阪市沿岸部、堺にかけての阪神工業地帯にあたるわけだが、東京においては大田区から川崎市川崎区、横浜市鶴見区にかけての京浜工業地帯にあたる。

隣接する川崎市川崎区には「おおひん地区」という大規模なコリアタウンが存在する一方で、こちら鶴見区の臨海部では沖縄人が沢山暮らしている。特に沖縄タウン化が顕著なのが仲通商店街界隈と言われている。

それに加えて、1990年の入管法改正で日系ブラジル人子孫の日本国内での就労が自由化されるやいなや、同時にブラジル化現象も進むという特異な事情もある。鶴見区はさながら「沖縄南米タウン」の様相を呈している。

日が暮れた後の弁天橋駅は静けさに包まれていた。古い木造駅舎は開業当時のまま使われており、関西で言うところの南海汐見橋線を彷彿とさせる雰囲気だ。しかしこちらの方が通勤の足としてまともに使われているぶん、少し事情は異なる。

弁天橋駅の簡易改札口付近には手書きの鶴見区探索マップが置かれている。「鶴見を歩いて新発見」ということで目指す鶴見の沖縄タウン、仲通・潮田町界隈はここから徒歩10分程度の場所にある。ちなみに鶴見駅からも来れる距離ではあるがその場合は徒歩20分かかる。

時折改札を訪れるのはほとんどが周辺の工場で働くサラリーマンの皆さん。

駅の目の前にはJFEエンジニアリング株式会社鶴見事業所の入口がある。完全に工場従業員のための通勤路線であることがわかる。電車だけどまさにドアツードア通勤。

駅前に民家はほとんどなく、しなびた個人商店と大衆食堂が2軒ほどあるだけ。工場地帯を離れ、産業道路に跨る広い横断歩道を渡って汐入公園を過ぎると、ようやく住宅地が現れる。

鶴見沖縄タウンの中心的存在である仲通商店街に着いた頃にはすっかり夜になってしまった。見た感じ、商店街と言えるほど栄えているのか怪しい。その昔栄えていた、というほうが正しいようだ。

いかにも昭和的な「角のたばこ屋」も仲通商店街にあるマルミ屋商事の建物はかなりレトロでハイクオリティ。なぜたばこ屋は角地にあるのか。永遠の謎。

マルミ屋商事がさらに謎なのは店の横に据え付けられているタバコ自販機の存在だ。よく見ると各銘柄ごとに店主がいちいちカタカナで名前を書いている。横文字が苦手なおじいちゃんおばあちゃん世代への配慮だろうか。

横浜市鶴見区仲通、神奈川県で最も沖縄系住民が多く暮らしていると言われるエリアだ。京浜工業地帯とともに発展した下町の姿は、この国の産業構造の変化とともに色褪せて寂れている。午後7時を過ぎると商店街は見事にシャッター通りと化していた。そこでひときわ目立つ眩いネオンサインを輝かせるのはパチンコ屋一軒のみ。キングオブ貧民の娯楽。

この商店街でところどころ明かりが漏れるのは沖縄系大衆食堂だ。こういう何の変哲もない食堂で出される料理こそガチでうまい。夜は居酒屋を兼ねている所が多いようで、地元民しか使わなさそうな雰囲気の店も多い。

商店街沿いの酒屋の前には夕涼みがてら外でのんだくれるオヤジの姿があった。ここだけ見てると西成の路上と何も変わらなかったりする。ぎゅうぎゅう詰めの満員奴隷運搬車両に乗って横浜と東京を行き来する人種とは全く異なる時間が流れている。

沖縄系食堂の中には店頭で揚げたてのサータアンダギーを売る店もある。

仲通商店街の一角にある「沖鶴会館」。ここが鶴見区在住沖縄人が集う中心地みたいなものだ。1階には沖縄料理「おきなわ亭」と沖縄食材を売る「沖鶴マーケット」が入っている。

沖縄県人会会館も入居しているこのビルの中では時折沖縄系ライブイベントも行われておりかなり異国情緒漂う。

少し離れた場所には沖縄で売られている缶・ペットボトル飲料の数々もある。マンゴードリンク、ゴーヤー茶、さんぴん茶、米発酵ドリンク「ミキ」など。何気にインカコーラがあるのは鶴見に南米系移民が多いからだ。

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