上野のひと駅隣、御徒町駅を降りる。
上野と言えば「アメ横で買い物」というのがお決まりだが、巨大ターミナルの上野駅よりもむしろ御徒町駅で降りた方が賢明である。
上野のアメ横は上野駅前ではなく、御徒町駅前にあるからだ。駅から降りたら目の前には馴染みのあるアメ横の看板が…
山手線と京浜東北線の駅があるJR御徒町駅を降りると、大勢の買い物客とともに、どこからともなく商店からの客寄せの声が響いてくる。日本列島広しといえどもここまで年がら年中活気に満ちた商店街は他にないだろう。そんな場所だ。
この街にやってくると人混みの多さで体力を浪費してしまいがちになる。ついつい飲み物が欲しくなると目の前に「ミルクスタンド」があるわけだ。
ここ御徒町や秋葉原など、どうやら東京のごく一部にしか存在しないようで、見ての通りまさしく瓶詰めの牛乳を飲むためだけの店。置かれている飲み物に牛乳系以外のものは殆ど無い。
御徒町駅北口改札前にあるこのミルクスタンドはレトロ具合も素晴らしい。
好物の珈琲牛乳を一気飲みしていたら、目の前の工事中の柵に張られた「修悦体」の案内看板が目に入った。ガムテープフォント職人のガードマン・佐藤修悦氏によるアートである。ただの案内表示板ではない。
御徒町界隈はどこを見ても商店だらけで凄まじいのだがアメ横方面のガード下にまで商店街が続いている。どこから手をつけていいのか分からない。未だに東京DEEP案内がアメ横レポートを出来ていないのは密度が高すぎてまとめきれないからだ。
御徒町駅前に出るとひときわ目立つのがスーパーマーケット「吉池」の建物だ。見るからに老舗の建物だが、大正時代に創業していらい89年の歴史を誇る。御徒町以外には港区赤坂と、創業者の地元である新潟県に店舗があるのみという超マイナーな存在。
タイル張りがすこぶる特徴的な吉池のビルは昭和8(1933)年に完成、当初5階建てだったものを昭和39(1964)年には8階建てに増築している。道理で建物に年季が入っているわけだ。
グループ企業を見ると箱根に旅館があるなど想像以上に多角経営である。
創業者が新潟県人ということもあり、1階フロアにはやたら新潟の食材が置かれており色々試食も出来る。店舗内部は凄まじく時空が歪んだ昭和そのものの世界であり、2階から上に登ると客は殆ど高齢者しかいない。素敵。
吉池本館に隣接して鮮魚専門の「魚の館」もある。あくまで総合スーパーだがやたら鮮魚をプッシュしているのは新潟人が興した企業だからか、それとも生鮮食品の安物競争が激しいアメ横界隈の土地柄が侵食したものなのか。
吉池を過ぎた先のJR高架下にも生鮮食品店や居酒屋が軒を連ねており「アメ横」のノリが続く。そしてすぐ向こうは全くの別世界、電脳ヲタ街・秋葉原である。
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