毎日朝から晩まで夥しい人の波が押し寄せる大都会・渋谷駅前の目と鼻の先にあるはずなのに人っ子一人居ないというミステリアスな「宮下公園」の存在。
宮下公園とJRの高架を挟んだ向かいは渋谷の繁華街で、原宿から続く明治通りとの交差点にもなにやらハイソでオシャレな商業ビルが目立ち始めているものの、それでもさっぱり見向きもされない公園である。
大量の落書きに加えてこの公園が異様なのは、公園全体がホームレス居住地域と化している事だ。そのため公園の至る所に小屋掛けを防ぐための鉄網が仕掛けられている。
こういう事情もあって一般ピープルは決してこの公園を訪れようとはしない、ということだ。
もはや何を言っても気休めにすらならない渋谷区役所による注意書きの看板。禁止事項に書かれている事など誰も守っていない。誰に向けているのか知らぬが何故かご丁寧に韓国語と英語とフランス語の4ヶ国語対応だ。
宮下公園の試みとして行われている合法的グラフィティが遊具にまで施されているわけだが、もはやこれが遊具であるとも気づかなくなりそうだ。
場所柄だけにこれはこれでアリかなとも思うが、ここまで来ると完全に一般ピープルが近寄れる気配にない。殺伐すぎてワロタ。一体どこのお化け屋敷なんだよ。
公園内の物置は容赦なくタギングの洗礼を浴びてしまっている。所謂グラフィティ愛好家の連中には未だに聖地として名高い場所だ。そう簡単には事は収束しないだろう。もっとも器物損壊罪を屁とも思わない奴らはただのDQNでしかないわけだが。
落書きの山に囲まれるようにホームレスの小屋が置かれている。ある意味一等地に住めているだけ恵まれているような気がしなくもないが、ホームレスの社会にも力関係や序列というものがあるらしい。宮下公園のホームレスは言うまでも無く力関係が強い方だろう。
無法地帯とも言える宮下公園だが、その一方で公園全体を取り巻く大きな変化があった。公園を管理する渋谷区によって2006年に公園内にフットサルコートが整備されたのだ。
公園内に置かれた2面のフットサルコートは時間貸切制で1時間4000円から。それを布石として渋谷区では宮下公園のネーミングライツをナイキに売却、同時にナイキが公園改修を手掛ける事が決まり、公園が「ナイキ化」するという事態に。(→詳細)
仮にナイキが宮下公園を整備したとなった場合、既存のフットサルコートのリニューアルに加え、カフェやらなんやらが出来てしまいすっかりオシャレスポットと化す事は必至。
それに猛烈に反対しているのが「みんなの宮下公園をナイキ化計画から守る会」。
反対の理由は一企業による公園の私物化、ホームレス排除という人権問題もあるが、やはり一番大きな理由は伝統的に渋谷界隈におけるプロ市民のデモの集会場として使われてきた宮下公園が使えなくなるのは表現の自由を侵すものだ、といった主張だ。
そうなると公園や街は一体誰のものなのか、という議論になるわけだが、渋谷区では財源確保のためのネーミングライツ売却に熱を上げていて、区役所前の渋谷公会堂はサントリーによってすっかり「渋谷C.C.レモンホール」に変貌してしまったわけで、さらには表参道や恵比寿駅前など区内13ヶ所の公衆トイレまでも槍玉に上がっている。
街は誰のものなのか結論から言うと「金のある奴のもの」という道理になってしまうだろう。しょうがない、ここは日本一地価の高い東京のど真ん中なのだから。