【川崎市】川崎臨海部のガチなコリアタウン「おおひん地区」を歩く(2009年)

川崎市川崎区

再び川崎コリアタウン「おおひん地区」を訪ね歩いた。川崎区大島、桜本、浜町、池上町の一帯をまとめて「おおひん地区」と名づけたのは地元の在日コリアン系NPO法人「青丘社」の理事長を勤めていた李仁夏氏(故人)である。しかしあまり一般的にこの呼び名が広がっていないのは大阪西成の釜ヶ崎を「あいりん地区」と誰も呼ばず「カマ」と呼ぶようなもので、やはり川崎コリアタウンと呼んだ方がしっくりくる。

浅野財閥が築き上げた一大工業帝国である川崎市臨海部含めた「京浜工業地帯」には大阪と同じように大正時代から労働力確保のため当時日本の支配下にあった朝鮮などから大量の移民がやってきた。中には朝鮮で土地を奪われて日本に強制連行されたとの主張もあるが、当方としては一方の偏った意見には与しない。

現在も日本鋼管(現JFEスチール)を中心とした工業の町としてブルーカラー層が暮らす低層住宅地であるこの界隈を歩くと、中小企業向けに仕出し弁当を配送する業者がいたり、時折凄まじいトタンバラックの廃屋を見かけるなど、散歩していてなかなか飽きる事のない街並みだ。

桜本の路地にはこのような古びた労働者向けアパートばかりが並ぶ。そこにはちゃっかり某神道系教団の看板も掛かっていて香ばしい。こうしたガチな下町ほど新興宗教の坩堝と化すのが世の常である。

ほどなく、川崎コリアタウンの台所「桜本商店街」(Lロードさくらもと)へ辿り着く。やはり前回訪問時と同様、人通りも少なく微妙に活気に欠ける。川崎駅からバスで来なければ辿り着けない土地なので、しょうがない。

前回来たときはシャッターを閉めていた韓国系ショップ「(有)ソウル貿易商事」もこの日は営業中。玄関の猫は看板猫か。新大久保のコリアタウンもそうだが、韓国食品やキムチが売られているだけではなく韓流グッズやらDVDやら色々置かれていて何でも屋と化している事が多い。

その隣には開店休業状態の韓国屋台コーナー。随分お手ごろ価格であり下町庶民もこれなら気軽に買える。

韓国系の店も目立つ桜本商店街だが、それ以上に目立ったのが福祉系NPO法人の施設である。ただでさえ寂れきったブルーカラーの下町だが、工業が下火になったことで住民の流出が相次ぎ、街に残っているのは生活保護の高齢者ばかり。NPO法人が作る100円惣菜と250円ランチはとっても人に優しい福祉価格。

なぜか駄菓子屋に置いてあるようなおもちゃ類も一緒に置かれている。子供も老人もあつまれ!ってなノリなのだろうが一向に子供の姿を見かける事が無い。

シャッターが閉まったままになっているが、ここも「おおひん地区まちなかほっとライン」と銘打って社会福祉法人が経営するカフェのようである。潰れた喫茶店を再利用しているのだろうか。「このまちだいすき」と書かれた看板が何ともいえない哀愁を誘う。

桜本商店街の中には七福神ならぬ「さくらもと九福神」の銅像が置かれているそうで、商店街のシンボルになっているらしい。で、2人増えた分は誰と誰なんだよ。

しかし思いっきりマジックで眉間に「肉」と落書きされていた。これはキン肉マン世代の仕業か。

キン肉マン化した毘沙門天像の横にある歯医者も「川崎医療生活協同組合」の名が書かれている。医療生協と言えば共産党系か?と頭に浮かぶが、こういう場所では同じ低所得者票を奪い合う対立組織の公明党支持層と対立している話も耳にする。いずれにしてもややこしい地域だ。

商店街の脇には「さくらもと九福神」のイラストが描かれたポスターが。どう見ても幸せそうな空気がどこにも漂っていない臨海工業地帯の果ての下町。これも「せめて心は錦で」という思いか。

よくわからんが、レギュラーの七福神に加えて勝手に福の神の仲間入りをしている「上向き小僧」。これも「せめて気持ちは常に上向きに」という思いか。(当地にゆかりのある坂本九に因んでいるらしいです)

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