高級住宅街扱いされてしまった感のある高輪の町だが、人の目の付きにくい場所にこっそりとんでもないアングラ物件があるのが魅力でもある。丘陵地の上に立つ高輪の町から田町~品川駅方面に下る坂道の途中には知られざる景色が沢山隠されている。
まずは高輪警察署前交差点、高輪警察署の隣にある高野山東京別院を目指そう。
高野山というだけあって、世界遺産でもある弘法大師が開いた和歌山の高野山の文字通り東京別院になる寺である。寺町として栄える高輪の地では泉岳寺と並んで中核的存在を成す。
ところでその高野山東京別院の裏手に、ひっそりと下り階段が隠れるようにある。第一京浜方面で高輪二丁目交差点から伸びる桂坂の途中に現れるこの階段の下を降りると、先には住宅地が続いている訳だが…
階段のあと、さらに急峻な下り坂を降りきった場所に低層木造住宅が密集している奇妙な区画を見つける。車も入れないような路地裏にいつのまにか忍び込んでしまった。
路地の奥は年季の入った木造長屋が連なる。2階建てなのだが完全に谷底の空間にすっぽり収まっているため、建物全体に日が照りつける事はない。なぜこんな形で家が建っているのか不思議である。
表の道路を見ているだけでは決して巡り会えないであろう高輪のもう一つの顔がここにあった。
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航空地図を見ると高野山東京別院に隣接してへばりつくように存在する秘密基地のような住宅群。さらに敷地東側には東禅寺の敷地があり、寺と寺に挟まれる格好になっている。
一軒家だけではなく、ルミエール高輪というマンションも紛れていて完全な「村落」というわけではないようだ。
狭い窪地の中にひしめき合うように建つ住宅群。ここ高輪三丁目の窪地はかつて「洞村」とも呼ばれていた場所で、大昔にこの一帯に海岸線があった頃、海岸線が侵食されて出来た洞窟があったのが由来だと言われているそうだ。桂坂から東禅寺前へ下る坂も洞坂という名前が付いている。
先ほど降りてきた所の木造長屋群がちょうど窪地の底で突き当たりになっていて、後は急に上り坂の道になる。かなり不自然な地形だ。この細道は東禅寺の正門あたりまで続くが、そこまでは道幅が細すぎて一般車両の通行は出来ない。
この地形の上で想像するにもし大雨が降った場合この窪地の住宅はどうなるのだろうか、相当気になる。
窪地住宅群から品川駅方面に抜ける細道はやがて鬱蒼とした森に包まれる。両側から迫る森はいずれも寺の墓場の森だ。昼間ですら薄暗く気味の悪さを感じずにはいられない。
途中にも何軒か一軒家があるが、まるで軽井沢かどこかの別荘地のような佇まいで驚いてしまう。本当にここが23区内で、しかも港区高輪の一画なのか?!
辿ってきた道を振り返る。本当にこの先に住宅地があるのかよ、といった雰囲気だ。時折住人も通るが住めば都なんでしょうか。こう見えても品川駅徒歩10分圏内です。海側も山側も品川駅周辺のDEEPさは半端ないぞ。
ようやく東禅寺前の開けた住宅地に出てきたかと思いきやお地蔵様が4体仲良くお出迎えしてくれました。
ちなみに夕暮れ時ともなればこんなに真っ暗になってしまう。まさに東京アンダーグラウンドゾーン高輪三丁目。散歩道にはうってつけです。是非おすすめします。