団地遺産・公団阿佐ヶ谷住宅

いまや日本中に点在する「団地」であるが、日本における団地の歴史は戦後の1955(昭和30)年に設立された特殊法人「日本住宅公団」による大規模団地開発で本格的な隆盛を迎えた。その多くが高度経済成長期と言われる昭和40年代に建てられたものだが、中には昭和30年代に建設された「団地の原型」とも言える存在もある。
1958(昭和33)年竣工の公団阿佐ヶ谷住宅(杉並区成田東)もそんな住宅の一つである。
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当時は田畑しかなかった土地に全350世帯の大規模団地が造成されたのは今から50年以上も前のこと。公団住宅建築の初期中の初期とも言われる団地で、歴史的価値を重要視する団地マニアや一部住民の間では「聖地」のような存在となっているのだ。


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地下鉄丸ノ内線南阿佐ヶ谷駅から徒歩5分程度の閑静な住宅街に、すっかり古びてしまっているものの、今も開放的な団地が広がっている。
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阿佐ヶ谷住宅の敷地内にあるのは大部分が一見平屋建てに見えるが実は2階建てのテラスハウス式住宅。おおよそ現代日本的なコンクリートウサギ小屋には見られない建築であり、それは昭和におけるモダニズム建築家、故・前川國男氏が手がけたもの。
その場にいるとまるで日本の、それも東京のど真ん中に居る事すら忘れさせられるほど広々とした、アメリカナイズされた住宅空間だ。
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しかし完成してから半世紀以上も経過しており建物の老朽化が酷い為、350戸ある団地の既に4分の3が空き家になってしまっているという。
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団地内をうろうろしていても住人の姿は殆ど見かけない。所々草が伸び放題で荒れている箇所も確認できる。
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阿佐ヶ谷住宅では、地区全体で建て替え計画が上がっており、テラスハウス式住宅の多くは窓や玄関にベニヤ板が打ち付けられ痛々しい姿を見せている。
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しかしその建て替え計画の案で住民と公団の間で大揉めになっている。
それは「第一種低層住居専用地域」に指定されている阿佐ヶ谷住宅の敷地に6階建てマンションの建設は許さない、というもの。
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阿佐ヶ谷住宅周辺の民家のあちこちに抗議の意思を表す黄色いのぼりがはためいているのを見ることができる。
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そういえば阿佐ヶ谷界隈は駅前の一帯を除けばどこまで行っても純粋な住宅群しかなく、町工場というものが全く存在しないという東京23区内では非常に珍しい土地柄。
杉並区民というのは非常に住環境に厳しいし、住民運動の盛んな地域。だからこそ杉並でプロ市民が元気なのかも知れないですが(笑)
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もう既に使われなくなって骨組みしか残っていないブランコが残る公園も、雑草に覆われている。テラスハウスになっている住宅もよく観察するとあちこちリフォームが入っていて勝手に増築されまくったりと随分フリーダムな状況になっているのが見える。
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阿佐ヶ谷住宅の中央部には3階、もしくは4階建ての集合住宅が7棟建っている。
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団地になっていても周辺の敷地が広いため、それぞれのベランダからの風景も開放的であることには変わりはない。しかしこちらも同様に空き家が目立つ。
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阿佐ヶ谷住宅北側に広がるテラスハウスは完成時期が違うのだろうか、全く違うデザインになっている。やはりこちらも同様に空き家だらけ。
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団地内を一周するように道路が走っているが、そこには大きな給水塔が置かれている。
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この道沿いには杉並区のコミュニティバス「すぎ丸」も時折走っており、阿佐ヶ谷駅と浜田山駅の間を行き来している。
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今も阿佐ヶ谷住宅の敷地は建て替え反対運動のため、長い間本格的な工事には至っていなかったが、2009年9月から解体工事が始まっているという情報がある。
今も公団初期の団地の風景が残るため貴重な存在となっているわけだが、半世紀も経ってしまうと周りが田畑ばかりだったものがいつのまにか住宅密集地になっていて、阿佐ヶ谷住宅だけが取り残されたかのようにぽつんと佇んでいるのだ。
周囲には善福寺川緑地公園もあり住環境は依然としてすこぶる良好である。いまどき都内でこんな広々とした団地に住めるだけでも特権階級だと思ってしまうが…
もちろん現在は入居者の募集はやっていません。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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