杉並のチベット・和田堀公園

とある東京DEEP案内の読者の方からのタレコミで、「杉並区のチベット」がヤバイという情報を聞きつけた。
「杉並区のチベット」とは、一説には杉並区内で鉄道空白地帯となっている、杉並区松ノ木・堀之内・大宮・成田東の一帯を指すらしい。
特にまちBBSのログにはこのような事が書かれていた。

チベット=松ノ木
ネパール=堀之内
カシミール=成田東
ブータン=大宮


一帯どれだけ壮絶な田舎なのかと思って、わざわざ杉並のチベットとやらにやってきた。
JR高円寺駅から京王バスに乗って青梅街道の南側に出ると、まるで獣道のように細く長い街路をうねうね入り込む。その奥に、都立和田堀公園がある。
バスに揺られて高円寺駅から15分、道が悪いので、軽く乗り物酔いに遭った。



杉並区の自然遺産として区民がこよなく愛する善福寺川に沿って広がる和田堀公園は善福寺川緑地の一部を形成している公園で、非常に面積が広い。今回訪れたのは和田堀池などがある杉並区大宮・松ノ木界隈だ。

和田堀公園の中にやってくると、確かに都内とは思えない閑静な自然環境が広がっている。自然が広がっていると言えば野生動物の宝庫と思いつくが、和田堀公園で威勢を張っているのは大量のカラスである。3~40羽はいるだろうか、集団で木に泊まっている。鳴き声が凄まじい。ヒッチコックの「鳥」か、それとも鳥界における珍走団か。

カラスの集団が凄まじすぎて猫が怯えているくらいだからよっぽどのもんだろう。さぞかし肩身が狭そうだ。

…と思ったらやけに猫がたくさんいるではないか。よく見ると首輪をつけた子猫ちゃん。

その先には母親猫と…そして唐突に公園のど真ん中に住宅が突っ立っている。

ここ都立和田堀公園の中では、公園の敷地内に一軒家が建っている非常に珍妙な光景が見られる。公園でホームレスが小屋を掛けているのはよく見かけるが、そんなレベルではなく、実際に普通の家が建っているのだ。

一軒家が並ぶ中では、公園内の売店兼居酒屋として堂々と営業している家もある。和田堀公園は桜の名所で、春になると花見客が多く訪れる。その時期が掻き入れ時なんだそうだ。

さらに公園の奥に進むと、そこにも個人の所有と思われる建造物がある。

こっちは随分個性的な掘っ立て小屋になっていた。何気に自販機までちゃっかり置いている。

一通り歩きまわってみると、公園の中の「家屋」は結構な数が存在している。しかもガレージまで整備されている家もある。どうしてこんな事になっているのか。

普通の一軒家、掘っ立て小屋、ガレージに次いで、昔の公営住宅風な平屋建ての住宅もある。建っている家がみんなバラバラだ。
聞くところによると、この善福寺川緑地は都市計画で順次公園として整備される予定になっている。

和田堀公園の拡張工事に伴ない、本来は公園となるはずの敷地に立つ家には立ち退き交渉が進められていたそうだが、一部の住民が立ち退きに応じず、結局そのまま公園を作っちゃったんだとか。

和田堀公園の一角に、売店と釣り堀と食堂を兼ねている「武蔵野園」の建物がある。和田堀公園内にあるこうした店舗は全て民間人が公園内に住んで生活しながら営業を続けている。やっぱり変わった公園だ。

休憩がてらに武蔵野園の食堂…というよりも居酒屋のような佇まいの一室に入る。石油ストーブがガンガン効いた室内には、年老いた夫婦が居る。安酒が飲める事もあって、もっぱらやってくるのは近所に住む年寄りのジジイばかり。

食堂の窓からは古臭い釣り堀が見える。かれこれこの場所で50年も釣り堀をやっているのだそうだ。杉並区らしい中央線臭も、吉祥寺や井の頭公園あたりの気取った臭いもしない。ただ時代に取り残されただけの風景がそこにはある。

和田堀公園から外れた善福寺川沿いの住宅地にはやけに空き地が目立つ。この辺も都市計画で次第に公園整備が進められる予定にあるのだろうか。ちなみにこの辺は同じ杉並区でも場所で言うと高円寺よりは京王線の永福町・西永福の方が近い。
和田堀公園・武蔵野園の夜

ドイツ・ベルリンの映像作家Alva Notoによる作品。武蔵野園の前が使われている。

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東京DEEP案内の管理人です。2008年の開設以来、首都圏一都三県の街歩き情報を淡々と記録し続けております。いわゆる日陰者的物件、観光地にもならない場所、ちょっとアレな地域を見物・考察する事を趣味としております。2017年6月15日、単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を発売。
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