美智子皇后の生家、旧正田邸などがある五反田の高級住宅街・池田山を後にして、JR五反田駅に続く坂道を下っていく。
五反田駅側からすると、池田山は同じ東五反田の住所を有する土地とは言えまさに別世界の様相を呈している。その異世界を繋ぐワープトンネルのごとく続いている坂道は春には桜の名所となる。
ちなみに同じ東五反田にはもう一つ、島津山という高級住宅街があることも付け加えておく。
この坂道には石畳が敷かれていて、五反田駅から最短で結ぶ高級住宅街・池田山へのアプローチ道路として、それなりに風格を漂わせている。しかし春を過ぎると蚊柱だらけで悶絶は必至。虫嫌いにはちょっと辛い小路だ。
蚊柱はいやずらという虫アレルギーな人には横手から伸びる階段がショートカット通路になっているので利用を検討してはいかがだろう。
眼下には区立東五反田保育園がある。ビルインタイプの保育園で、3階から2階に掛けてコンクリート製のスリリングな滑り台が見える。
坂を降りてから斜め上にふと視線を移すと、そこには丘の上に建つ天理教の横断幕が。
この坂道、結構な急勾配で日常的な徒歩での昇り降りは体力を伴なう。ちなみに坂道の下には児童公園も整備されていて、桜のシーズンには花見客がたむろしている。
坂を降り切ると、池田山の崖に沿ってまたまた訳のわからない珍建築が顔を覗かせている。あれは一体何なのだと興味が尽きない。表側に回って確かめてみることにした。
謎の建物の正体は「東京デザインセンター」という施設。珍建築なりにデザイン関係に強い家具メーカーのオフィスが多く入居しており、インテリア製品を中心に各店舗のショールームが展開されている。
桜田通りに面した入口から建物内部を眺めると、コンクリート打ちっぱなしのいかにもな近代建築、広い吹き抜けの空洞が反対側まで続いている。
その最奥部には…なぜか馬が一頭。森の中でひっそり佇んでいる。
正面の階段を上り詰めると、建物の横はこんな感じでひたすらコンクリート打ちっぱなし。右側の壁は一面ガラス張りになっていて、ショールームの中で談笑している客の姿が丸見えになっていた。
最後は山の斜面にまで階段が築かれていて、建物裏側の謎めいた造形を堪能することができるようになっている。イタリアの建築家でありマリオ・ベリーニ氏のデザイン。
今でこそコンクリート打ちっぱなし系で「デザインにこだわりました(笑)」なビルは腐る程あるが、この東京デザインセンター自体は1992年に完成したものだという。大方20年近い昔のセンスには思えない先鋭的な建物だ。
どう見ても、桜田通りを挟んで真正面にある「五反田有楽街」とは不釣合いなおハイソ物件な訳だが、ここも辛うじて池田山文化圏なのだと思えば納得。
しかしこの馬、首の後ろに何故か人面が付いてます。怖いです。