世田谷らしからぬ超下町「エーダンモール深沢」 (1)

世田谷区と言えばお上品な住宅地というイメージしか湧かない訳だが、考えてみると東京23区で最大の人口と面積を誇る区(面積は羽田空港の埋め立てで実質的には大田区が一位)でもある。
東急線が主要交通網である世田谷区でも、電車の駅が走っていないチベット状態の地域があっちこっちに残っていて、そこに広がるのは必ずしも平凡で中流家庭的な世田谷らしい住宅地ばかりであるとは限らない。

東京DEEP案内取材班へのタレコミ情報で、自由が丘にも比較的程近い世田谷区深沢の一部分がやけに下町全開で凄いので行って欲しいという話が来た。


深沢と言うと駒沢オリンピック公園、そこに隣接する芸能人御用達の高級マンション「深沢ハウス」、そして小沢一郎邸のある高級住宅地として知られる地域である。そんな場所に本当に下町ゾーンが隠れているのかと半信半疑だったが、この航空写真を見て納得した。

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深沢地区唯一の商店街という「エーダンモール深沢」がある深沢三丁目の一画だけが、やたらと小規模住宅が密集していて他の住宅街と一線を画していたのだ。

近くの鉄道駅からエーダンモール深沢まで来ると、徒歩で約20分程度掛かる。敢えて最寄り駅を言うと東横線自由が丘駅、大井町線尾山台駅、田園都市線駒沢大学駅のいずれかとなる。非常に不便な場所だ。

しかしエーダンモールの中に一足踏み入れると、信じられない程に寂れまくった光景を目にする事になる。本当にこれが「深沢地区唯一の商店街」なのかと思える程の状態だ。

そして商店街に入ると急増する公明党と共産党のポスターの存在が、この土地がガチな下町であることを示しているかのようだ。

近隣の住宅街が整備され、すっかりそっちがメインになってしまった訳で、もともとの深沢地区は周囲が田畑ばかりでこうした下町しか存在していなかったのだ。
この場所をgoo地図で確認してみよう。戦後間近の昭和22年の地図を見るとエーダンモール深沢がある地区だけにすっぽりと団地が建てられている事が分かる。

エーダンモール深沢商店街の外は旧呑川緑道に面する部分以外は微妙に登り坂になっている。つまりこの一帯が川沿いの低地であったことが窺える。

この商店街だけがハブられるように人が来ない反面、深沢に住む人間は一体どこで買い物しているんだと思う訳だが、セレブな深沢新住民はマイカーで近所の高級スーパーに行くか、自由が丘に出掛けるのが普段の行動パターンなのだろう。

そんなエーダンモール深沢唯一と思われる「スーパーたまひで」。どこにも飾り気がない完全なる下町仕様。

この「エーダンモール」という愛称も一聞すると謎である。エーダンって営団地下鉄の営団だとしても近くに地下鉄の駅もないし、と思ったら、戦後間近にこの付近に建てられた都営団地が関係しているそうだ。都営団地の「エーダン」なのである。
それは昔の地図で確認出来るように、この土地にかつて存在した団地から取られたものなのか、確かな事は分からない。団地も今では存在せず、エーダンモールの名前だけが残っているので余計に訳がわからないのだ。

舗装された商店街の部分から外れても住宅街にぽつぽつと商店が残っている。この路地だけ見ていてもとても世田谷区にある街とは思えない。どこを見ても必ず公明党か共産党のポスターがある。

しかし地味に頑張ってそうな店もちらほら残っているので、寂れてはいても決して商店街として機能していないわけではなさそうだ。

しかし一歩商店街の外に出ると開けっ放しのオープンテラス状態のカフェで飼い犬や子供を連れてランチタイムに興じるオサレな世田谷住民の休日風景があった。
通り一つ隔てて自由が丘スイーツ文化圏に囲まれている、文化的孤島状態の下町。それがエーダンモール深沢なのである。

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