大田区と言えば町工場が密集する下町。そんな話を良く聞く訳だが、実際に昔ながらの町工場が密集する路地に庶民が生活しているような空間を探そうとすると、割とメジャーな蒲田や大森の駅前あたりではさっぱり見かけない。
じゃあ、どういう所に「大田区らしい町工場の風景」があるのかと言うと、京急の各駅停車でしか行けない梅屋敷辺りから歩いて見に行く事となる。
京急蒲田駅の隣、梅屋敷駅。駅の名前からして既に場末感全開。この駅で降りようとすると電車の後ろ二両がドアカットにて開かぬ罠。
梅屋敷は駅の場所に限ってギリギリ蒲田だが、実質的には大森の南側にあたる。駅を降りると突然雑多な風景が目に飛び込んでくる。
自転車を乗り回す庶民、目の前の踏切の上には京急の高架化工事が行われていて、もうすぐ街の様子もにわかに変わろうとしている中にあるが、完全に場末の下町風情が漂っている。
駅を降りて東側には国道15号第一京浜がすぐさま現れる。今回は梅屋敷駅から東側一帯の街並みを散策する事にする。
第一京浜を跨いで東側に渡ると、その先には梅屋敷東通り商店街が続く。のっけから下町全開でアジアンチックな商店街である。駅に近い側は安売りスーパーや八百屋、惣菜屋が軒を連ねていて活気に満ちている。雰囲気は悪くない。
時代の波から外れたかのようなおもちゃ屋も梅屋敷では健在。ガチャポン、ゲーム機、ジャンケンマンと、一通り駄菓子屋ゲームセンター的要素が詰め込まれていて、オッサンになりかけの30代、40代にも懐かしい。
まるっきり下町の商店街だけあってババ服屋の勢いの強さは半端ない。威圧的にすら感じるババ服の圧縮陳列はドンキホーテ顔負け。こんな商店街にユニクロとか出てきても流行りそうにありません。
そんなベタな下町の商店街を突っ切って、そのまま道沿いに産業道路方面まで歩いて行く事にする。
駅から遠ざかるにつれて人通りもまばらにはなるが、相変わらず時代錯誤な古い生鮮食品店が健在である。殆どかすれかかって店の名前がわかりづらい看板を掲げるのは共同市場的な店構えの「丸市食品ストアー」。
古い住宅街の区画がそのまま残っている梅屋敷界隈、商店街も道が直線的ではなく頻繁に曲がりくねっている。
梅屋敷東通り商店街は第一京浜と産業道路の間の道に続いているが、端から端まで600メートルくらいある。結構長かった。
ふと電柱に目をやると刺青職人の広告が貼りつけられていた。こういうのって今でも残ってるんですね。ファッション的なタトゥーの一種か、任侠の世界なのか、よくわかんないですが。
それよりも頻繁に目に付くのは、やっぱり公明党ポスター。だってプレジデント大作先生の生まれた大田区なんだもの。
終始下町風情全開な商店街を抜けて、次は産業道路を渡ってさらに東側に足を延ばす。近くに駅が無いのでいずれにしても地道に歩き回らなければならない。羽田空港などもあって発展しているイメージがあるが、大田区自体が東京全体から見たら辺境の地である。