小金井街道・所沢銀座商店街

駅前の様子だけ見ていると、没個性的なベッドタウンで何も面白みがなさそうな印象を受ける所沢の街だが、本来の街の中心は駅から離れた小金井街道沿いにある。
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プロペ通りを抜け、ファルマン通り交差点の先に伸びる小金井街道沿いが旧市街地。もともと所沢は織物産業で栄えた街で、小金井街道に沿って歩くとあちこちに明治時代に建てられた古い商家がちらほら残っている。


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駅から降りてプロペ通りを歩いている間は実に退屈過ぎてあくびが出てしまいそうだったが、ここまでやってくるとようやく本来の街並みが現れたという感じだろうか。しかし背後には猛烈な勢いで乱立するタワーマンション群が街の風景を突然変異させている。
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交通量大杉な小金井街道に入る。所沢の道路事情はあまりよろしくないらしく年がら年中渋滞が絶えないらしい。街のメインストリートなのに片側一車線ずつしかない。その反面タワーマンションの多さには唖然とする。
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所沢の旧市街地、寿町・御幸町あたりがタワーマンションだらけになったのはここ10年程の事だという。江戸時代から宿場町としての歴史を刻んできた地域だが、一方で古い住民が次々土地を手放して、趣きのある古民家商家が容赦なくぶっ壊されている。
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威勢の良いタワーマンション群の影に隠れて昔ながらの店はレトロな佇まいもそこそこに、皆死んでしまったかのようにシャッターを下ろしたまま、解体される時を待つかのような姿を晒している。
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タワーマンションか死んだような古い店の建物か、もしくは駐車場くらいしかない。かつての中心市街地としてはかなり悲惨な現状である。
この旧市街地には銀座商店街(銀座通り)という名前もあるにはあるが、商店街と言うよりはもはやマンション街でしかない。昔は小金井街道沿いに西所沢駅の前まで延々と蔵造りの商店が連なっていたというが、今となってはそれが信じられない。
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どうしようもない状態の商店街だが、それでも明治時代に建てられたという古い商家が今でも立派に建っている。「井筒屋町造商店」という築100年以上の商家だ。銀座通りにはこうした織物関連の商家が数多く店を構えていた。
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横っ面から見ると建物の重厚さが際立って見える。しかしすぐ隣はタワーマンションの敷地だ。開発の波がもうすぐそこまで来ている。
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趣深い格子戸のついた玄関口が印象的。柱や壁、軒裏までもびっしり銅板が使われていて建物全体が青銅色がかっている。つまり耐火建築ということか。あんまりこんな家は見た事がないぞ。
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商家の横手に入るとかなり奥行きが深い事が分かる。かつての栄華を想像させられるが、今では商売もやっておらず寂しい姿を晒している。
一時期は行政のバックアップで改装した上で町おこし施設として開放されていたようだが、現在は閉鎖されたまま。表の格子戸も改装時に付け替えられたもののようだ(→詳細
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奥に続く塀の立派さにも息を飲む。手前には家紋のついた木戸があり、奥の方は微妙に波打っていたりして不思議な形状だ。この建物も取り壊されていずれタワーマンションに変わってしまうのか?
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我々がうろついていた間、途切れる事なく続いていた小金井街道の渋滞。中心市街地の空洞化が進む所沢の市民はみんな自家用車で郊外のショッピングモールで買い物するのが日常化しているのだろう。織物の街だった所沢の歴史も終焉を迎え、今では入間のアウトレットモールがあるだけ。
所沢は街の歴史をぶち壊して味気ないベッドタウンに変わり果てようとしている。しかし街の住民も行政も何一つ手を打つことができないようだ。
参考ページ
織物の街:所沢

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