東京の目と鼻の先にあるくせに千葉県だったりする浦安市は、かつて漁業の町で、東西線が開通する昭和40年代以前まではアサリ漁などで生計を建てる漁師が住む辺境の田舎町だった訳だが、そんな昔の浦安の風景をそのまんま再現した博物館が浦安市役所の隣にあるというので、見に行ってきた。
その名も「浦安市郷土博物館」。ここを見て行けば昔の浦安がどんな街で何をやっていたのか、そして東京とは全く違った文化と歴史を持っていることが理解できるはず。
しかも入場料がタダだというのが凄い。それは浦安市の財政力の健全さが反映された形だ。マリナーゼとネズミーランドの税収の恩恵は、別に浦安市民でなくとも受けられる。早速入ってみよう。
博物館の外からでも見られるのは、昭和27年の浦安の街並みをそっくりそのまま再現した屋外展示スペースである。なんだか本格的すぎて凄い事になっている。
玄関に入ると出迎えてくれるのが郷土博物館のマスコットキャラクター、その名も「あっさり君」。テキトー過ぎるネーミングに脱力。かつて浦安沖で採れたアサリが、アサリ漁や海苔採りに使う小型の舟「べか舟」の上に乗っている。
博物館に入ると見学順路はまず2階からとなっているが、とにかく先に見たいのが屋外展示スペースなので、こっちを先に見る事にした。博物館の地下1階から外に出られる。
屋外展示スペースに建てられている家は、堀江のフラワー通りなど、旧市街地にあった店舗の実物を再現、もしくは実際の建物を移築したものという。そりゃリアルな訳だ。古い商店の並ぶ街並みは昭和27年当時のまま。
タバコ屋の建物は旧本澤家住宅。
屋外展示スペースの真ん中に人工の堀が作られている。これも当時の船溜まりを再現したもので、べか舟が浮かぶ川の畔には船宿が建っている。そして見学者よりも多い、青い服のスタッフの姿が目に付く。
こうした古民家が10軒程度立ち並んでいて、見る角度によっては完全にタイムスリップ状態になる。これだけ本格的なのに来客が少ないのは、駅から遠いという事もあるが、浦安がかつてこんな街だったとは誰も想像していないからかも知れない。ちょっと勿体無い気がする。
民家の他にも海産物を売る魚屋もある。魚屋の建物は旧太田家住宅を移築したもの。観光客が全然居ないという点では逆にリアルに鄙びた雰囲気も感じ取られて、この手の施設にしては、いかにも博物館の展示です的な感じがしない。
巨大な豆腐屋の看板。下総屋の看板が掛かっているが、ここは移築ではなく再現された建物らしい。
民家の庭の洗濯物とか、細かい所にまでこだわりが利いているのが分かる。清澄白河の深川江戸資料館の街並み再現コーナーもなかなか面白かったが、こっちも負けてはいない。
古民家の隙間の路地を抜ける。昭和27年の街並みとは言うが、もう完全に時代劇のロケセットである。
地下鉄東西線が通るようになるまでは全くもって陸の孤島だったという浦安の街、単純な漁村だった頃は古い生活様式がそのまま続けられてきた事が窺える。
しかしよくぞここまで街並みを再現出来たものだなと感心する。当の浦安市民でもこの施設の存在はあまり知らない様子。一度くらいは訪問しても損はない気がするぞ。入場無料だし。